異伝 《ナイの新装備》
――ナイが帰還してから数日後、王都から飛行船が迎えに来る日に鍛冶師達は約束通りにナイ達の元へ訪れた。彼等は最初にナイから受け取った装備の修復と改良を施し、それを渡してくれた。
「ほれ、受け取ってくれ!!ピカピカに磨いてやったぞ!!」
「うわぁっ……あ、ありがとうございます」
「へえっ……流石はドワーフだな。良い腕をしてやがる」
「当たり前じゃっ!!儂等を誰だと思っている?」
返却された武器と防具は見事に磨き上げられ、まるで新品同然だった。ナイの旋斧と岩砕剣は光沢で輝き、防具の方も汚れが落ちてしかも改良を加えられていた。
「お前さんの腕鉄鋼とやらは面白い
「あ、ありがとうございます」
「刺剣とやらも前よりも尖らせてやったから扱う時は気を付けろ。それと水晶壁の欠片のペンダントは言われた通り、腕鉄鋼に仕込んでやったぞ」
「え、本当ですか!?」
これまでナイは首に付けていた水晶のペンダントは腕鉄鋼の甲の部分に嵌め込まれ、これで誤って失くす事はない。ペンダントだと激しい戦闘の場合は落としてしまう事もあり、失くさないようにナイはアルの形見である腕鉄鋼に水晶を嵌め込む。
今現在のナイは新しい技能を覚える必要がないぐらいに成長したが、この水晶のペンダントのお陰で彼は強くなれた。だからこそ絶対に失くさないようにナイは腕鉄鋼に水晶を嵌め込み、これでもう戦闘中でも失くす心配はなくなった。
「儂等も久々にいい仕事ができたぞ……そうそう、それとその旋斧を調べた時に分かった事があるんじゃが、どうやらそいつはただの魔法金属ではなさそうだぞ」
「えっ!?」
「儂等もこの年齢になるまで色々な魔法金属を取り扱ってきたが、その旋斧と呼ばれる魔剣に扱われている金属は見た事がない。恐らくだがその魔剣は今現在は失われた魔法金属で構成されておるんだろう」
「失われた魔法金属?それってどういう意味ですか?」
ドワーフの言葉にナイは疑問を抱き、旋斧が何という名前の魔法金属で作り上げられているのか気になった彼は尋ねると、ドワーフ達は首を振る。
「残念ながら儂等にも分からん。ひとつだけ言える事はその旋斧の素材に使用された魔法金属は現在では作り出せん。素材となる鉱石がもう失われたと聞いておる」
「鉱石が……失われた?」
「うむ、儂が子供の頃に生きとった爺様が言っておった。遥か昔、隕石が飛来した場所に特殊な鉱石が発見された。その鉱石は伝説の鍛冶師の手に渡り、とある武器の製作に利用されたとだけ伝えられておる。それ以上の話は儂の爺様も知らんかったようだが……」
「隕石……」
ナイはドワーフの鍛冶師の話を聞かされて旋斧を覗き込み、隕石が落ちた場所に発見されたという特殊な金属という話が気になった。もしかしたら今回落ちた隕石と火山で相対したゴーレムが何か関係があるかもしれず、ここでナイはドワーフ達に貸していた金属の塊と黒水晶を思い出す。
「そういえば例のゴーレムの核と黒水晶の事は何か分かりました?」
「う、うむ……儂らなりに精一杯に調べてみたが、この街の鍛冶屋の工房では設備が不足して満足に調べる事ができんかった」
「分かった事があるとすれば金属の塊は魔法を吸収する力を持ち、黒水晶の方は魔力を蓄積する力はあるが単体では魔力を吸収する事はできんという事だ」
「えっ?それってどういう意味ですか?」
「要するに黒水晶は単体では魔法を吸収する事もできん。だが、この金属の塊を組み合わせる事で魔力を蓄積させる事ができるという事じゃ」
鍛冶師達の話によると黒水晶に試しに魔力を送り込もうと実験した際、どれだけ魔力を流し込もうと何の反応も示さなかった。だが、金属の塊の方は魔力を吸収する性質を持つらしく、こちらの方は魔力を吸収した。
実験の際は鍛冶師達は火属性の魔法の使い手を呼び出すと、その人物に実際に魔法を撃ってもらう。黒水晶の方は火属性の魔法を受けても反応はなかったが、金属の塊の方は魔法を受けた瞬間に魔力を吸収した。しかし、吸収した後は金属の塊はしばらくの間は熱を放出し続けていたが、時間が経過すると魔力が失われて元に戻ったという。
「この金属の塊と黒水晶は二つ揃えなければ真の効果は発揮せん。まずは金属の塊が魔法の力を吸収し、それを黒水晶に送り込む事で魔力を蓄積させる。お主が倒したというゴーレムはこれらを利用して魔法の力を吸収して攻撃に利用しておった事になる」
「な、なるほど……そう言う事だったのか」
「そして……恐らくではあるがこの金属の塊と黒水晶の二つの性質を組み合わせた金属こそがお主の魔剣の素材として使われているのではないかと儂等は考えておる。つまりはお主の旋斧はこの二つの素材を組み合わせた特殊合金という事じゃ」
「旋斧が……?」
鍛冶師達の言葉にナイは驚き、旋斧を構成する魔法金属の正体が自分が倒した新種のゴーレムの体内から発見された二つの素材とは夢にも思わなかった。
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