特別編第8話 《リーナとモモとの関係性》
「何だかまたナイさんとリーナさんの距離が近くなったように見えますが……ナイさんはモモさんと付き合っているのではないんですか?」
「モモもリーナもナイの事が好き……いっその事、二人とも娶ればいい」
「そ、それは不純ではないのですか!?」
「ふむ、だけど貴族の間では一夫多妻というのは珍しくもない事だ。ナイ君のこれまでの功績を考えれば貴族として取り立てる事も可能だろう。それに公爵家のリーナと結婚して婿容姿になればナイ君も公爵家の人間という事になるし……」
「ドゴン?」
リーナとナイの距離感が一層に縮まった事は誰の目から見ても明らかであり、アルトとしては親友の恋を応援したい。しかし、ヒイロとミイナからすればモモとナイにくっついて欲しいと考えてしまう。
公爵家のリーナとナイが結婚すれば貴族となり、その後にモモを側室として迎え入れる事はできる。しかし、問題なのはそれがモモが納得するかどうかであり、そもそもナイの気持ちも大事だった。
「ナイさんはモモさんとリーナさんのどちらが好きなんでしょうか……」
「私の見立てだと……二人とも同じぐらいは好きだと思う。でも、同じだから二人とも選ぶ事ができない」
「優柔不断……とは責められないね。僕としてもナイ君と同じ立場だったら選べないかもしれない」
ナイがモモとリーナのどちらも意識しているのは確実だが、当の本人はどちらも選ぶ事ができずに困っている。もしも片方を選んでもう片方との関係性が壊れたらと考えると恐れている節もある。
今までナイは女性に対して明確に好意を伝えられた経験はなく、そもそもナイが暮らしていた村には女の子はいなかった。村の子供は殆どが男の子で昔から女の子と接する機会がなく、それに村が滅びた後はずっと旅を続けてきた。
(ちゃんと二人に返事しないといけないのに……)
流石にナイ自身も今のような関係はまずい事は理解しているが、モモとリーナのどちらかを選ばなければならないと考えると答えが出ない。いっその事、二人がナイに愛想が尽きれば諦めもつくのだが、モモとリーナの方からナイを見捨てる事など有り得ない。
「ナイ君、これが終わったらまた一緒に遊びに行こうね」
「あ、うん……分かった」
「約束だから、ね」
リーナはナイに笑顔を浮かべて後ろから抱きしめ、以前と比べてもリーナは遠慮せずにナイに接触して好意を示す。そのリーナの行動にナイは拒めずにこれからどうするべきなのかを考える――
――それから時は経過して遂にナイ達はグマグ火山の麓へ到着を果たす。グマグ火山の方は相変わらずの熱気だが、心なしか以前に訪れた時よりも熱が増していた。
「うっ……ここってこんなに暑かった?」
「い、いえ……前に来た時はここまで暑くなかったと思います」
「クゥ〜ンッ……」
グマグ火山に到着して早々にナイ達は異様な熱気を感じ取り、ビャクに至っては暑さのあまりに足止めてへばってしまう。火山が以前よりも熱気を増している事に対してアルトは推察する。
「恐らくだが火竜がいなくなった影響だろう」
「え?どういう意味ですか?」
「火竜はこの火山に住み着いて火山が生み出す火属性の魔石を食べ続けていた。だが、火竜が居なくなった事で火属性の魔石を食す存在はいなくなった」
「その事がどうして火山と熱くなるのと関係があるのですか?」
「いいかい?火属性の魔石は火山から生み出された熱の力の塊なんだ。その魔石を日々大量に食していた火竜が居なくなった事で今の火山は魔石であふれかえっている。その影響で火山全体の熱が増したと考えるべきだろう」
「な、なるほど……?」
アルトの説明を受けてナイは理屈は分かったがそれでもここまで暑くなるのかと考える。火竜は魔物の生態系の頂点に立つ竜種の1体であり、存在そのものが「災害」だと恐れられていた。しかし、その火竜のお陰でグマグ火山の放つ熱が抑えられていた事が判明した。
そもそも火竜は刺激しなければ餌場であるグマグ火山から決して離れる事はなく、火竜が定期的に火山で発生する火属性の魔石を食す事で火山の気温を安定させていた。そう考えると火竜という存在は必ずしも人間に害だけを及ぼす存在ではなく、そういう意味では火竜も自然の生態系には必要な存在だったのかもしれない。
但し、火竜を討伐した事に関しては決して間違っていたとは言い切れず、仮にナイ達が火竜を討伐しなければ王国に暮らす人々に大きな被害をもたらした事は間違いない。それにグマグ火山に火属性の魔石が大量に発生したという事は逆に言えば火属性の魔石を大量に手に入る。そうすれば飛行船の燃料として利用するだけではなく、他の事にも色々と使える。
「この熱の中で行動するのは厳しいと思うが……これなら良質な火属性の魔石が大量に手に入りやすそうだ。さあ、頑張って火口を目指そう」
「だ、大丈夫なのですか?」
「加工の方はより良質な火属性の魔石が手に入りやすいんだ」
アルトの言葉を聞いてナイ達は不安を抱きながらも彼の言う通りに従い、火口へ向けて出発を開始した――
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