特別編第46話 《超大型マグマゴーレム》
「ちょっ!?こいつ、私達を踏み潰す気ですよ!?」
「くっ……もっと早く走って!!」
「シャアアッ!!」
火口から抜け出した超大型のマグマゴーレムはナイ達を踏み潰そうと足を延ばし、それを見たイリアは慌ててリザードマンの移動速度を上昇させる。
間一髪という所でナイ達は巨大マグマゴーレムの振り下ろした右足を回避する事はできたが、巨大マグマゴーレムが地面に足を叩き付けた際に一部のマグマが飛び散る。
「ゴオオッ……!!」
「ゴアアッ……!!」
巨大マグマゴーレムの破片は地面に落ちた途端、しばらくすると人面が浮き上がって人型の形へと変形する。その光景を見てナイ達は驚愕の声を上げた。
「なっ!?」
「身体の破片が……マグマゴーレムに!?」
「シャアッ!?」
どうやら巨大マグマゴーレムの破片は本来の大きさのマグマゴーレムに変化するらしく、飛び散った破片は全てマグマゴーレムに変身すると本体の元へと戻る。本体に触れるとマグマゴーレムは吸収されるかのように溶け込み、元の状態へと戻っていく。
「が、合体した!?」
「なるほど……そう言う事でしたか、こいつの正体は大量のマグマゴーレムが集まって合体したマグマゴーレムです!!実際に巨大なわけではなく、マグマゴーレムが集まって大きく見えているだけです!!」
「シャアアッ!!」
巨大マグマゴーレムの正体はマグマゴーレムの群体が合体した集合体だと判明し、お互いに身体を繋ぎ合わせる事で巨大なゴーレムに見せかけているだけだった。
だが、その正体が分かった所でナイ達に対抗手段はなく、いくら見せかけて大きくなっているとしても相手が数十体のマグマゴーレムである事に変わりはない。
「ナイさん、あれをどうにかできないんですか!?英雄の力でぱぱっと倒しちゃってください!!」
「そんな無茶な……あれはデカすぎるよ!?」
『ゴラァアアアッ!!』
イリアの無茶ぶりにナイは慌てて言い返すが、このままでは二人ともいずれ追いつかれて踏み潰されてしまう。そうなる前に何か手を打たなければならないのだが、相手が巨大すぎて対抗手段が思いつかない。
(あんな化物に直接斬りかかればこっちが危ないし……強化術でどうにかできるとは思えないし、どうすればいいんだ!?)
マグマゴーレムに直接斬りかかればナイの身が危うく、斬った際にマグマが溢れ出てナイが飲み込まれる可能性もある。仮に相手が本物のゴーレムキングならば体内の核を破壊すれば倒せるが、今回の敵は大量のマグマゴーレムが集まった集合体であるために一体ずつ核を破壊しなければ完全に倒す事はできない。
他に方法があるとすれば魔法剣で対抗する事だが、ナイの旋斧と岩砕剣は直接攻撃向けの魔法剣しか扱えない。リンのようにナイは魔法の力を斬撃に加えて飛ばす事はできず、生憎とナイには遠距離からの攻撃手段は刺剣ぐらいしかない。
(刺剣を投げつけた所で時間稼ぎにもならないだそうし……ああ、どうしたらいいんだ!?)
考えている間にも巨大ゴーレムが接近し、良案が思いつかないナイはイリアが何か役立つ物を持っていないのかを尋ねる。
「イリアさん!!何か持ってないんですか!?」
「何かと言われても……あ、そういえば昨日のうちに貰った火属性の魔石がありますけど」
「火属性の魔石?そういえばさっき……」
イリアの言葉を聞いてナイは巨大ゴーレムが姿を現した時の事を思い出す。巨大ゴーレムは火口に訪れたばかりの頃はナイ達に襲い掛かる事はなかったが、ナイが岩壁を破壊して火属性の魔石を掘り起こそうとした瞬間に姿を現した。
この事から考えられるのは巨大ゴーレムはナイが火属性の魔石を奪おうとしたと勘違いし、だからこそ怒り狂って姿を現した可能性がある。それに気づいたナイはイリアに火属性の魔石を渡す様に頼む。
「イリアさん!!魔石を下さい!!」
「何か思いついたんですか!?」
「はい!!一か八か……やってみます!!」
ナイの言葉を聞いてイリアは移動しながらも鞄に手を伸ばし、火属性の魔石を取り出す。それを手にしたナイは巨大ゴーレムの位置を確認し、あらぬ方向へ魔石を投げつける。
「でやぁっ!!」
「ちょっと!?いったい何を……」
「シャアッ!?」
巨大ゴーレムとは見当違いの方向に魔石を投げつけたナイにイリアは驚くが、ナイが投げつけた魔石を見て巨大ゴーレムは目を奪われ、慌てて手を伸ばして受け止めようとした。
「ゴオオオッ!!」
「ええっ!?」
「よし、今だ!!一旦隠れましょう!!」
「シャアッ!?」
ナイは魔石を回収するために駆け出した巨大ゴーレムを見てリザードマンを停止させ、巨大ゴーレムから身を隠すために近くの岩に潜む。
巨大ゴーレムはナイが投げつけた魔石を手にすると、安心した様子で魔石を自分の口元に移動させて飲み込む。その後に巨大ゴーレムは首を見渡すが、ナイ達の姿が見えない事に気付き、やがて火口の方へ戻っていく。
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