閑話 《種族を越えた友情》
「――全く、いったいどんな風に戦えばこんな目に遭うんですか?」
「あいててっ!?」
「ぐぅっ……」
外で盛大な宴が行われいる中、飛行船の船内ではナイとライトンが治療を受けていた。二人とも酷い怪我を負っており、一応は回復薬の類で治療しているがナイの場合は顔面を何度も硬い石畳に叩き付けられたせいで危うく鼻が曲がる所だった。
鼻が曲がった状態で回復役を使用すると鼻の形が曲がる可能性があるため、イリアはナイの鼻を矯正するために引っ張り上げる。ライトンの方も最後のナイの攻撃で顔面を強かに打ち付け、彼も同様に鼻を戻してもらう。
「これでよし、後は回復薬を飲んでじっくりと治してください。それじゃあ、今夜はゆっくりとここで休んでくださいね」
「ううっ……ありがとうございます」
「くっ……なんと荒々しい医者だ」
「何ですか?文句を言うなら鼻をへし曲がったまま治しますよ」
「や、止めろ!!」
ナイは涙目を浮かべながらも礼を告げ、ライトンはぶつぶつと文句を呟きながらも横になる。この時にナイとライトンは隣同士のベッドで横たわるが、ライトンの場合は巨人族用のベッドなど用意していなかったため、普通のベッドを何台も並べて彼は横になる。
お互いに気まずい雰囲気となり、大人しく身体を休ませる事しかできなかった。しかし、やがて沈黙に耐え切れなくなったのか、ライトンがナイに口を開く。
「おい、起きているか?」
「あ、はい」
話しかけられたナイはライトンに顔を向けるが、ライトンはナイに背中を向けたまま顔を合わせようとしない。そんな彼にナイは不思議に思うが、ライトンはゆっくりと語り掛ける。
「……良い試合だったな」
「えっ……」
「お前はそう思わないのか?」
ライトンの思いがけない言葉にナイは驚くが、彼との試合を振り返る。正直に言えばあれほど痛くて辛い思いをした戦闘など久しぶりだった。しかし、ナイは自然に口が開いて答える。
「はい、凄く痛くて辛かったけど……でも、楽しかったです」
「……そうか」
ナイの一言を聞いてライトンは満足したのかそこから先は話す事はなく、二人とは朝を迎えるまで寝入った――
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