異伝 《猛虎騎士団の力》
双紅刃で打ち砕かれたマグマゴーレムはあまりの威力に木端微塵に吹き飛ぶが、その際に飛び散った溶岩はロランに触れる事はない。彼の双紅刃から発せられる重力によってマグマゴーレムの肉体は弾かれる。
ロランの「双紅刃」は刃に地属性の魔力を付与させる事で重力を自在に操り、刃の重量を増加させるのではなく、刃の周りの空間に重力の膜のような物を作り出す。この膜に触れると重力で押し返され、その力を利用してロランはマグマゴーレムを破壊しても飛び散った溶岩ごと吹き飛ばす。
「全員、火傷したくなければ俺の傍に近寄るな!!」
『はっ!!』
彼に従う直属の騎士達は歴戦の猛者ばかりであり、王国を守護する「猛虎騎士団」はかつては王妃が率いていた聖女騎士団と双璧を成していた。ロランが捕まった後は騎士団は解散されてしまったが、彼が復帰した以上は猛虎騎士団もいずれ復活する予定だった。
猛虎騎士団の団員は若者はいないが、長年の間国境を守り続けてきた猛者たちばかりである。ロランとは数十年来の付き合いであり、彼が戦いやすいように他の騎士達も動く。
「ゴオオオッ!!」
「ゴアアッ!!」
「大盾部隊!!ロラン様を守れ!!」
「ロラン様にばかり苦労させるな!!」
大盾を構えた騎士達が駆けつけ、迫りくるマグマゴーレムを押し止めようとした。しかし、大盾で防ごうとしても相手は溶岩で構成された巨人であり、大盾に触れただけで熱伝導を引き起こし、大盾を構える騎士達は苦悶の表情を浮かべる。
「ぐううっ!?」
「うぐぅっ!?」
「危ない!!下がって!!」
「いや、手を出すな!!」
大盾を構える騎士達にマグマゴーレムが迫り、金属製の盾に熱が宿って騎士達の身体を焼く。それを見たナイは彼等を救おうとしたが、それを止めたのはロランだった。
バッシュの「防魔の盾」とは違い、猛虎騎士団の騎士達が所持する大盾はミスリルと鋼鉄の合金である。魔法金属であるが故に簡単に溶ける事はないが、それでもマグマゴーレムに触れられれば加熱して大盾を支える腕が焼かれてしまう。しかし、彼等は意地でも大盾を手放さず、それどころか逆に他の者たちが駆けつけて彼等を後ろから支えた。
「行くぞぉおおっ!!」
「押し返せぇっ!!」
「「ゴアッ……!?」」
大盾を掴んだマグマゴーレム達に対して騎士達は数で押し返し、逆にマグマゴーレムを後方へ追い込む。その間にロランは双紅刃を回転させて刃に宿す魔力を高め、騎士達に合図を出す。
「十分だ、下がれ!!」
『はっ!!』
騎士達はロランの言葉を聞いて左右に分かれて移動すると、マグマゴーレム達は何時の間にか一か所に集まっていた。大盾越しに押し返した騎士達がマグマゴーレムを何時の間にか誘導したらしく、そこに目掛けてロランは突っ込む。
「地裂!!」
『ゴアアアアッ!?』
ロランが地面に目掛けて双紅刃を叩き込んだ瞬間、地割れが発生してマグマゴーレムを飲み込む。地面が崩れて誕生した亀裂にマグマゴーレムは落ちていくと、ロランは続けて双紅刃を振りかざす。
「くたばれっ!!」
「全員、伏せろ!!」
『ッ――!?』
双紅刃を振りかざしたロランを見てバッシュは皆に指示を出すと、投げ放たれた双紅刃が地割れの中に突っ込み、凄まじい衝撃波を放つ。そのあまりの威力に地割れに飲み込まれたマグマゴーレムは跡形もなく吹き飛び、この時に双紅刃も上空へ吹き飛ぶ。
上空へ吹っ飛んだ双紅刃に向けてロランは手を伸ばし、彼は一歩も動かずに自分の武器を回収する。最初から自分の手元に向かって落ちてくる事を知っていたかのようにロランは武器を回収すると、周囲の人間に伝えた。
「よし、ひとまずは倒したな。先を急ぐぞ!!」
『…………』
何事もなかったように火山の頂上部へ向けて移動を再開したロランに全員が呆気に取られ、改めて彼等は大将軍ロランの実力を思い知らされる。
「す、凄い……ロラン大将軍、強い事は知っていたけどこんなに強かったなんて」
「いや、いくらなんでも強すぎる……監獄で閉じ込められている間も身体を鍛え続けたのか?」
『ふはははっ!!そういえば監獄に居た時はよく俺の相手をして貰ったぞ!!そのお陰で中々に楽しい囚人生活を送れた!!』
監獄に収監される前よりもロランは明らかに力を増しており、彼と共に収監されたゴウカによると囚人として過ごしていた間は二人は共に鍛錬をしていたらしい。
最強の冒険者であるゴウカとまともに相手をできるのはロランだけであり、この二人は監獄では同じ部屋で過ごしていた。そのせいでロランもゴウカの相手をする事が多く、彼が以前よりも力を身に付けた理由はゴウカを相手に毎日鍛錬していたからかもしれない。
※カタナヅキ「この人、強すぎない?」(;´・ω・) パソコン
リアルな話をするとロランはラスボス候補でした。リョフを出さなかったら彼が最後にナイと戦う敵として出していたと思います。
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