過去編 《弱者は王と化す》
――襲い掛かってきたファングの群れを蹴散らした後、ホブゴブリンは彼等の死骸に嚙り付く。しかし、いくら口にしようとゴブリンの時に味わったコボルト亜種の味には及ばず、それが不満なホブゴブリンは新たな獲物を探す。
ファングよりも強い獲物を探す道中、ホブゴブリンは山の奥に進む。そして遂に見つけたのが川辺で身体を休ませる「ボア」の姿だった。
「グギィイイイッ!!」
「フゴォッ!?」
ホブゴブリンはやっと発見した獲物に対して鳴き声を上げ、その声を聞いたボアはホブゴブリンに気付いて慌てて立ち向かおうとした。しかし、ボアが戦闘態勢に入る前にホブゴブリンは接近すると、その巨体に組み付いて力ずくで押し倒す。
「フンッ!!」
「プギャアアッ!?」
横倒しにされたボアはホブゴブリンに抑え込まれ、必死に暴れるがホブゴブリンは決して力を緩めない。ボアに一切の反撃の隙を与えず、ホブゴブリンは急所に目掛けて手刀を繰り出す。
「グギィイッ!!」
「フガァッ……!?」
ホブゴブリンへと進化した事で身体能力も大きく上昇しており、振り下ろした手刀はボアの急所を貫く。ホブゴブリンが腕を引き抜くと大量の血液が噴き出し、しばらくの間は暴れていたボアも血が抜けていくごとに力が抜けて動かなくなった。
完全に死んだ事を確認したホブゴブリンは、血に染まった自分の右腕に視線を向けて改めて自分自身の強さに驚く。少し前まではホブゴブリンはどこにでもいる非力なゴブリンでしかなかった。しかし、今のホブゴブリンはボアをも圧倒する力を身に付けていた。
「グギィイイイイッ!!」
勝利の雄叫びを上げながらホブゴブリンはボアに喰らいつくと、先ほどのファングとは比べ物にならない味の美味さに歓喜する。この日からホブゴブリンは魔獣を狩り、それを食す事で更なる力を求める――
――ホブゴブリンは様々な魔獣の肉を喰らい、時には命を落としかねないほどの敵と遭遇した。その相手は山の主である「赤毛熊」であり、流石のホブゴブリンも自分の死を覚悟する程の強敵だった。
「ガアアアアッ!!」
「グギィイイイッ!!」
赤毛熊との戦闘ではホブゴブリンは素手だけではなく、自作の石斧を手にしたホブゴブリンは赤毛熊に目掛けて石斧を叩き込み、遂には赤毛熊に膝を着かせる。
「ガアッ!?」
「グギャアアッ!!」
石斧で赤毛熊の片足を負傷させると、この好機を逃さずにホブゴブリンは赤毛熊に組み付き、恐るべき怪力で赤毛熊を持ち上げた。赤毛熊は必死にもがくがホブゴブリンは手放さず、そのまま力任せに放り込む。
「グギィイイッ!!」
「ガアアアッ――!?」
赤毛熊とホブゴブリンが戦っていた場所は渓谷であり、谷の底に目掛けてホブゴブリンは赤毛熊を投げ飛ばす。赤毛熊は悲鳴を上げながら谷底に落下し、やがて渓谷に流れている川に飲み込まれてしまう。
谷底に赤毛熊を投げ飛ばしたホブゴブリンは膝を着き、流石に今回の敵は手強く、身体中が傷だらけだった。赤毛熊と戦う前からホブゴブリンの肉体には魔獣との戦闘によって多くの古傷が残っており、それでも彼は遂に山の主を打ち倒した。
「グギィイイイイッ!!」
赤毛熊さえも倒したホブゴブリンは両腕を掲げ、その鳴き声に引き寄せられて彼の元に山の中に隠れていたゴブリン達が姿を現す。ゴブリン達は赤毛熊を打ち倒したホブゴブリンに動揺しながらも、彼の前に集まって跪く。
「ギギィッ……」
「ギィイッ……」
「ギィアッ……」
「グギィッ――!?」
自分の前に跪くゴブリンの群れを見てホブゴブリンは戸惑うが、彼等の考えている事はすぐに理解した。この山に暮らすゴブリン達はホブゴブリンこそが自分達の「主」に相応しいと考え、彼の前に跪いたのだ。
山中のゴブリンがホブゴブリンの元に集い、その光景を目にしたホブゴブリンは今までにない高揚感を抱く。今までは他の生物に怯えたり、従って生きていくしか経験がなかった。しかし、
――俺はこいつらの王だ!!
元々はただの非力なゴブリンでしかなかったが、
その後、山中のゴブリンを従えたホブゴブリンは周辺地域の魔獣を狩りつくし、更なる進化を迎える。やがて進化を遂げたゴブリンの王は山の麓に存在する人間の村を襲い、住民を1名を除いて皆殺しにする。
しかし、皮肉にもこの取り逃がした1名の生存者が後に彼の命を絶つ存在となる事は誰も知らない――
※作中に現れたゴブリンキングの誕生秘話です。
〜今回の投稿5秒前〜
カタナヅキ「よし、書き終わったぞ……じゃあ、後は予約投稿を……」
プルリン「ぷるんっ!!」( ゚Д゚)つ 公開ボタン
カタナヅキ「あっ!!」(; ゚Д゚)コラー!!
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