異伝 《若者の力》
「ロラン大将軍殿!!上の方から新手が迫ってきているでござる!!」
「むっ……お前は確か、銀狼騎士団の者か?」
ロランは少女の声がした方向に振り返ると、そこには岩の上に立つクノの姿が存在した。彼女は目つきを細めて新手のマグマゴーレムが接近している事を伝える。
「数は……今度は54体でござる!!」
「正確な数が分かるか?」
「拙者、目の良さなら誰にも負けないでござる!!」
迫りくるマグマゴーレムの正確な数と方向を伝えてきたクノに対し、ロランは彼女が視線を向ける方向に顔を向けた。確かに遠目でよく見えないが、接近してくるマグマゴーレムの集団が見えた。
クノの言う通りに先ほどの倍以上のマグマゴーレムが迫っており、それを確認したロランは感心する。自分よりも早くに敵に気付いたクノに彼は素直に褒めた。
「よく教えてくれた。下がっていろ、ここは俺が……」
「おっと待ちな!!大将軍ばかりに良い所を取らせないよ!!」
『その通りだ!!今度は俺達に戦わせろ!!』
ロランは接近する50体のマグマゴーレムに対して自分達の部隊で突っ込もうとしたが、その前に聖女騎士団の団長のテンが遮り、黄金級冒険者のゴウカも彼の肩を掴む。
「テン、ゴウカ……敵の数はさっきの倍以上だ。無理をするな」
「はんっ、何時までもガキ扱いは困るね……こっちはうちの部隊だけで十分なんだよ!!なあ、エルマ!?」
「む、無茶を言わないでください……」
「やれやれ、仕方ないのう……儂も手伝ってやろう」
テンの言葉に同行していたエルマは苦言を告げ、魔導士のマホも戦闘に加わろうとした。この二人はテンの部隊に配属されたが、マホの場合は極力は魔力の消費を抑える必要があったので先ほどの戦闘には参加しなかった。
頂上部には恐らくだが以前にナイ達に襲い掛かったマグマゴーレムの大群が潜んでいる可能性が高く、火口付近のマグマゴーレムを一掃するためにはマホの「広域魔法」が頼りだった。だからこそ不必要な戦闘を避ける必要はあったが、流石に50体のマグマゴーレムと聞いて彼女も戦おうと杖を握りしめる。
『はっはっはっ!!先に行くぞ、早い者勝ちだ!!』
「あ、こら!?」
「ま、待ちなさい!!」
「馬鹿者!!一人で先走るな!!」
だが、ここまでの戦闘で自分の出番がなかったゴウカは我慢できずに駆け出し、1人で50体以上のマグマゴーレムの相手をしようとした。それを見た他の者たちが止めようとした時、彼の後を追いかけるように駆け出す者達が居た。
「ゴウカさん、待ってください!!」
「ナイ君!!僕も行くよ!!」
『こら、おいてくなっ!!』
「お待ちなさい!!貴方達も危険ですわよ!?」
「ちっ、仕方ない!!後を追うぞ!!」
ゴウカの後を追うようにナイと他の黄金級冒険者も坂道を駆け上り、その後に黒狼騎士団と銀狼騎士団も続く。勝手に行動を始める部隊にロランは頭を悩ませるが、そんな彼の肩を掴んでいたテンが語り掛ける。
「ロラン大将軍……あいつらをよく見てな」
「何?」
「どいつもこいつも一癖も二癖もある奴等だけど、それでも一つだけ言える事がある。あいつらは頼りになるよ」
「……ほう」
ロランはテンの言葉を聞いて敢えて先に向かった者達を止める事はせず、自分の部隊は動かさずに様子を伺う。やがて先頭を走っていたゴウカにナイは追いつき、二人はマグマゴーレムの大群に目掛けてお互いの大剣を振りかざす。
『ふんっ!!』
「でやぁあああっ!!」
「「「ゴアアアアッ!?」」」
怪力剣士二人が放った大剣は数体のマグマゴーレムを吹き飛ばし、派手に吹き飛んだマグマゴーレム達は他の個体を巻き込んで倒れ込む。
この時にナイは旋斧に水属性の魔力を宿し、ゴウカの場合はハマーンが作り出した特注の甲冑のお陰で攻撃の際に飛び散るマグマゴーレムの溶岩を防ぐ。
『おおっ、こいつはいいな!!全然熱くないぞ!!』
「ふうっ……ちょっとゴウカさん!!勝手に先に行かないでください!!」
『いや、すまんすまん!!つい、我慢できなくてな!!』
「「「ゴォオオオッ……!!」」」
マグマゴーレムの集団に取り囲まれているにも関わらずにナイはゴウカを叱りつけ、そんな彼にゴウカは謝罪する。その光景を見せつけられたマグマゴーレム達は自分達を侮っているのかと憤慨し、一斉に襲い掛かろうとした。
「ゴアアッ!!」
「ゴオオッ!!」
「ナイ君、危ない!!」
『ゴウカ、邪魔!!』
数体のマグマゴーレムが二人の背後を狙おうとした時、リーナは目にも止まらぬ速度でナイの後ろに回り込むと、彼女は蒼月を地面に突き刺す。その直後に地面に巨大な氷柱が誕生して迫ってきたマグマゴーレムを貫く。
マリンはゴウカの後方に迫るマグマゴーレムに対して杖を構え、彼女は飛行船でガオウとフィルを水浸しにした「水球」を生み出す。但し、今回の場合は1つではなく、複数の水球を作り出して同時に放つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます