特別編第18話 《飛行船の整備》
――色々と問題は起きたが無事にナイ達はグマグ火山から大量の火属性の魔石の原石を採取する事に成功し、王都への帰還を果たした。採取した魔石の原石は工場区の鍛冶師が加工して飛行船を動かすのに必要な燃料を確保する。
これで後は飛行船を飛ばしてアチイ砂漠へ向かうだけになり、後は王国の戦力をどの程度割いてアチイ砂漠に出現した超大型の魔物を始末するかを話し合う。
「色々と考えたが、やはり今回の件は黒狼騎士団、銀狼騎士団、白狼騎士団に任せる事にする」
『はっ!!』
玉座の間にて国王は王都内に在籍する騎士団の内、聖女騎士団を除いた王国騎士団の派遣を決めた。3つの騎士団を派遣する理由はまずは王都の警備を疎かにはできないため、最低でも騎士団の1つは残って貰う。そして聖女騎士団が王都の守備に適任だと国王は判断した。
以前と比べても聖女騎士団は新入団員が増えており、かつて聖女騎士団に所属していた者達も次々と復帰していく。中には復帰はしないが指導役として協力してくれる人物も多く、現在は黒狼騎士団に並んで数が多い。昔から根強い人気と知名度もある事から聖女騎士団が王都の守護に相応しいと国王は判断する。
無論、銀狼騎士団と黒狼騎士団も全員が出動するわけではなく、一部の団員は残して出発してもらう。また、銀狼騎士団の団長である「リノ」も残る事が決まっていた。
「今回の遠征部隊の指揮はバッシュ、お前に任せるぞ」
「はっ……」
「本来であれば王太子であるお前を援軍に派遣するなど以ての外だが、巨人国に誠意を伝えるためにもお前以外に適任はおらん」
「承知しております」
今回の遠征部隊の指揮を執るのはこの国の第一王子にして王太子であるバッシュだった。前回のゴブリンキングの際はリーナの父親のアッシュ公爵が指揮を執っていたが、今回はバッシュが部隊を管理する。
バッシュが指揮を執る事が決まった理由は今回の遠征は巨人国も関わっており、巨人国側とすればアチイ砂漠の問題は自国だけで解決したい考えだろう。しかし、巨人国だけに任せていては何時までアチイ砂漠に出現した魔物を討伐できるのかは分からない。
――アチイ砂漠は巨人国の領地ではあるが王国からしてみても重要な場所であり、この砂漠こそが両国の商業に欠かせない大切な土地である。しかし、その砂漠に竜種級の危険度を誇る魔物が現れたとなれば放置はできない。
本来ならば巨人国の領地なのだから巨人国側に任せるべきだとは理解しているが、巨人国は魔物の討伐に既に失敗している。正確に言えば魔物を見つけ出す事もできずに無為に時間を消費し、更には王国に魔物の探索に必要不可欠な砂船の燃料(風属性の魔石)を求める程である。
これ以上に魔物のせいで両国の商業が妨げられると王国も巨人国も経済に悪影響が出るため、一刻も早く「超大型魔物」の討伐を果たさなければならない。しかし、王国の遠征軍は巨人国側から正式に許可を貰ってはいないため、下手に軍隊を送り込めば巨人国側からすれば王国からの侵略行為と勘違いされかねない。
「バッシュよ、分かって入るだろうがお主はこの国にとって最も重要な人材じゃ……いずれ儂の後を継ぎ、この国を治める事ができるのはお前しかおらん」
「……承知しております、父上」
「そんなお主だからこそ今回の遠征を任せる事にしたのだ。巨人国側にしてみても王太子であるお主を送り込む以上、あちらも我が国の誠意は伝わるじゃろう」
国王が第一王子にして王太子のバッシュを敢えて遠征部隊の指揮を取らせた理由、それは王族を派遣すれば巨人国からすれば下手な対応はできず、無下に追い払われる可能性は低い。
巨人国側としては自国の問題なのだから自分達の手で解決したい所だろうが、もしも王国側が王太子のバッシュが指揮を執る軍隊を派遣した場合はどうなるのか、当然ではあるが巨人国側としてもまさか王国の王太子を厄介者として追い払う事はできない。
王太子は国にとっては重要な存在であり、これを追い返すという行為は王国に対しての侮辱に等しい。仮に王国の貴族や将軍職の人間ならば巨人国側も強気に出られるだろうが、相手が王族となれば巨人国側も決して無碍な対応はできないと考えた上で国王はバッシュに全てを任せる。
「バッシュ、それにアルトよ。今回の遠征はお前達が要となる……だが、くれぐれも無茶な真似はしてはいかんぞ。お主等は大事な儂の息子……決して儂よりも早く死んではならん」
「はっ!!」
「ご安心ください、父上」
国王としてではなく、一人の父親として二人の息子の安否を心配して声をかけるが、バッシュもアルトもその言葉を聞いて父親を安心させるために力強く返事する。
こうして援軍の部隊は3つの騎士団が決定し、指揮を執るのはバッシュと彼の補佐役としてアルトが選ばれた。準備が整い次第に遠征部隊は飛行船でアチイ砂漠へ向かう事になるが、もうしばらくの間だけ猶予があった――
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