特別編第57話 《砂賊の始末》
「このっ、このっ!!よくも儂の可愛い飛行船を傷つけてくれたな!!」
「うぎゃっ!?ちょ、止めっ……ぎゃああっ!?」
「おいおい、爺さん。落ち着けよ、そいつが賊の頭だろ?」
どうやら砂賊の頭は既にハマーンが捕縛したらしく、呆れた様子でガオウは頭を殴り続けるハマーンを引き留める。しかし、怒り足りないハマーンは頭の頭を掴むと甲板の床に抑え込む。
「ほれ、貴様等の正体を話せ!!」
「ひいいっ!?ゆ、許してくれぇっ!!」
「……貴様等、何者だ?」
「た、助けてくれ!!命だけは……」
ハマーンの元に全員が集まると、彼に捕まった砂賊の頭は怯え切った表情を浮かべて命乞いを行う。しかし、いくら命乞いされようとハマーンは許すつもりはない。
「何を抜かしておる!!儂の大事な鮫ちゃんを傷つけおってからに!!」
「鮫ちゃん!?」
「爺さん、この船の
「ゆ、許して下さい!!どうか命だけは……」
その後、しばらくの間は興奮したハマーンを落ち着かせるために他の者たちが抑えつけるが、とりあえずは砂賊の頭を捕まえたバッシュは他の賊も拘束するように指示を出す――
――しばらく時間が経過すると、砂漠の上で100人近くの砂賊が縄で縛られ、砂の上で正座させられていた。あまりの熱気に砂賊は苦し気な表情を浮かべるが、彼等の尋問が終わるまでは水も与える事もしない。
「まずはお前達の正体を教えてもらおうか」
「だ、だから何度も言ったじゃないですか……俺達はただの砂賊だって!!」
「言葉遣いには気を付けろ……でなければ切り落とすぞ」
「ひいっ!?」
砂賊の頭にバッシュの側近が剣を向けると、頭は怯え切った表情を浮かべていた。そして自分達の頭の姿を見て他の賊は顔色を青ざめ、改めて自分達の立場を思い知らされる。
バッシュは捕まえた砂賊の数を把握し、彼等が乗り込んでいた船を確認する。砂船を見るのはバッシュも初めてだが、彼の代わりにアルトが砂船を調べて報告を行う。
「兄上、この砂船は元々は商船だったようです」
「商船だと?それは確かか?」
「はい、船の構造を調べましたが大量の荷物を保管するための倉庫を発見しました。それにマストの部分に巨人国の商船の紋様が刻まれていました」
「という事はお前達は商船を奪い取ったという事か」
「ゆ、許してください!!出来心だったんです!!」
情けなく砂賊の頭は頭を下げて命乞いを行うが、そんな彼等に対してアルトはこれまでの彼等の悪事を推理してバッシュに報告する。
「兄上、彼等が商船を利用していたのは表向きは自分達を商人を装い、他の砂船の警戒を解いて近付いた後に襲う算段だったんでしょう。実際に商人が着込みそうな衣服も大量に保管されていました」
「なるほど……下種らしい考えだ」
「い、いや……それは俺の服の趣味で決してそのような事は……ぎゃあっ!?」
「余計な口を挟むな」
アルトの言葉が図星だったのか盗賊の頭は顔色を青ざめて言い訳を行うが、そんな男にバッシュの側近が首元に刃を近づけて黙らせた。
最早、どのような言い訳をしても言い逃れできる状況ではなく、捕まった砂賊たちは自分達がどうなるのかと震え上がる。しかし、バッシュとしては彼等をここで切り捨てるわけにもいかなかった。
(兄上……ここはあくまでも巨人国の領地、ならば捕まえた賊の処罰は巨人国にさせるべきです)
(分かっている。だが、これだけの人数の賊をどうやって移動させる?街に向かうにしても飛行船を使うわけにはいかないぞ)
捕まえた砂賊の数は100人を越え、これだけの人数を連れて移動するとなると徒歩では厳しい。もしも魔物に見つかって襲われた場合は守り切れず、かといって飛行船の中に捕まえておくのも無理があった。
まさか砂賊に襲われる事態に陥るとは思わず、ここで彼等を始末するのは色々と都合が悪い。アチイ砂漠はあくまでも巨人国の領地であるため、生きて捕らえた賊は巨人国に引き渡さなければならない。
「たくっ、面倒だな……こいつらを始末して砂漠の魔物の餌にしたら楽なのによ」
「うむ、儂の船を傷つけた罰を与えてやりたいところじゃ」
『ひいいっ!?』
ガオウとハマーンの言葉に賊たちは震え上がるが、現実問題として彼等を何時までも外に放置するわけにもいかない。このまま放置すれば熱中症を起してしまい、最悪の場合は死に至る。
流石にここで砂賊を始末するのは色々と都合が悪く、仕方がないと判断したバッシュは横転した砂船に視線を向けてハマーンに指示を出す。
「ハマーン技師……この砂船を直す事はできるか?」
「直す?この船を?」
「そうだ、この船を飛行船で引っ張り上げて再び動かす事はできるか?」
「おお、それは面白そうじゃ……やってみるかのう」
バッシュの言葉にハマーンは笑みを浮かべ、彼は早速飛行船を動かす準備を行う――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます