外伝第8話 オリハルコンの巨像

「こ、これは……巨人族の形をした人造ゴーレム、か?」

「いや、巨人族よりも巨大ですよ!!な、何なんですかこれは!?」

「……大きすぎる」



宝物庫の中に隠されていた物、それは大きさが4、5メートルは存在する巨大な甲冑型の人造ゴーレムだった。ナイが倒した骸骨騎士よりも倍以上の体躯を誇り、色合いから察するにオリハルコン製だと思われた。


超大型の人造ゴーレムが宝物庫に保管されていた事に誰もが動揺し、流石のリンもドリスも呆気に取られて大口を開いてしまう。一方でナイは人造ゴーレムを見上げて冷や汗を流し、急に襲い掛かってこないのかと警戒する。



「……動く様子はないけど、これ大丈夫なのかな?」

「どうやら機能は停止しているようだが……ナイ君、他に何か見つからないかい?」

「いや……特に何もないかな」



アルトの言葉を聞いてナイは念のために宝物庫を調べてみるが得に何も見当たらず、宝物庫の中に保管されていたのは並の巨人族よりも巨大な大型人造ゴーレムだけだった。宝物庫というからにはどれほど凄いお宝が保管されているのかと期待していたが、ある意味ではナイ達の想像を超える代物が保管されていた。



「な、何なんですのこれは……」

「まさかこの巨像が宝物庫の番人というのか……いや、ならばどうしてこれ以外に何も保管されていない?」

「この場所には宝物は保管されていないのか……いや、もしかしたらこの巨像が宝物その物なのか?」

「……とりあえず、閉めた方がいいかな?」



大型の人造ゴーレムを前にしてナイ達はどのように反応すればいいのか分からず、急に動き出して暴れられでもしたら大変なのでナイは扉を閉めるべきか尋ねる。


今の所は大型の人造ゴーレムが動き出す様子はなく、そもそも本当に人造ゴーレムなのかも分からない。もしかしたらただのオリハルコン製の像である可能性もあるため、念のためにもう少しだけ調べる事にした。



「よ、よし……その巨像を調べてみよう」

「だ、大丈夫なのですか!?」

「こいつが暴れたら流石にナイでもどうしようもないと思う……」

「だからといってこのまま何もせずに戻るわけには行かないさ……念のために扉を閉める準備をしておいてくれ」

「王子、気を付けてくださいましっ!!」

「巨像が動き出そうとすればすぐに扉を閉めるんだぞ!!」



ドリスとリンもアルトと共に部屋の中に入り込み、この時にナイはいつでも扉を閉められるように待機しておく。アルトは二人の護衛と共に巨像を調べ上げ、とりあえずは巨像に近付くが何も反応しない。


骸骨騎士の時はナイがある程度まで近寄った瞬間に反応したが、オリハルコンの巨像はアルトが直に触れても反応を示さない。骸骨騎士は王族であるアルトに反応したが、この巨像は特に彼が触れても何も起きない。



「ふむ、完全に機能停止しているのか……それともただの像なのか分からないね」

「ですけどこれほどの巨大な像をどうして建造したんでしょうか……」

「しかも貴重なオリハルコンを使ってここまでの像を造り出すとは……」



聖剣の素材にも扱えるオリハルコンを使用して巨像を作り上げた事自体が疑問が残り、昔の王国の人間はどうしてこんな代物を造り出したのかとアルトも不思議に思う。


巨像を調べた際にアルトは王家の紋章が巨像の兜の額の部分にある事に気付き、彼はこの時に王家の紋章の中央部分に何かを嵌め込むような穴がある事に気付いた。



「この穴は……まさか、ペンダントか?」

「ペンダント?」

「ほら、丁度僕の持っているペンダントが嵌められそうだろう?」

「そのペンダントは王族の証の……まさか!?」



巨像の額部分の窪みを見てアルトは自分が持っているペンダントが嵌め込む事ができそうな事に気付き、当然だが不用意に自分のペンダントを嵌め込むような真似はしない。


もしかしたらペンダントを嵌め込んだ瞬間にこの巨像が人造ゴーレムとして起動する可能性もあり、それを考えたら下手にペンダントを嵌める様な真似などできない。



「多分、この額の部分に王家のペンダントを嵌め込めば起動する可能性がある。それも僕のペンダントではなく、当時の王族が所有していたペンダントが必要かもしれない」

「となると……玉座の間でナイが倒したという人造ゴーレムの中から出てきた王家のペンダントの事ですか?」

「ああ、その可能性が高いだろう。どっちにしても何もしなければこの巨像も動くはずが……何だ!?」

「きゃあっ!?」

「こ、この光は……!?」



アルトはペンダントを嵌め込まなければ巨像は動く事はないと推察したが、突如として彼の胸元が光り輝き、驚いたアルトは自分の首に掲げていた王家のペンダントを確認する。


彼が所有するペンダントは王国に代々伝わるペンダントであり、骸骨騎士が所有していた代物ではない。しかし、それでも古の時代から存在するペンダントにある事に変わりはなく、アルトのペンダントは磁石のように巨像に引き寄せられていく。

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