特別編最終話 《さらば、アチイ砂漠》
――王国の討伐隊と巨人国の軍隊は力を合わせ、連合軍として土鯨の討伐のために共に戦い、見事に勝利した。犠牲はあったが災害級の魔物を屠る事に成功し、これでアチイ砂漠の砂漠化を引き起こした原因は取り除かれた。
しかし、砂漠化を引き起こす魔物を退治したからといって砂漠が元に戻るわけではなく、土鯨に喰いつくされた大地の栄養は簡単に戻る事はない。それでもアチイ砂漠がこれ以上に広がる事はなくなり、それに砂漠が元に戻れば砂船などの乗り物の需要が無くなってしまうため、必ずしも砂漠が戻らない事は悪い事ではない。
土鯨という脅威が消えた事で今後も王国と巨人国の国交は復活し、今まで通りに両国の商品の流通も行われるだろう。また、今回の一件で王国と巨人国の繋がりが強まったと言える。
しかし、土鯨を倒した後もまだまだ問題は残っており、グマグ火山とグツグ火山に出現した大量のマグマゴーレムの対処、他にもゴノの街を襲撃したトロールの集団の調査を行わなければならない。
「本当にもう行くのか?君達には色々と礼をしたいのだが……」
「気持ちは有難いが、こちらも事情があって戻らなければならない。気持ちだけ受け取っておこう」
土鯨を討伐してから翌日、討伐隊は帰還の準備を整えて飛行船へ乗り込む。別れ際にバッシュはテランと握手を行い、その一方でナイは激戦を繰り広げたライトンと拳を交わす。
「お前との決着はまだ付いていない……次に会う時は俺はもっと強くなっているぞ」
「あははっ……それは怖いな」
「お前も強くなれ……何時の日か俺は大将軍になる、その時はお前も王国一の騎士となれ」
「王国一の騎士?」
ライトンの言葉にナイは咄嗟に言い返す事ができず、彼は最後にナイと熱い抱擁を交わすと別れの言葉を告げて見送ってくれた――
――飛行船に乗り込んだナイ達は倒れている土鯨の死骸に視線を向け、討伐を果たしてから1日は経過しているが土鯨は未だに放置されていた。正確に言えば死骸があまりにも大きすぎてどのように処理するべきか困っている。
「巨人国の人たちは土鯨をどうするんだろうね」
「さあ、解体して食べるんじゃないですか?」
「た、食べるのですか!?」
「いくら巨人族が大喰らいでも……あれを食べるのには何年もかかりそう」
「冗談ですよ」
飛行船の甲板からナイ達は土鯨の死骸を眺め、この土鯨の死骸を巨人国はどの様に扱うのかは気になったが、もしかしたら本当に食べるのかもしれない。
一つだけ気がかりな事は土鯨が生身の生物である事だと判明し、討伐される前は土鯨は砂鮫やゴーレム種のような生物だと思われていたが、実際の所は生身の生物が外殻うで全身を覆っていた事が判明する。こんな魔物は今までに見た事がなく、色々と謎の多い魔物だった。
「さてと、私達も王国へ戻れば忙しくなりますよ。まずはゴノの街を襲撃したトロールの集団の調査ですね」
「マホ魔導士たちは大丈夫かな……」
「まあ、大丈夫でしょう。私としては火山に現れたマグマゴーレムをどのように処理するかですね」
「そういえば火山に残った人たちは大丈夫でしょうか」
「それは知りません、忠告を無視して残った人たちの心配なんていりませんよ」
「う〜ん……」
グツグ火山に暮らす鍛冶師達は結局はナイ達の忠告を無視した形となり、今でも無事かどうかは分からない。しかし、忠告を無視した彼等を心配する義理はないとイリアは断言すると、彼女は飛行船を浮上する前に船内に戻るように促す。
「そろそろ出発しますよ。自分の部屋に移動して下さい」
「ちょっと待って……もう少しだけこの風景を眺めて居たい」
ナイは次はいつアチイ砂漠へ訪れるのか分からないため、飛行船が飛び立つ前に砂漠の風景を眺めて置く。ここまで色々とあったが無事に目的を果たした事で充実感はあり、ナイは砂漠に心の中で別れを告げる。
『さよなら』
最後に一言だけ別れを告げたナイは船内へと戻り、こうして飛行船は王国へ向けて帰還した――
※これにて特別編は完結です。まだまだ伏線は残っていますが、ここから先の話は書けるか分かりませんので完結にさせていただきます。
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