異伝 《仮釈放》
――監獄に収監されていた「ロラン」と「ゴウカ」の仮釈放が正式に決定したのは翌日の昼だった。国王は魔導士であるマホの提案に最初は驚いたが、彼女からロランの王国に対する忠誠心は本物である事、仮に二人が逃げ出そうとすればマホが責任を以て二人を始末する事を誓う。
国王は悩んだ末にマホの条件を受け入れ、二人は条件付きで仮釈放が認められた。二人を迎えるためにアッシュとマホは訪れ、牢獄内の二人に話を伝える。
「……本気で言っているのか?我々を解放するだと?」
「ほう、それは有難い話だな!!いい加減にここには飽きていた所だ!!ふはははっ!!」
ロランは信じられない表情を浮かべ、まさか自分が一時的にとはいえ仮釈放される日が来るとは思わなかった。ロランは父親の罪を背負い、生涯監獄の中で過ごすと考えていた。
一方でゴウカの方は仮釈放の話を聞いて嬉しそうに笑い声をあげ、彼としては監獄生活も意外と悪くはなかったが、やはり身体を鍛える事や誰かと戦えない事に不満を常々抱いていた。
「吾輩は文句はないぞ!!マグマゴーレムだろうとなんだろうと戦ってやる!!」
「……俺はここを出るつもりはない」
「それは認められん。既に国王陛下の許可を貰っている……ここへ残るという事は国王に逆らうという意味だ」
「ぐっ……」
アッシュの言葉にロランは口ごもり、彼とは数十年来の付き合いだった。ロランとしては自分と父親の犯した罪を清算するまでは監獄を出るつもりはなかったが、国王の命令と聞いて彼は葛藤する。
彼の父親は国のために生涯を尽くしたが、ロランが忠誠を誓うのは王族である。国王の命令であるならばロランは逆らう事はできず、彼は仕方なく命令を承った。
「陛下の命令とあれば私は従う……だが、何故この男まで連れていく?」
「お主が収監された後、色々と問題が起きてな……」
「今の王国にお前以外に大将軍を任せられる男はいない。戻ってくるんだ」
ロランが捕まった後はアッシュが大将軍の地位に就く話も合ったが、彼をそれを断って現在も大将軍の座は誰も付いていなかった。一応はアッシュが代理として勤めてきたが、彼はあくまでも大将軍の地位に正式に就く事はなく、ロランが戻るのを待ちわびていた。
「吾輩としてはここから出してくれるなら何でも言う事を聞くぞ……いや、一つだけ条件がある」
「条件?」
「飯を一杯食わせてくれ!!ここの飯は大して美味くもなければ量も少ない!!久しぶりにオーク肉が喰いたい!!」
「やれやれ……儂等に協力してくれるのであれば好きなだけ食べさせてやろう」
「よし、約束だぞ!!」
ゴウカは子供の様にマホと指切りを行い、そんな彼を見てロランは頭を抱え、アッシュは彼が苦労している事を知って苦笑いを浮かべる。監獄内ではゴウカを抑えられるのはロランだけという事で二人は常に一緒の牢獄で過ごしていた。もしかしたらロランが釈放を受け入れた理由はゴウカから解放されたいという気持ちもあったかもしれない――
――こうして最強の大将軍と冒険者が監獄から解放され、世間にも二人の釈放の件は大騒ぎになった。一般人の間にはグマグ火山の異変は伝えられておらず、急に二人が監獄から解放された事になったため、民衆の間では不安を抱く者も多い。
「お、おい!!聞いたか?あの話……」
「ロラン大将軍が解放された話だろ?いったいどうなってるだ!?」
「黄金級冒険者のゴウカも解放されたとも聞いたぞ。たくっ、あいつのせいで俺の家はめちゃめちゃになったんだぞ!?何を考えてんだ!!」
「でも、ロラン大将軍はそもそも何で捕まってたんだ?ゴウカはともかく、あの人が何か悪い事をしたとか聞いた事もないんだけど……」
「父親の宰相が問題を起こして、それをロラン大将軍が責任に感じて投獄されたとか聞いてたが……別にロラン大将軍は悪くないんじゃないのか?」
「まあ、俺は素直に嬉しいよ。ロラン大将軍がいてこその王国だからな」
「ゴウカは……あんな騒ぎを起こさなければ俺も好きだったけどな」
二人の仮釈放に関しては民衆の間でも賛否両論となり、人々の間で大きな話題になった。
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