外伝第6話 初代国王のペンダント

「こ、これはまさか……!?」

「このペンダント……何処かで見たような?」

「これは……まさか、王家の紋章ではありませんか!?」

「という事はこの人はもしかして……昔の王様?」



骸骨騎士の内部から出現したペンダントを確認したナイ達は驚愕の表情を浮かべ、アルトはすぐに自分が常備しているペンダントを取り出す。


王家に生まれた人間は王族の証として特別なペンダントを所有する事を義務付けられ、骸骨騎士の内部に隠されていたペンダントとアルトのペンダントは非常によく似ていた。この事から骸骨の正体がアルトと同じくこの国の王族である事が確定した。



「まさかこの人は……いや、この御方は当時の王族なのか?」

「ど、ど、どうしますか!?」

「落ち着いて……焦った所で状況は変わらない」

「綺麗なペンダントだね。これもオリハルコンで造られているのかな?」



光り輝くペンダントを前にしてナイ達は興奮を隠しきれず、アルトも震える腕でペンダントを取り上げる。彼が手にした途端に光り輝いていたペンダントは徐々に光が収まり、やがて青色の水晶のように変化する。


このペンダントの素材はオリハルコン製らしく、王家の紋章が刻まれている事からかつての王族が所有していた代物で間違いない。そしてペンダントを所有する事を許されているのは王族だけであり、この骸骨の正体はかつてこの王都に暮らしていた王族の誰かという事になる。



「ナイ君、この骸骨は最初は何処にいたのか分かるかい?」

「えっと……あの椅子に座っていたよ」

「椅子って……玉座ですか!?」

「玉座に座る事が許されるのは王族の中でもただ一人……国王様だけ」

「という事はまさかこの骸骨は当時の国王!?」

「ええっ!?」



骸骨騎士の正体が数百年前の国王である可能性が高く、それが事実ならばナイは知らず知らずに甲冑ごと国王の骸骨を破壊した事になる。王族の死体を蔑ろにするなど極刑だが、状況が状況なので仕方がない。



「大丈夫だ、ナイ君が破壊したのは骸骨を内蔵した甲冑型の人造ゴーレムだ。それに倒さなければミイナもヒイロも殺されていたかもしれない。このペンダントだけでも無事で良かった」

「ペンダント……ですか」

「ああ、このペンダントを持って帰って調べよう。そうしたらこの骸骨の正体が分かるかもしれない……それと甲冑の破片も拾い集めてくれ。オリハルコンの素材なら何かに使えるかもしれない」

「ちゃっかりしてる」



アルトは骸骨と甲冑の破片を持ち帰るように指示すると、ナイ達は他の人間に連絡して回収を行う――





――それから数日後、アルトが持ち帰った王家の紋章を調べた結果、どうやら彼が見つけたペンダントの所有者は旧王都が魔物に滅ぼされた時代の国王だと判明する。


記録によれば当時の国王は魔物に殺されて亡くなったと記されているが、どうやら国王は只一人で旧王都の王城の玉座の間に残っていたらしい。そして甲冑型の人造ゴーレムは彼を守るために作り出されたオリハルコン製の人造ゴーレムだと発覚した。


人造ゴーレムは本来は人間を守るために作り出された兵器であり、どうやら国王が身に付けていた人造ゴーレムは王族を守るために作り出された事も判明する。だからこそアルトが訪れた時、人造ゴーレムは襲わなかったのは彼が王族だと見抜いていた事になる。


王族の血筋の人間は襲わないように仕込まれていたので人造ゴーレムは彼には手を出さず、他の人間を優先して襲い掛かった。だからこそ仮にナイ達がいなくても人造ゴーレムはアルトに危害を加える事はなかったかもしれない。


尤も骸骨騎士を破壊しなければそもそもペンダントも手に入らず、骸骨の正体を見抜く事もなかったのでナイが破壊した事に関してはお咎めはなかった。回収した骸骨騎士の甲冑はオリハルコン製であるため、今後は何かに使えるかもしれないので王国が管理する事が決まる。




色々とあったが迷宮都市の古城の調査は進み、無事に古城内の探索と素材の回収は成功した。しかし、宝物庫に関しては鍵は発見されず、中の方を調べる事ができなかった。


古城内を探し回ったが鍵の類は見つかる事ができず、最も貴重な素材が隠されている可能性が高い宝物庫だけは調べる事ができなかった。宝物庫を調べるには鍵を探し出す必要があり、古城内は隈なく調査されたが結局は鍵の類は見つからずに調査は難航する。



「ふむ……宝物庫の扉を開く事はできなかったか」

「申し訳ございません、陛下」

「いや、お前が謝る必要はない。引き続き調査を頼んだぞ」



調査の進捗状況をアルトは国王に報告すると、国王はアルトが持ち帰ったかつての国王のペンダントを確認して感慨深げに頷く。まさか先祖が所有していたペンダントを手にする日が来るとは思いもしなかった。


アルトが回収したペンダントはどうやら王族が触れると反応を示すらしく、王族の血が流れる人間が触れると僅かに光り輝く。但し、王族ではない人間が触れた場合は特に反応は示さない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る