特別編第77話 《力を合わせて》

――以前にナイはアルトから面白い話を聞い事を思い出し、その内容というのが魔法耐性が高い魔法金属の壊し方だった。魔法金属は魔法耐性が高いのと同時に並の金属よりも頑丈な事で有名だが、その魔法金属を破壊する手段がある事を教えてくれた。



『魔法金属は魔法耐性が高い、だから火属性や水属性の魔法攻撃でも耐え切る事ができる。けど、この二つの魔法を交互に繰り出した場合は話は別だ』

『え?どういう事?』

『簡単な話さ、まずは最初に水属性の魔法で魔法金属を冷やすんだ。その後に高熱を放つ火属性の魔法で攻撃する。すると熱疲労を引き起こした魔法金属は砕けやすくなるんだ』

『え?冷やした後に熱したら壊れやすくなるの?』

『まあ、分かりやすく言えばそうだね。大抵の物質は凍らせた後に熱すれば砕けやすくなる。もしも力だけでは壊せないような頑丈な敵と戦う時は試してみなよ』

『う、う〜ん……よく分からないけど、分かったよ』



この時のナイはアルトの話を聞いてもいまいち理解はできなかったが、彼の言う通りに頑丈な敵が目の前に現れた。だからこそナイはアルトの言葉を信じて実戦で試す。


ナイとリーナが力を合わせて凍結化させた箇所にドリスとヒイロは魔槍と魔剣を構え、ナイの言葉を信じて二人は凍らせた箇所に目掛けて技を繰り出す。



「烈火斬!!」

「爆槍!!」

「オアッ……!?」



二人の攻撃が衝突した瞬間に爆炎が氷を溶かしてしまい、ここで初めて土鯨は呻き声を上げる。先ほど攻撃を受けた時は土鯨の肉体には爆発を受けても表面が黒焦げになった程度の損傷だったが、今回は表面が焦げるだけではなく、外殻に僅かながらに亀裂が走った。



「き、効いた!?」

「亀裂が入りましたわ!!」

「今だ!!皆でその亀裂を攻撃して!!」

「おっしゃあっ!!」



外殻に亀裂が入ったのを確認するとナイ達は攻撃を繰り出し、亀裂を広げる衝撃を与える。硬いものほど罅割れが生まれると砕けやすく、攻撃を受ける度に衝撃が広がって亀裂が拡大化していく。



「オアアアッ!?」

「うおっ……こいつ、焦ってやがる!!攻撃が効いてるんだ!!」

「でも、まだ本体までには届きませんわ!!」

「いいから攻撃を続けろ!!いずれ砕けて必ず本体が出てくる!!」

「ナイ君、もう一度やろう!!」

「分かった!!」



外殻の亀裂が広がっていくと土鯨も焦りを覚えたのか、身体を震わせて全身を拘束する銛を引き抜こうとする。しかし、肉体に突き刺さった銛が抜け落ちる前にナイ達は攻撃を繰り出す。


再びナイとリーナの攻撃によって外殻の表面が凍結化し、続けてヒイロやリーナが爆炎で氷を溶かしながら衝撃を与える。何度か繰り返すと土鯨の外殻の一部が崩れ始め、遂には他の箇所にも亀裂が広まっていく。



「うおおおおっ!!」

「巨人族の誇りを見せろ!!」

「王国軍に負けるな!!」



亀裂が他の箇所にも広がると巨人国の兵士も奮闘し、特にナイと激戦を繰り広げたライトンは両手で錘を振るって亀裂に叩き込む。力技ではあるが亀裂が入った箇所に攻撃が当たる度に罅割れは広まり、遂には外殻が崩れ始めていく。




――ウオオオオオオオッ!?




予想外の王国と巨人国のの攻撃に土鯨は悲鳴を上げ、なりふり構わずに暴れて逃げ出そうとする。しかし、それを予測していた巨人国の軍船はギガンとバッシュの指示で何としても土鯨が逃げられないように船を動かす。



「もう少しで奴を仕留められる!!この機会を逃すな、一気に決めろ!!」

「王国騎士の誇りを見せろ!!巨人国の兵士達ばかりに苦労させるな!!」

『うおおおっ!!』



捕鯨砲で土鯨を拘束した軍船は地中に逃げられないように動き出し、地中に潜り込もうとした土鯨を逆に引っ張り上げる。その隙を逃さずにナイ達は総攻撃を仕掛けるが、ここでナイの旋斧に異変が起きた。



「うわっ……しまった、魔力が切れた!?」

「えっ!?」



魔法腕輪に装着した水属性の魔石が切れた事でナイの旋斧は色を失い、水属性の魔力を失ってしまった。あともう一押しという所で魔力が切れた事でナイは土鯨を凍り付かせる方法を失うが、リーナはそんなナイに対して自分一人でも何とかすると告げる。



「大丈夫、僕一人でも凍らせる事ができるよ!!」

「でも、それだとリーナの負担が……」

「大丈夫……僕を信じて!!」



リーナは自分だけが土鯨を凍らせる事に気付くと、彼女は蒼月を背中に戻して土鯨の背中側に這い上る。彼女の行動にナイは驚くが、リーナは覚悟を決めた表情を浮かべて土鯨の背中に移動した。


最近はナイとの実力差に悩んでいたリーナだったが、彼女はナイになくて自分にある力を思い出す。




――いくら身体を鍛えたところで彼女はナイには追いく事はできない。しかし、逆にナイができなくて自分にできる事を考えたリーナが辿り着いた結論は「蒼月」だった。

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