異伝 《グマグ火山の変化》

――討伐隊が遂にグマグ火山へ到着すると、そのあまりの変貌ぶりに驚く。火山の火口から煙が上がり、更には火山の麓にはマグマゴーレムの姿がちらほらと見えた。



「こ、これが……グマグ火山!?」

「くっ……なんて熱気だ」

「前に着た時とは全然雰囲気が違いますわ」



2年前と比べて火山の雰囲気が一変し、既に麓にまでマグマゴーレムの姿が確認された事に危機感を抱く。以前に訪れた時と比べて明らかに火山の熱気が増しており、熱耐性の高い装備を身に付けていなければ危険な状態だった。


討伐隊は麓に到着するとロランは部隊を分け、ここからは各騎士団と冒険者は分かれて行動するように告げる。無論、別れると言っても各部隊が別々の行動を取るわけではなく、一定の距離を保ちながら移動を行う事を注意する。



「ここからは事前に決めた通り、4つの部隊に分かれて行動してもらう。まずは黒狼騎士団、銀狼騎士団、白狼騎士団は別々に行動してもらう。指揮を執るのは各部隊の団長と副団長だ。白狼騎士団は人数が少ないため、冒険者組も参加するように」

「ナイ君、一緒に頑張ろうね!!」

「あ、うん……」

『ほう、少年と一緒の部隊か。これは楽しみだな』

『……よろしく』



白狼騎士団は今回はナイしかいないため、他の冒険者達と組んで行動する事になる。後はロランと彼直属の配下の騎士達、黒狼騎士団、銀狼騎士団に分かれて行動し、合計で4つの部隊が火山を登り始めた。


部隊分けをするといっても基本的には各部隊に指示を出すのはロランである事に変わりはなく、勝手な行動はとれない。しかし、先頭になれば各部隊の代表の命令を聞いて戦う事になるため、白狼騎士団の場合はナイが命令を与える立場となる。



「ナイ君、敵が現れた時は僕達に指示を出してね。遠慮しなくていいからね」

「え、でもそれならゴウカさんの方が……」

『吾輩は当てにしない方がいいぞ。どうも昔から集団行動とやらは苦手でな、人に命令するよりもされる方が気が楽だからな。はっはっはっ!!』

『貴方の実力は認めている……言う事には従う』



ゴウカとマリンはナイの命令を受ける事に不満はなく、他人には厳しいマリンもナイの実力は認めていた。しかし、いきなり指示を出してくれと頼まれてもナイは困ってしまう。



(命令しろと言われてもどうすればいいんだろう……とりあえず、やってみるしかないか)



任された以上は全力を尽くすしかなく、ナイは敵が現れた時の事を考えて自分がどのように命令すればいいのか真面目に考えていると、ロランが声を上げた。



「前方からマグマゴーレムの大群が来たぞ!!全員、戦闘準備!!」

「えっ!?」

「もう来たか……行くぞ!!」

「気を抜くな!!」

『よし、我々も行くぞ!!』



まだ考えがまとまらない内にマグマゴーレムの大群が出現し、討伐隊に目掛けて一直線に迫ってきた。マグマゴーレムの数は20体は存在し、山を駆け下りながら迫ってきた。




――ゴォオオオオオッ!!




20体を越えるマグマゴーレムは上から滑り落ちるように迫り、その迫力に討伐隊の者達は気圧されそうになる。それでも部隊を指揮する者達は怯まずに戦闘態勢を整えていた。



「来るぞ!!油断するな!!」

「怯えるな!!お前達は誇り高き戦士達だ!!」

「行きますわよ!!」

「ふっ……」

『よし、誰が一番多く倒せるか競争だ!!うおおおおおっ!!』



ロランは双紅刃を回転させ、バッシュは防魔の盾を構えると、ドリスは彼の隣で真紅を構え、リンは居合の体勢に入る。そしてゴウカはドラゴンスレイヤーを抜き放ち、雄たけびを上げた。


20体のマグマゴーレムが討伐隊へ迫ると、意外な事に最初に攻撃を仕掛けたのはバッシュだった。彼は防魔の盾で転がり落ちてきたマグマゴーレムを受け止めると、上手く衝撃を受け流してマグマゴーレムを地面に倒れさせる。



「ふんっ!!」

「ゴアッ!?」

「流石は王子!!やりますわね!!」



バッシュは見事に正面から転がり落ちてきたマグマゴーレムを受け流し、体勢を崩したマグマゴーレムに対してドリスは真紅を突き出す。彼女の真紅は火属性の魔法槍のため、本来ならば相性は悪い。しかし、それを考慮してドリスは真紅を突き刺す。



「爆槍!!」

「ゴアアッ……!?」



ドリスは柄の部分から火属性の魔力を放出させ、攻撃速度を加速させてランス突き刺す。高速に放たれた真紅はマグマゴーレムの胸元を貫き、見事に核を破壊した。


この攻撃方法ならば直接に相手を爆発させるわけではないため、マグマゴーレムを倒す事ができた。また、他の者達もそれぞれの方法でマグマゴーレムに攻撃を仕掛け、相手を追い詰めていた。



「斬!!」

「ゴアアッ!?」

「ぬんっ!!」

「ゴガァッ!?」



リンは居合の体勢から剣を抜くと、一撃でマグマゴーレムの胴体を切断させた。ロランは双紅刃を振り回し、次々と押し寄せるマグマゴーレムを吹き飛ばす。

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