特別編第13話 《ドゴンVSダークゴーレム》

「――ゴルァアアアッ!!」

「うわぁっ!?」

「いけない!!ドゴン君、アルトを助けて!!」

「ドゴン!!」



火山の火口に再び戻ってきたナイ達は魔石の原石の採掘を再開すると、岩壁に擬態していたダークゴーレムが再び出現してアルトに襲い掛かろうとした。しかし、咄嗟にドゴンがアルトの前に駆けつけてダークゴーレムと組み合う。


ダークゴーレムは通常種のゴーレムとは異なり、体型は小さい方ではあるがそれでも普通の人間と比べると大きい。しかも動作はゴーレムにしてはかなり素早く、並大抵の冒険者ならば太刀打ちはできないだろう。



「ドゴォンッ!!」

「ゴアッ!?」

「うわっ!?す、凄い怪力です!!」



しかし、古の時代に作り出された巨像兵であるドゴンはダークゴーレムを上回る巨体でありながら動きも素早く、その移動速度はビャクにも劣らない。そうでもなければビャクの狼車に追いつけるはずがなく、目にも止まらぬ速さでドゴンはアルトに迫るダークゴーレムを片手で持ち上げる。


顔面を鷲摑みにされたダークゴーレムは必死に抜け出そうとしたが、ドゴンは軽々とダークゴーレムを振り回して火山の火口に目掛けて投げ飛ばす。



「ドゴンッ!!」

「ゴアアアッ!?」

「うわっ……む、惨い」

「意外と容赦ない」

「ふうっ……た、助かったよ。まさか僕の掘り起こそうとした魔石がダークゴーレムだったとはね」



ドゴンに火口に投げ飛ばされたダークゴーレムはそのまま溶岩の中に飲み込まれ、やがて沈んで消えていく。その光景を確認したアルトは額の汗を拭ってドゴンにお礼を告げる。


前回の時はダークゴーレムが現れた時はナイ達が対処していたが、ドゴンが同行してくれたお陰でダークゴーレムが現れてもすぐに彼が対処してくれた。そのお陰でナイ達は採掘に集中できるお陰で瞬く間に必要分の魔石の原石を回収する事に成功した。



「ふうっ……これだけあれば十分だろう」

「え、もう終わりなの?」

「ああ、採取の技能を持つナイ君が居てくれて助かったよ。お陰でこんなに良質な火属性の魔石を集められた」



ナイが採取の技能を持っていたお陰で飛行船を動かすのに必要な分の魔石を集める事には成功した。回収した魔石の原石はアルトの収納鞄にしまった後、入り切れなかった分はドゴンが運び込む。



「よし、ここに長居は無用だ。こんな場所にいつまでもいると僕達の身体が持たないからね」

「そ、そうですね」

「もう干からびて死にそう……」

「うん……流石にこれを着てても暑いしね」

「そう?僕はわりと平気だけど……」



ナイ以外の者達は耐熱性の装備を身に付けているとはいえ、やはり火山の火口付近での活動は肉体的にも精神的にも相当にきつい環境だった。尤もナイだけは割と平気そうな顔をしており、まだ十分に活動できる体力は残っていた。


本人は忘れているがナイは「熱耐性」の技能も持ち合わせているお陰で火山の熱にも耐えられる。それに山暮らしのナイは山での生活に慣れていたので標高が高い場所でも平気だった。しかし、ナイ以外の者達は流石に限界なので麓に引き返す様にアルトは指示する。



「もうこれ以上は魔石は持って帰れないし、ここでの用事を終えたのなら長居する必要はない。さあ、早く麓に戻ろう」

「それもそうだね。じゃあ、戻ろうか」

「ううっ……気のせいかさっきよりも熱くなってきた気がする」

「……それ、気のせいじゃないかもしれない」

「え?どういう意味ですか?」



リーナの言葉に火口を見つめていたミイナは顔色を青ざめ、普段は無表情の彼女のその態度にヒイロは少し驚いてミイナが何を見ているのかと火口を覗き込む。すると彼女も顔色を変えてアルトの腕を掴む。



「ア、ア、アルト王子……」

「ん?どうしたんだい、そんなオーガでも見たような顔をして……」

「鬼ではない……けど、もしかしたらもっとやばそうなのが迫ってきてる」

「やばそう?」

「え、何を見たの?」



ナイとリーナはミイナの言葉を聞いて不思議に思って火口に視線を向けると、二人とも身体を硬直させた。全員の様子を見てアルトも何を見たのかと彼も火口を確認すると、そこにはとんでもない光景が映し出された。




――ゴラァアアアアッ!!




全員の視界に映し出されたのは溶岩の中から無数のマグマゴーレムが誕生し、岩壁を登ってレナ達に迫る光景だった――

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