特別編第76話 《総攻撃》

「おい、手が止まってるぞ!?休んでいる場合か!!」

「ガ、ガオウさん!?」

「おら、動け!!攻撃を止めるな!!和風牙!!」



ガオウがナイとリーナの元へ追いつくと、彼は空中に跳躍して身体を回転させながら土鯨に鉤爪を叩き込む。ポイズンタートルにも損傷を与えた技だが、土鯨の外殻には掠り傷程度しか与えられず、逆にガオウの腕が痺れてしまう。



「うがぁっ!?な、何て硬さだよ!!」

「ここは私にお任せください!!爆槍!!」

「ドリスさん!?」



ドリスが駆けつけると彼女は自分の魔槍「真紅」を突き出し、槍の先端が突き刺さった瞬間に爆発を引き起こす。至近距離からの爆破ならば土鯨の外殻も破壊できるのではないかと期待したが、彼女の攻撃でも外殻の表面を少し削って黒焦げにする程度だった。



「そ、そんな!?私の爆槍が効かないなんて……」

「何をしている!!退け、私が切る!!」



リンが後ろから追いつくと彼女はドリスの肩を掴んで後ろに探させ、まるで侍の居合の如く、鞘から勢いよく魔剣「暴風」を引き抜く。


鞘から剣が抜かれた瞬間、風の斬撃が繰り出されてドリスが削り取った箇所に衝突下。しかし、リンの風の斬撃すらも表面に掠り傷を与える程度外殻を破壊する事はできなかった。



「なっ!?そんな馬鹿なっ……」

「それなら私達が!!ミイナ、私に合わせてください!!」

「んっ」



更にヒイロとミイナが駆けつけ、ヒイロは魔剣「烈火」を振りかざすとミイナは魔斧「如意斧」と「輪斧」を掲げる。ヒイロが刀身に炎を纏わせた状態で繰り出すと、ミイナは彼女の持つ魔剣の刃に目掛けて両手の斧を叩き付ける。



「せいりゃあっ!!」

「ていっ」

「おおっ!?が、合体技!?」



二人が魔剣と魔斧を組み合わせた攻撃にリーナは瞳を光り輝かせて興奮するが、二人の攻撃も外殻を破壊するには至らず、せいぜい他の者よりも外殻を少しだけ削り取る事ができただけだった。討伐隊の中でも魔剣や魔槍や魔斧使いの攻撃でも土鯨の外殻の破壊には至らない。


王国騎士達や黄金級冒険者の攻撃を以てしても土鯨の外殻は突破できず、他の場所では巨人国の兵士が力任せに土鯨に攻撃を叩き込むが、いくら攻撃を加えてもせいぜい表面に掠り傷か少し削り程度の損傷しか与えられなかった。



「このぉっ!!」

「くそっ、くそぉっ!!」

「な、なんて硬さだ!?」

「うおおおおっ!!」

「オオッ……オアアアアアッ!!」



いい加減に自分に攻撃を仕掛けてくる者達を鬱陶しく思い始めたのか、土鯨は地中に潜り込むのを止めて暴れ始める。慌てて攻撃を仕掛けていた者達は離れるが、捕鯨砲で繋がっている軍船は激しく揺れる。



「うわぁっ!?」

「ま、まずい!!落ちるぞ!?」

「バッシュ王子、しっかり掴まっていろ!!」

「くっ……化物めっ!!」



軍船の甲板で待機していた者達も土鯨が暴れた際に船が揺れ、慌てて甲板から放り出されないようにテランはバッシュの腕を掴み、マストにしがみつく。バッシュは想定以上の力を誇る土鯨に悪態を吐く。


このままでは軍船が転覆しかねず、なんとかして土鯨の外殻を破壊しなければならない。しかし、破壊しようにも外殻が硬すぎて生半可な攻撃は通じない。



「くそっ、この腐れ鯨が!!刺身にして食ってやるぞ!?」

「お腹壊しますわよ!?」

「言っている場合か!!どうすれば……」

「こうなったら全員で一か所に攻撃しましょう!!それしか方法はありません!!」

「くっ……それしかないか」



ナイ達の攻撃では表面を削る程度しかできず、ヒイロは全員が力を合わせて一か所に攻撃を集中させて外殻を削り切る事を提案する。他に方法がない以上は彼女の言う通りにするしかない。



(一か所に削り取る……それしか方法はないのか?)



全員で力を合わせて外殻を破壊するのは賛成だったが、ナイは闇雲に攻撃を仕掛けるよりも効率よく外殻を破壊する方法がないのかを考える。この時に彼はドリスの真紅とリーナの蒼月に視線を向け、ある事を思いついた。



「そうだ……リーナ!!ここを凍結させて!!」

「えっ!?う、うん、わかった!!」

「ドリスさんは爆槍の準備を!!ヒイロも手伝って!!」

「わ、分かりましたわ!!」

「わ、私もですか!?」

「何か考えがあるのか!?」



ナイの言葉を聞いてリーナは指示された通りに蒼月を構え、ドリスも魔力を溜めて爆槍の準備を行う。この時にナイも旋斧を構えると水属性の魔力を刃に纏わせ、リーナと共に攻撃を行う。



「同時に行くよ!!」

「うん!!せぇのっ……でりゃあっ!!」

「オアッ……!?」 



水属性の魔力を纏わせた事でナイの旋斧は青く光り輝き、蒼月も氷の刃を大きくさせ、二人は同時に攻撃する。すると広範囲に土鯨の外殻が凍り付き、すかさずにナイはドリスとヒイロに声をかけた。



「この場所に早く攻撃して!!二人で同時に!!」

「ええっ!?」

「おいおい、折角凍らせたのに溶かしちまうのか!?」

「いいから早く!!」



ナイの言葉に全員が驚き、凍結させた箇所に炎の魔剣で攻撃を行うように指示したナイに誰もが慌てるが、ナイも考えがあっての行動だった。

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