異伝 《アルの形見》
「よ、良かった……危ないから二人とも離れて!!」
「ウォンッ!!」
「ぷるぷるっ(了解)」
ビャクはプルリンを連れて距離を取ると、ナイは改めて崩壊した村長の屋敷を確認する。ゴーレムは瓦礫の中に埋まっているはずなので慎重にナイは近づこうとした時、瓦礫を押し退けてゴーレムが姿を現す。
ゴーレムが姿を現した途端、ナイは即座に違和感を抱く。何故か瓦礫から現れたゴーレムの体色が変化しており、先ほどは全身が漆黒に染まっていたというのに何時の間にかマグマゴーレムの如く赤色に変色していた。
(マグマゴーレム!?いや、こいつは……違う!!)
最初は自分が戦っていたゴーレムとは別個体のゴーレムが現れたのかと思ったが、即座にナイは敵の正体が「火属性の魔力」を吸収したゴーレムだと見抜く。どうやら村長の屋敷に残っていた火属性の魔石を吸収したらしく、ゴーレムは掌の上に魔石の残骸を手にして口元に運ぶ。
「ウオオオオッ!!」
「まずいっ!?」
火属性の魔力を取り込んだ事でゴーレムはマグマゴーレムのように全身を発熱させ、黒水晶の方も赤色へと変色した。ナイは直感で危険を感じ取って旋斧を構えると、ゴーレムはナイに目掛けて口元から光線を放つ。
「アガァアアアアッ!!」
「くぅうっ!?」
「ウォンッ!?」
「ぷるるんっ!?」
旋斧を盾代わりにしてナイはゴーレムが口元から放った火属性の魔力を受け止め、先のドリスとの戦闘の時のように魔力を吸収して耐えようとした。しかし、どれほどの魔石を喰らったのかゴーレムは火竜の火炎の
「アアアアアッ!!」
「うぐぅっ……!?」
「ウォオオンッ!!」
「ぷるぷるっ!!」
ナイが徐々に押されていく光景を見てビャクもプルリンも見て居られず、ゴーレムの元へ向かおうとした。しかし、それに気づいたゴーレムは首元を動かしてビャク達に攻撃を仕掛けた。
「オアアッ!!」
「キャインッ!?」
「ぷるんっ!?」
「危ない!?」
ビャクは咄嗟に上空へ跳躍し、その背中に乗っていたプルリンはしっかりとしがみつく。どうにかゴーレムが振り払った光線を回避する事には成功したが、そのせいで村に残っていた建物が光線で焼き払われる。
周囲一帯が光線に寄って火の海と化し、これ以上にゴーレムに攻撃をさせていたら村は完全に焼き付くされてしまう。そう考えたナイはゴーレムを倒すために接近し、先ほど吸収した火属性の魔力を生かして突進した。
(ドリスさんのように真似できるか分からないけど……やるしかない!!)
火属性の魔力を宿した旋斧をナイは後ろに傾けると、ドリスの爆走を見習って刃から魔力を一気に解放させ、爆炎を利用して一気に加速する。見よう見まねで上手くいくかは分からなかったが、この状況では他に手はなかった。
「だあああっ!!」
「アグゥッ!?」
ゴーレムの側頭部に目掛けてナイは旋斧を叩き付けると、先ほどの岩砕剣の一撃で罅割れていた頭部に更なる衝撃が加わって亀裂が広まる。それでも完全な破壊には至らず、ゴーレムは近づいて来たナイを腕で振り払う。
「ウオオッ!!」
「ぐふっ!?」
ナイはゴーレムの怪力によって吹き飛ばされ、それでも空中で身体を回転させてどうにか着地する。何とか倒れる事を阻止したナイはゴーレムに振り返ると、あちは既にナイに顔を定めて攻撃の準備を行う。
「オアアアッ……!!」
「くそっ……!!」
ゴーレムは全体に埋め込まれた黒水晶を赤く発光させ、再び光線を放つ準備を整えていた。もしも光線が直撃すればナイは無事では済まず、旋斧で攻撃を防ぐのも限界があった。
しかし、口元から火属性の魔力を解き放とうとするゴーレムの姿を見てナイはある方法を思いつき、一か八かの賭けになるがこのまま殺されるぐらいならば反撃を繰り出す事にした。
「アガァッ――!!」
ゴーレムが口元を大きく開いた瞬間、ナイは腕を伸ばして「フックショット」を放つ。ナイが装着している「腕鉄鋼」は彼の養父であるアルの形見であり、内部にはアルトが改造を施してフックショットを取りつけている。
フックショットがゴーレムの肉体に衝突すると、ナイは腕鉄鋼に装着されている風属性の魔石を操作して引き寄せる。正確に言えばゴーレムの元に目掛けてナイの身体が引き寄せられ、光線が放たれる直前にナイは敢えて接近した。
「だぁあああっ!!」
「ッ――!?」
光線が口元から放たれる瞬間、ナイは旋斧をゴーレムの顔面に叩き込む。その結果、先の戦闘で既に頭部を負傷していたゴーレムは光線を吐き出そうとした瞬間に口元を刃を塞がれた事により、暴走した魔力が口内に駆け巡って爆発を引き起こす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます