閑話 《モモとリーナの決意》

――論功行賞が行われてからしばらくした後、白猫亭の元にリーナが訪れた。彼女の目的は白猫亭で暮らしているナイに会うためではなく、モモに話をするために彼女は訪れた。


白猫亭の一室にてリーナはモモを呼び出し、緊張した面持ちで彼女はモモと向かい合う形で座る。モモは急に自分と二人きりになりたいと言い出したリーナに戸惑うが、何となくだが彼女の言いたい事は察していた。



「モモちゃん……ご、ごめん!!」

「えっ……な、何が?」

「実は僕、ナイ君の事が好きなんだ!!」

「っ……!!」



リーナが最初に謝って来た事にモモは驚いたが、次の彼女の言葉を聞いて表情を変える。現在のナイはモモとリーナから直接告白されており、二人ともナイに対して好意を抱いている。


モモとリーナも直接に口にした事はないが、どちらもナイの事を好いている事は察していた。それでもリーナの方からはっきりとナイの好意を口にした事にモモは驚いたが、すぐに彼女は自分も打ち明けた。



「わ、私もナイ君の事が大好きだよ!!」

「そ、そうだよね……でも、僕だってモモちゃんに負けないぐらい好きなんだ!!」

「それは……し、知ってるけど」



ナイが好きな気持ちを二人は素直に口にすると、まずはリーナがナイに対してこれからどのように接していきたいのかを話す。



「僕はもう、この気持ちを我慢できない。いくらモモちゃんがナイ君の事が好きだとしても、僕もナイ君の事が大好きなんだもん!!」

「リーナちゃん……」

「で、でもね……モモちゃんの方が先にナイ君の事を好きなのは知ってるよ。だからね、僕は二番目でいいよ」

「えっ……二番目?」

「うん……つまり、どっちかがナイ君の事を諦めるんじゃなくて、二人ともナイ君と付き合うのは駄目かな?」

「えええええっ!?」

『えええええっ!?』



思いもよらぬリーナの提案にモモは驚き、この時に扉の前で盗み聞きしていたヒナも声を上げる。実はヒナもこの二人の事が気になって扉の隙間から様子を伺っていたのだ。



(何言ってるのリーナちゃん!?二人で付き合うなんてそんな……あ、でもナイ君が公爵家を継いだとしたら有り得ない話じゃないのかしら?)



リーナは公爵家の跡継ぎであり、仮に彼女とナイが結婚すれば必然的にナイは公爵家を継ぐ立場となる。公爵家の人間ならば一夫多妻も認められ、モモを迎え入れても問題はない。



「僕とナイ君と結婚すればナイ君も貴族になるから、そうなればナイ君は僕以外の御嫁さんを貰ってもいいからモモちゃんもお嫁さんになれるよ」

「ナイ君のお嫁さん……リーナちゃんと一緒に?」

「うん……勿論、表向きはナイ君の正妻は僕になるかもしれないけど、モモちゃんの方が先に好きになったんだし、だから正妻とか妾とか関係なく、ナイ君に一番に愛されるのはモモちゃんだと思う」

『……それはそうね』



扉の外でヒナは安心した表情を浮かべ、リーナは結婚すると言ってもモモの事をちゃんと気にかけ、結婚後もナイがモモを愛する事を認める事に安堵する。しかし、当のモモはリーナの話を聞かされてとんでもない事を言い出す。



「う〜ん……それって二人一緒にナイ君のお嫁さんになるって意味だよね?」

「え?うん、そうだけど……」

「ならヒナちゃんも一緒にお嫁さんにしてもらうのは駄目かな?」

「ええっ!?」

『何でっ!?』



ここでヒナの名前が出てきた事にリーナは驚愕し、扉の外で聞いていたヒナもツッコミを入れる。しかし、モモは真剣な表情を浮かべて理由を話す。



「だってヒナちゃんもナイ君の事が好きだと思うし、それに他の人たちもナイ君の事が好きだと思う。だってナイ君、凄く格好いいし……」

「ナイ君が格好いいのは確かだけど、ヒナちゃんもナイ君の事が好きなの?」

「うん、それは間違いないよ。だってヒナちゃん、ナイ君と一緒に居る時は凄く楽しそうだし……」

『そ、それは友達だから……』

「それにナイ君から貰った物は凄く大切にするし……」

『いや、そんな事は……』

「この間なんてヒナちゃんが転んだ時、ナイ君が抱きとめたら頬を真っ赤にしてたんだよ?」

『それは男の子と触れ合う機会があんまりなかっただけで……!!』



部屋の外でヒナは色々と言い訳を並べるが、当人たちは全く聞こえていない。リーナの方もヒナの事を考え、彼女が本気でナイの事が好きならばと頷く。



「うん……分かったよ。最終的にはナイ君に決めてもらうけど、ヒナちゃんも一緒にナイ君のお嫁さんにしてもらうようにするよ!!」

「うん!!これなら皆ずっと一緒だね!!」

『ちょっとぉおおおっ!?』



こうしてヒナは勝手な二人のせいで自分もナイの嫁候補にされてしまった。





※ヒナもヒロイン候補です。ちなみに本作のメインヒロインはビャクとプルリンです。



ビャク「ウォンッ!?(そうなの!?)」

プルリン「ぷるるんっ(照れるぜ)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る