特別編第39話 《鮫型戦艦VS巨大毒亀》

「ほら、見てください!!マホ魔導士がポイズンタートルを相手に時間を稼いでいます!!撃つのなら今の内ですよ!!」

「だ、だから焦らせるんではない……よ、よし、ここを押せば撃てるのじゃな?」

「いえ、そこじゃありません!!それは砲門を開く奴です!!」

「む?なら、こっちの紐を引けばいいのか?」

「それも違います!!それを引くと大砲が自爆しますよ!!」

「何でそんな物を取りつけた!?」



イリア達が大砲の発射に手間取っている間にもポイズンタートルは船に目掛けて迫り、既に甲板に立っているマホがポイズンタートルに攻撃を仕掛けて時間を稼いでいた。



「ストームバレット!!」

「フガァッ……!?」



甲板にてマホの声が響き渡り、彼女は杖先から風属性の魔力で構成された「渦巻」を作り出してポイズンタートルに放つ。まるで丸鋸のように風の渦巻はポイズンタートルの頑丈な皮膚を斬りつけるが、威力不足なのか表面の部分に掠り傷程度を負わせるのが限界だった。


攻撃を受ける度にポイズンタートルの足取りは遅くなるが、その反面にマホが魔法を使う時やポイズンタートルが動く度に湖面に波が生じてしまう。その波のせいで船が傾いてしまい、上手く魔導大砲の照準を定められない。



「うわわっ!?ちょ、揺れが激しくなってきましたよ!!」

「こ、これでは狙いが増々定まらんぞ!!」

「くぅっ……い、良いから早く撃て!!このままだと船が……」



船が揺れ動くせいで魔導大砲の発射が上手くいかず、砲撃手の役目を担うハマーンはどうにか狙いを定めようとするが船の揺れが激しすぎて彼ではどうしようもできなかった。だが、ここで意外な人物が声を上げる。



「貸して下さい……ここを押せばいいんですか」

「な、なに!?」

「ナイさん!?起きてたんですか!?」

「ナイ!?目を覚ましたのか!!」



ハマーンの代わりに魔導大砲の照準を合わせようとした人物は今まで気絶したと思われたナイだった。ナイは頭を抑えながらもイリアの緑聖水の効果が効き始めていたのか怪我は治り、意識も徐々に覚醒し始めていた。


倒れていた時も3人の騒ぎ声を聞いていたナイはだいたいの状況を把握しており、彼は魔導大砲を抑えると狙いを定める。その様子を見てハマーンは驚いた声を上げた。



「お主、これを撃てる自信があるのか!?」

「ええっ……前に命中の技能も習得していたんで」

「命中……なるほど、その手がありましたか!!」

「よし、撃て!!早く撃つんだ!!」



ナイは「命中」と呼ばれる技能を持ち合わせ、この技能は名前の通りに命中力を高める技能である。ナイは命中の技能を生かして魔導大砲の照準を定めると、ポイズンタートルの顔面に向けて狙いを定める。



(撃つとしたら……あそこだ)



ポイズンタートルが迫りくる中、ナイは何処を攻撃すれば確実にポイズンタートルを倒せるのかを考える。そして彼が狙いを定めたのはポイズンタートルの頭部――ではなく、その口元が開いた瞬間に発射した。




――フゴォオオオオッ!!




ポイズンタートルが大口を開いた瞬間、それを逃さずにナイは魔導大砲を発射させた。その瞬間、魔導大砲から特性の火属性の魔石で作り上げられた砲弾が発射された。


砲弾は口を開いたポイズンタートルの口内に突っ込み、直後に体内で大爆発を引き起こす。ポイズンタートルは全身がゴーレムのように硬い外殻に覆われているが、その正体は生物である。いくら金属のように硬い皮膚に覆われて医療と、内部で爆発が起きれば無事で済むはずがない。




ッ――――――!?




ポイズンタートルは口内で発生した爆発によって頭部が吹き飛ばされ、断末魔の悲鳴を上げる暇もなく頭が砕け散ってしまう。この時に爆発の余波でマル湖近辺を覆い込んでいた霧が晴れた。


頭部が吹き飛んだポイズンタートルの死骸はまるで湖に浮かぶ島と化し、水面に沈む事もなく浮かび続けた。その様子を見ていたナイ達は唖然とするが、魔導大砲の一撃によって遂にポイズンタートルの討伐に成功した。



「な、何だ今の威力は……」

「あ〜……ちょっと威力の調整をミスりました」

「な、何という威力……これだけの破壊力ならばゴブリンキングでも一発で倒せるぞ!?」

「す、凄い……」



魔導大砲の予想以上の破壊力に全員が戸惑い、開発者であるイリアでさえもこれほどの威力を引き出せるとは思わなかった。しかし、結果的にはポイズンタートルを倒す事に成功し、これでマル湖の平和は保たれた――

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