閑話 《告白》

――アチイ砂漠から帰還中、ナイは飛行船の甲板で外の景色を眺めていた。現在の飛行船は移動速度を落としており、帰還までにかなり時間が要する。


移動速度を落とした理由は土鯨との戦闘で無理に動かした影響なのか、噴射機の調子がおかしくて高速移動はできない状況だった。本格的に修理するには王都まで戻る必要があり、しばらくの間は低速飛行で移動しなければならない状態だった。



「師匠の話によると王都に戻るまで10日は掛かるそうだ。それに途中で置いて来た他の者も合流しないといけないからね。戻るのは当初の予定よりも大分遅れそうだ」

「そっか……」

「まあ、いいんじゃないですか?問題も解決しましたし、ゆっくりと過ごしましょう」

「い、いいんでしょうか……」

「私達にはどうにもできない。なら、飛行船の旅を楽しんでも罰は当たらない」



イリアの言葉を聞いてヒイロは複雑な気持ちを抱くが、実際の所は飛行船の不調はナイ達にはどうしようもできず、ここから先は王都へ戻るまで各自自由に過ごす事が決まる。


アチイ砂漠での戦闘で王国騎士達も疲労が蓄積されており、飛行船の見張り番以外の人間は休息を取る事を指揮官のバッシュも認める。騎士達も先日の土鯨との戦闘の疲労が抜けきっておらず、大半の人間は部屋に籠って身体を休ませていた。



「ふうっ……やっぱり、凄い景色だな」

「あ、ナイ君!!ここにいたんだね!!」

「リーナ?」



甲板にてナイは外の景色を楽しんでいると、リーナが彼を見つけて嬉しそうに近付いてきた。まるで主人を見つけた飼い犬のようにリーナはナイに身体を摺り寄せる。



「えへへ〜」

「うわっと……リ、リーナ?なんだかいつもより近くない?」

「だって最近は二人きりになる事も少なかったし……」



嬉しそうに自分に擦り寄ってくるリーナにナイは戸惑いながらも拒否する事はできず、彼女の好きなようにさせておく。しかし、リーナは不意にナイの顔を見つめ、意を決したように告げた。



「ねえ、ナイ君……こっちを向いてくれる?」

「え?どうかし……!?」



振り返った瞬間、リーナはナイの唇を奪う。彼女の行動にナイは驚くが、リーナは瞼を閉じてナイの身体から離れない。やがて数秒ほど経過すると唇は離れるが、リーナは舌を出して悪戯をした子供のように笑いかける。



「えへへ……ごめんね、我慢できなくて」

「リーナ……」

「ねえ、ナイ君は僕の事が好き?」



自分に抱きついて来たリーナに対してナイは咄嗟に言い返す事ができず、正直に言えばナイはリーナに対して好意を抱いていた。しかし、同時にモモに対しても彼女と同じような気持ちを抱く。


子供の時は色々と事情があって女の子と触れ合う機会がなかったため、恋愛方面に関してはナイは鈍かった。だが、モモやリーナが自分に対して好意を抱いている事は流石に理解しており、それと同時に二人のどちらかを選ぶ事に恐れを抱いていた。



「リーナの事は……好き、だと思う」

「ほ、本当に?」

「でも、モモの事も……好きなんだ」



ナイの言葉にリーナは嬉しそうな表情を浮かべるが、続けてナイがモモの事を話すとリーナは少し落胆した表情を浮かべるが、彼を怒らずにそれでも頬を膨らませながらもナイに抱きつく。



「もう、ナイ君は欲張りだな……僕もモモちゃんも一緒にお嫁さんにしたいの?」

「えっ……いや、でもそんな事は」

「多分、できると思うよ?だって僕と結婚すればナイ君は公爵家の跡継ぎになるし、そうすればモモちゃんとも結婚できるよ」

「えっ!?」

「でも……その場合は正妻は僕になるからね」



リーナの言葉にナイは驚いた表情をうかべるが、そんな彼にリーナは笑顔を浮かべた――






※本当はバレンタイン当たりに投稿する予定でしたが、作者はリア充撲滅派なので投稿が遅れました(# ゚Д゚)ケッ、サッサトシアワセニナリヤガレ!!

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