異伝 《論功行賞》

――飛行船が帰還した日の翌日、王城には討伐隊の面子が呼び出されて「論功行賞」が行われた。まずは今回の討伐隊の指揮を執ったバッシュが最初に表彰される事になり、彼は国王から直々に宝剣を手渡される。



「我が息子よ、次期国王として恥じぬ功績を上げた。これを受け取るがいい」

「はっ……今後もこの国のために尽くす事を誓います」

「うむ、頼んだぞ」



バッシュは宝剣を仰々しく受け取ると、国王は彼の両肩に手を乗せてこの国の未来を託す。続けて魔導士のマホが前に出ると、彼女に対して国王は新しい杖を差し出す。



「ゴノの街を魔物の脅威からよくぞ守ってくれた、どうか受け取ってくれ」

「ほう、これは見事な……有難く受け取らせてもらおう」



マホは見事な杖を差し出されて満足そうに頷き、膝を着いて杖を受け取った。次に王国騎士の代表としてドリスとリンが前に出ると、二人に対して国王は金と銀の勲章を差し出す。



「我が国の誇る騎士達よ!!これからもこの国の剣と盾として戦ってくれる事を期待しているぞ!!」

「「謹んでお受け取りします」」



二人は頭を下げて勲章を受け取ると、顔を伏せた時に笑みを浮かべる。騎士が勲章を貰う事は非常に名誉な事であり、しかも二人のために金と銀の装飾が施された勲章をわざわざ用意した。これは国王が二人に多大な期待を抱いている事を意味する。


ドリスとリンが下がると今度は討伐隊に参加した黄金級冒険者達が一斉に呼び出され、彼等には報酬金として金貨がそれぞれ100枚ずつ支払われ、更に勲章も与えられた。



「お前達もよくやってくれたな。リーナ、これで父親に負け知らずの武勇伝を手に入れたな」

「えへへ……」

「きょ、恐縮です」

「どうも」



リーナは国王の言葉に照れた表情を浮かべ、フィルの方は緊張した面持ちで受け取り、ガオウは慣れた様子で勲章を受け取る。彼等が終わると次はイリアとアルトが呼び出され、二人は今回の作戦の時に薬方面で色々と支援してくれたと報告を受けているため、二人のために国王は特別な報酬を用意していた。



「我が息子アルト、それに魔導士イリアよ。今回のお前達の功績を認め、既存の研究室の拡張と新しい研究施設の開発を認めよう……本当にこの報酬でいいのか?」

「ええ、お願いします」

「ありがとうございます、父上」



国王の言葉に二人は若干黒い笑みを浮かべ、その二人の反応に国王は引きつった表情を浮かべるが、二人の功績を考えると今更拒否する事はできない。そして最後に国王は討伐隊の中で最も功績を上げた人物を呼び出す。



「では最後に……英雄よ!!前に出てくれ!!」

「……あ、えっと、すいません。僕の事ですか?」



名前で呼び出されたわけではないので最初は誰か分からなかったが、ナイは国王が自分の事を見ているのを知って慌てて前に移動する。この時に何人かが笑ってしまったが、国王は気にせずにナイが跪く前に肩を掴む。



「今回もよくやってくれた。お主はこの国の一番の功績者だ、そのため我が国の最高の勲章を授けよう」

『おおっ……!!』



国王が用意したのは太陽の模様が刻まれた剣の形をした勲章を差し出し、それを見た者達は声を上げるのを抑えられなかった。この太陽の模様はこの国で親交されている「陽光神」を表し、そして剣はこの国の象徴である。


この二つの特徴を持つ勲章を与えられた人間は歴史上でも数えるほどしかおらず、この勲章を与えられるという事はナイは歴史上に英雄と並ぶ存在だと認められた事になる。国王は直々にナイの服に勲章を付けると、割れんばかりの拍手が起きた。



「皆の者!!英雄を讃えよ!!」

『英雄、万歳!!ナイ、万歳!!』

「あっ……ありがとうございます」



皆が自分を讃える姿にナイは焦るが、不思議と悪い気分ではなかった。こうして彼は王国の英雄として誰からも認められた――






――しかし、彼等は知らなかった。間もなく王国の歴史上最悪の事件が起きようとしている事を……






※現実の方で忙しくなりそうなので今後は話数を減らすかもしれません。

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