特別編第45話 《火口の異変の原因》

「この子、本当に人懐っこいね」

「人に育てられているから人間の事を味方だと思い込んでいます。ですけど、もしも肉を与えれば大変な事になりますからね。昔に飼育係がうっかりと肉を与えたせいで、肉の味を覚えたリザードマンがその飼育係に襲い掛かったという事故もありますから」

「そ、そうなんだ……」

「シャウッ?」



イリアの話を聞いてナイは咄嗟にリザードマンの頭から手を離すと、撫でるのを辞めたナイにリザードマンは首を傾げる。今は人懐っこい態度を取っていてもリザードマンが危険種指定されている魔物である事は間違いない。


休憩を終えるとナイ達はリザードマンに乗り込み、火口へ向けて移動を再開した。ここまでの道中ではマグマゴーレムらしき存在は発見されていないが、ここからはマグマゴーレムの生息圏に入るので慎重に行動しなければならなかった。



「辿り着きましたよ……ここがグツグ火山の火口です」

「うっ……やっぱり、凄い熱気だな」

「シャアアッ……」



遂にナイ達は火口付近に到着すると、あまりの熱気にナイは顔をしかめて流石のリザードマンも嫌そうな表情を浮かべる。火口の様子を確認した限りでは特にマグマゴーレムの姿は見当たらないが、恐らくは火口のマグマの中に潜んでいると思われた。



「ここがグツグ火山の火口ですか……今の所は怪しい点はありませんね」

「う〜ん……あれ?」

「どうかしました?」

「いや、気のせいかな……グマグ火山と比べてここら辺は魔石が殆どないなと思って」



グマグ火山の火口付近では大量の魔石が岩壁や地面に埋まっていたが、何故かグツグ火山の火口には火属性の魔石らしき物が殆ど見当たらない。その事にナイは疑問を抱き、彼はリザードマンから降りると岩壁に近付いて様子を伺う。



「グマグ火山だったら岩壁を少し掘り起こせば魔石が出てきたけど……せぇのっ!!」

「わっ!?」

「シャウッ!?」



ナイは岩砕剣を抜くと岩壁に向けて叩き付け、その行為にイリアとリザードマンは驚きの声を上げる。岩壁は岩砕剣の一撃で罅割れ、一部が崩壊すると岩壁の中に埋まっていた魔石が露わになる。



「あ、やっぱり埋まっていた……あれ?でも、グマグ火山の物と比べるとかなり小さいな」

「ちょっとちょっと……いきなり変なことしないで臭いよ、びっくりしてちびる所でしたよ」

「シャアアッ……(それは止めて)」



岩壁から出現した火属性の魔石を確認してナイはこの場所でも魔石が採掘される事は確認したが、グツグ火山で発掘していた魔石と比べると随分と魔石の大きさが小さい事に気付く。


岩壁に埋まった魔石を見てナイはとりあえずは回収しようかと手を伸ばすと、ここで地震でも起きたかのように火山が震え出し、慌ててイリアはナイにリザードマンに乗り込むように促す。



「こ、これは……ナイさん、早くこっちに戻って下さい!!もしかしたら火山が噴火するかもしれません!!」

「えっ!?」

「ほら、早く!!」

「シャアアッ!?」



イリアの言葉を聞いてナイは驚愕の表情を浮かべ、彼は慌ててリザードマンの元へ戻ろうとした。しかし、リザードマンは唐突に何かに気付いた様に火口に視線を向け、威嚇するように鳴き声を放つ。



「シャアアアッ……!!」

「ちょ、どうしたんですか急に!?」

「何だ……火口に何かいるのか?」



ナイはリザードマンの反応を見て火口に視線を向けると、そこには想像を超える光景が広がっていた。以前にナイはグマグ火山にて大量のマグマゴーレムが火口から湧き出してきた光景は覚えているが、今回はそれ以上の光景が広がっていた。




――火口から姿を現したのは大量のマグマゴーレムではなく、のマグマゴーレムだった。但し、その大きさはかつてグマグ火山にて出現したゴーレムキングにも匹敵する巨体であり、火山の火口のマグマの正体が巨大なマグマゴーレムであった事が判明する。




超巨大なマグマゴーレムの出現にナイ達は驚愕の表情を浮かべ、流石のイリアもこのような事態は想定しておらず、咄嗟に行動する事ができなかった。その一方で大型のマグマゴーレムはナイ達を見下ろすと、彼が岩壁を破壊して堀り起こそうとした火属性の魔石を確認して怒りの表情を浮かべる。



『ゴラァアアアアッ!!』

「にっ……逃げますよっ!!」

「うわわっ!?」

「シャアアッ!!」



イリアはナイの腕を掴むとリザードマンの背中に移動させ、即座にリザードマンは大型のマグマゴーレムから逃げるために駆け出す。しかし、マグマゴーレムは自分のである魔石を奪おうとしたナイ達を逃す気はなく、ゆっくりと動き出す。


マグマゴーレムの動作自体はかなり遅いが、あまりの巨体差であるためにゆっくり動いているように見えても歩幅が違いすぎてすぐにナイ達は追いつかれてしまう。

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