外伝第7話 宝物庫に隠されていたのは……

(……宝物庫の鍵、か)



国王への報告を終えた後、アルトは骸骨騎士から回収した「大剣」を思い出す。骸骨騎士が身に付けていた「漆黒の大剣」はナイの旋斧や岩砕剣とも張り合えるほどの硬度を誇る。


現在は骸骨騎士の装備と共に回収して王都で保管しており、骸骨騎士の亡骸は王家が墓所で埋葬する事が決まった。骸骨騎士の装備品に関しては貴重なオリハルコン製のために大切に保管する事が決まったが、漆黒の大剣に関してはアルトは思う所があった。



(あの鍵穴、それに玉座に残っていた亡骸と人造ゴーレム……何か関係があるのかもしれない)



漆黒の大剣の存在を思い返しながらアルトは思考し、あと少しで何か思いつきそうだった。何か重要な事を見逃しているのではないかとアルトは考えていると、ここで彼の前に思いもよらぬ人物が現れる。



「ちょっとアルト王子!!鍵を返してくださいよ!!」

「イリア?いったい何の話だい?」

「研究室の鍵ですよ!!鍵を掛けたまま迷宮都市に出発したんでしょう!!そのお陰で私は入れなかったんですよ!!」



廊下でイリアと鉢合わせたアルトは彼女に研究室の鍵を渡し忘れた事で咎められる。王城内の研究室の鍵はアルトが管理を任されており、そもそも研究室はアルトが頼んで作って貰った部屋でもある。


研究室には素人が扱うと危険な代物がたくさん保管されているので普段はアルトが管理しており、鍵に関しても一つしか持ち合わせていない。だから研究室に鍵を掛けたまま迷宮都市に出発したアルトに対してイリアが抗議しにやってきた。



「ほら、さっさと渡してください!!折角、精霊薬の手掛かりになる資料が手に入ったんですよ!!もう少しで新薬が完成するんですから!!」

「あ、ああ……悪かったね。鍵ならここに……鍵!?」

「えっ!?何ですか急に……」



イリアに鍵を渡そうとしたアルトは衝撃を受けた表情を浮かべ、彼は宝物庫の扉の存在を思い出す。宝物庫を開くためには巨大な鍵が必要である事を思い出し、その鍵穴の大きさを思い出したアルトは玉座の間で骸骨騎士が使用した「漆黒の大剣」を思い出す。



(まさか、あの鍵は……!!)



骸骨騎士が使用していた大剣は玉座から引き抜かれた事を思い出し、骸骨騎士が大剣を引き抜くまでは只の玉座の装飾品にしか見えなかった。古城内に存在するたった一つの本物の隠し通路、その先に待ち構えていた甲冑型の人造ゴーレム、そして玉座に収納されていた大剣、これらが全て繋がっているとしたらアルトはとんでもない見落としをしていた事になる。



「イリア!!君のお陰で思い出したよ!!」

「はっ?」

「こうしてはいられない、研究室の鍵は君に上げるよ!!僕は迷宮都市に戻る!!」

「あ、ちょっと!?」



宝物庫の扉を開く方法を思いついたアルトはイリアに鍵を放り投げると廊下を駆け出し、急ぎ足でナイ達の元へ向かう。そんなアルトの行動にイリアは戸惑うが、彼女は投げ渡された鍵を受け取って首傾げる――






――数日後、ナイ達は再び迷宮都市へと帰還すると宝物庫の前で王国騎士達が集結する。骸骨騎士から回収した漆黒の大剣をナイが持ち上げると、宝物庫の扉の鍵穴に目掛けて差し込む。



「よし、行くよ」

「頼んだよナイ君……君意外にその大剣を使える人間はいないからね」

「あの大剣、私でも持ち上げられないぐらいに重い……」

「ただの武器というわけではないという事ですね……」



ナイ以外の人物は漆黒の大剣を持ち上げる事もできず、怪力自慢のミイナですらも大剣を持つ事さえもできなかった。巨人族級の腕力を誇る人間にしか大剣は使いこなせず、普段から二つの大剣を扱うナイならば漆黒の大剣を持ち上げられる腕力はあった。


漆黒の大剣を持ち上げたナイは扉の鍵穴に差し込み、ぴったりと鍵穴に大剣は嵌まった。そのままの状態でナイは右側に大剣を回転させると、確かに鍵が開いたような音が鳴り響く。


遂に宝物庫の扉の鍵を開く事に成功した事に全員に緊張が走り、ナイは振り返るとアルト達が頷く。この場所にはドリスやリンも存在し、何が起きようと対処できる。



「……開けますよ」



鍵を開いたナイは大剣を引き抜くと扉に手を伸ばし、持ち前の怪力で扉を左右に開く。遂に宝物庫が解放されたが、扉の向こう側の光景を見てナイ達は驚愕した。



「こ、これは……」

「そんな馬鹿な……」

「な、なんですかこれは!?」

「……信じられない」




――宝物庫を開いた先にはナイ達の想像を超える物体が保管され、それを見た者達は驚愕の表情を浮かべる事しかできなかった。

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