特別編第56話 《砂賊襲来》
「あの船……まさか、こっちに攻撃を仕掛けるつもりか!?」
「もしかしてさっきの振動は……アルト王子、部屋で待機していてください!!」
「まさかこんな場所で襲撃してくるなんて……!!」
先ほどの飛行船の衝撃はこちらに迫る砂船から攻撃を受けたらしく、この時にナイは観察眼の技能を発動させて砂船の様子を伺う。
砂船の甲板には巨大ボーガンを想像させる射出装置が幾つも設置され、鋼鉄製の銛が装填されていた。先ほどの船の揺れは砂船が発射した銛のような投擲物が当たったらしく、更に砂船は次々と射出する。
「危ない!!皆、身体を伏せて!!」
「うわわっ!?」
「アルト王子、伏せてください!!」
「くぅっ……!!」
砂船から次々と投擲物が発射され、飛行船の舷に撃ち込まれていく。しかも今回の銛には鎖が繋げられており、砂船と飛行船が引き寄せられて横合わせの形となる。
「あいつら……この船に乗り込む気か!?」
「まずい、僕の事は良いから君達も外に向かってくれ!!」
「は、はい!!」
「むうっ……折角休んでいたのに」
飛行船と砂船が横並びになる形となり、ナイ達は慌てて甲板の方へ移動を行う。アルトは戦えないので部屋に待機させ、3人は甲板に向かうと既に戦闘は始まっていた。
「なんじゃお主等は!!よくも儂の船を!!」
「はっ、丁度いい憂さ晴らしだ!!」
「うりゃりゃりゃっ!!」
『ぎゃあああっ!?』
既に甲板には人が集まっており、その中には黄金冒険者達の姿もあった。ハマーンは船を傷つけられた事に怒って鉄槌を振り回し、離れた場所ではガオウが持ち前の身軽さを生かして甲板を飛び回っていた。リーナも負けじと蒼月を振り回して甲板に乗り込んできた賊を討ち取る。
「ちぃっ!!何だこいつら、やたらと強いぞ!?」
「落ち着け!!ただの護衛の冒険者だろう!!」
「いや、でも……こいつらの格好、何だか普通じゃないぞ!?」
「言っている場合か!!いいから戦えっ!!」
砂賊たちは自分達が乗り込んだ船に冒険者や騎士のような格好をした者達が乗り込んでいる事に戸惑うが、それでも構わずに攻め寄せる。賊の数は多く、恐らくは人数だけならばナイ達よりも優る。
「な、何なんですかこれは……まさか、本当にアルト王子の言っていた砂賊!?」
「落ち着いて……こいつら、大した事はない」
「二人とも気を付けて!!僕は船に食い込んだ銛の方を何とかしてくる!!」
ナイはミイナとヒイロに油断しないように注意すると、自分は船同士を繋げる銛を何とかするために動く。ナイは邪魔をする砂賊を蹴散らしながら銛へ近づき、力ずくで引っこ抜こうとした。
「よし、これを抜けば……」
「おいおい、何の真似だ!?お前みたいなひ弱そうなガキにそいつが抜けると思ってて……うおおっ!?」
「ふんぬらばっ!!」
砂賊の乗っている砂船から射出された銛は鎖で繋がっており、この鎖のせいで飛行船と砂船は離れる事はできなかった。だが、ナイが力を込めた瞬間に二つの船が大きく揺れ、あっさりとナイは銛の一つを引っこ抜く。
巨人族であろうと持ち上げる事も困難なはずの銛を普通の少年にしか見えないナイが抜いた事に砂賊は度肝を抜かれ、更にナイは次々と銛を力ずくで引っこ抜く。やがて銛が引き抜かれる度に砂船は傾き始め、徐々に二つの船が離れ始める。
「ま、まずい!!おい、誰かあのガキを止めろ!!船がこのままだと横転しちまうぞ!?」
「そ、そんな事を言われても!!こいつら、やたらと強くて……ぎゃああっ!?」
「ナイを援護しろ!!誰一人、近づけさせるな!!王国騎士の力を見せつけろ!!」
『うおおおおっ!!』
バッシュの指示の元、ナイの行動を邪魔しようとする砂賊たちは王国騎士が阻む。弓矢などでナイを直接に狙おうとする輩はバッシュが「防魔の盾」で矢を防ぎ、ナイの行動を援護する。
「あと一つ!!」
「よし、やれ!!」
『や、止めろぉおおおっ!!』
最後の銛を掴んだナイを見て砂賊は悲鳴を上げるが、ナイは勢いよく引き抜くと砂賊の船は飛行船から離れて徐々に傾き始める。慌てて砂船に残っていた砂賊は舵を斬ろうとするが、この時にナイは離れ始める砂船に向けて飛び込み、二つの大剣を船の舷に叩き込む。
「どりゃあああああっ!!」
『うわぁああああっ!?』
ナイの大剣による二撃の衝撃によって船は完全に転倒し、甲板に立っていた砂賊は地上に叩き付けられる。地面が砂であった事が幸いして全員死ぬ事はなかったが、完全に砂船の方は横転してしまう。
砂船に攻撃した際にナイも危うく落ちそうになったが、咄嗟に近くにいたバッシュがナイに腕を伸ばし、彼の身体を掴んで引き上げる。
「大丈夫か?」
「おっとと……助かりました」
「ふっ……大した奴だ」
バッシュはナイを引き上げると横転した砂船に視線を向け、そして甲板に残っている砂賊に視線を向ける。既に甲板に残っていた砂賊は全員が王国騎士達に打ちのめされており、その中の一人はハマーンに何度も頭を小突かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます