閑話 《新薬の完成》
「ふっ、ふふっ、ふふふっ……あはははははっ!!」
「……な、何だい、そんな悪役みたいな笑い方をして」
飛行船の研究室にてイリアが高笑いすると、彼女の実験を強制的に手伝わされていたアルトが不気味に思う。まるで悪の黒幕のような笑い方をするイリアだったが、彼女の手には緑色の丸薬が手に乗っていた。
「見てください、これを!!緑聖水を遂に丸薬にする事にできましたよ!!」
「丸薬?確か、和国の薬だったかい?」
「そうです、普通の回復薬と違って丸薬は飲み込むか噛み砕くだけで効果を発揮します。しかも私の丸薬なら回復速度も向上させています!!」
和国の丸薬の技術を応用して、イリアは自分が作り出した回復薬と聖水の効果を併せ持つ「緑聖水」に改良を加える。彼女が作り出した丸薬は緑聖水の効果を発揮する新薬だった。
世界に広まっている回復薬の殆どは飲み薬であるが、戦闘の最中に飲み薬を飲む余裕がない状況に陥る事は多い。しかし、丸薬の類ならば口に含むだけで効果を即座に発揮する。特にイリアの制作した丸薬は市販の回復薬よりも回復量も回復速度も高い。
「この薬が量産化に成功すれば薬社会に革命が起きますよ……そうすれば私は歴史に名を刻む天才薬師として讃えられるでしょう」
「世も末だな……(ぼそっ)」
「今、何か言いました?」
「いや、何でもないよ」
新薬が完成した事にイリアは嬉しがるが、彼女にとっては自分の想像する最高の薬とは言い切れない。確かに現時点で造り出せる最高の薬である事は間違いないが、更にイリアは改良の余地を考える。
「ですけど丸薬にしたところで薬の本来の効果を強化する事はできません。戦闘中でも使いやすくて回復速度も上がりましたが、別に戦わない人にとっては飲み薬だろうと丸薬だろうとどうでもいい話ですからね」
「丸薬の方が作り出すのに時間が掛かるんだろう?それなら戦わない人間には飲み薬を販売して、戦える人間には丸薬を売り込めばいいじゃないか」
「別に私はお金を稼ぐ目的で薬を作っているわけじゃないんです。どんな人間でも気軽に使える最高の薬を作り出したいんです」
「へえっ、意外だな……君の事だからお金儲けの目的もあると思っていたよ」
「まあ、それは3割ほどありますが……」
「やっぱり、あるんじゃないか!!」
イリアにアルトは突っ込みを入れるが、当のイリアは緑聖水の丸薬を覗きながらここからどのように改良を加えるのかを考えた。その結果、彼女はある事を思い出す。
「そうですね、次は魔力回復薬の効果も加えましょう」
「ど、どういう意味だい?」
「緑聖水は怪我を治すだけではなく、疲労回復効果もあります。これは回復薬の回復効果と聖水の聖属性の魔力を活性化させる性質を併せ持っているからです。そこで更に魔力回復薬の効果を合わせます。そうすれば怪我を治療し、疲労を和らげて、更には魔力も回復するとんでもない薬ができますよ!!」
「……そんなに上手くいくのかな?」
アルトはイリアが優れた薬師だとは認めているが、回復薬や聖水や魔力回復薬といった3つの薬の効果を併せ持つ新薬を作り出せるのか疑う。しかし、彼女ならば不可能な事でも可能にしてしまうような気がした。
「さあさあ、王都に戻り次第に忙しくなりますよ!!まずは今回完成した緑聖水を大量生産して売り払い、その利益で得たお金で今度は王国中の魔力回復薬を購入して最も質のいい魔力回復薬を売っている場所を探し出します!!場合によっては他国にも薬を売りつけて稼ぎますよ!!」
「ほ、ほどほどに頑張ってくれ……」
自分の目的のためなら何でも利用するというイリアの熱意にアルトは圧倒され、恐らくは彼女の研究のためにこれからも自分は付き合わされると考えた彼は深いため息を吐き出す――
※何だかんだでこの二人の相性はいいと思います。(´・ω・)テエテエ……ナノカ?
〜後日談〜
イリア「アルト王子、薬が逃げました!!捕まえてください!!」
謎の物体「(# ゚Д゚)シャアアッ」
アルト「薬!?これ、薬なのかい!?」
===ヘ(;´・ω・)ノ ===ヘ( ゚Д゚)ノ虫アミ ===(# ゚Д゚)つ
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