外伝第5話 骸骨騎士の正体

「はあっ……はあっ……」

「お、終わったのかい?」

「流石はナイ……無敵」

「ううっ……はっ!?い、いったい何が……!?」



骸骨騎士を文字通りに粉砕したナイの姿を見て他の者達は彼の勝利を確信するが、当のナイは倒した骸骨騎士を見下ろしてある事に気付く。



「これは……もしかして人造ゴーレムじゃないかな」

「人造ゴーレム!?」

「多分、この骸骨は本物だけど身に付けている甲冑みたいなのが人造ゴーレムだと思う」

「なるほど……だから聖属性の魔力も受け付けなかったのか」



ナイの見立てでは骸骨騎士の正体は内部に骸骨を収納した「人造ゴーレム」だと判断し、甲冑の形をした人造ゴーレムが鳴き声を上げたり戦っていたに過ぎない。


最初に骸骨騎士の声を聞いた時にナイは倒してきた人造ゴーレムと同じ声をしている事に気が付き、それに死霊人形ならば通じるはずの聖属性の魔力が効かなかった事で確信を抱く。死霊人形の類ならば聖属性の魔力を帯びた旋斧を受けた時に倒せていたはずである。



「核は破壊したのかい?」

「分からない……でも、これだけ粉々に壊せば大丈夫じゃないかな」

「そうだね、これまでの人造ゴーレムも再生能力は持ち合わせていなかったからね。ここまで破壊すれば動く事はないだろう」



人造ゴーレムは野生のゴーレムとは異なり、破壊されても自力で再生する事はできない。ロックゴーレムは土砂や岩を取り込む事で何度でも復活できるが、人造ゴーレムにはその手の能力は持ち合わせていない。



「ふむ……この人造ゴーレムの正体が気になるな」

「正体?今まで倒してきた人造ゴーレムと何か違うのですか?」

「こんな場所に放置されていたんだ。しかも中に骸骨まで入れて……この骸骨の正体を調べる必要があるな」

「骸骨を調べるって……そんな事ができるの?」

「鑑定の技能でも無理だと思う」



アルトは骸骨の正体を調べようと告げるが、恐らくは何百年も前に死亡した骸骨を調べるなど不可能に近い。ステータスを見抜く鑑定の技能も死者に対しては通用せず、骸骨を調べるのは不可能だと思われるがアルトは構わずに破壊された骸骨騎士に近付く。


骸骨騎士は変わった魔法金属で構成された甲冑を見に纏い、この甲冑その物が人造ゴーレムである事は間違いない。この時にアルトは人造ゴーレムの破片を持ち上げ、彼は冷や汗を流しながらある事に気付く。



「こ、これは……オリハルコンじゃないのか!?」

「えっ!?オリハルコン!?」

「希少金属のオリハルコン?」

「オリハルコンって……あの絵本でも出てくる有名な魔法金属の?」



甲冑型の人造ゴーレムを構成していた素材の正体は「オリハルコン」と呼ばれる魔法金属である事が判明し、その場にいる全員が衝撃の表情を浮かべた。オリハルコンは滅多に手に入る代物ではなく、聖剣などの武器の素材に利用されるほどの希少金属だった。


オリハルコンはアダマンタイトほどの硬度はないが、魔法金属の中で最も魔法の力を高める効果を持つ。魔法剣を発動させる際にオリハルコン製の剣を使用すれば効果を最大限に高めて攻撃に利用できる。


歴史上で名前を残す聖剣の殆どはオリハルコンが使用されており、硬さと耐久性はアダマンタイトには劣るが魔法の力を高めるという点では魔法金属の中で最も人気が高い。そんなオリハルコンで構成された人造ゴーレムをナイは打ち砕いた事になる。



「これは凄いな……いったいどれほどのオリハルコンを用意すればこんな物が生み出せるんだ。下手をしたら国宝級の価値があるぞ」

「国宝!?」

「そんな物をナイは壊した……これは責任を取ってうちで一生働いてもらうしかない」

「ええっ!?」

「ミイナ、冗談は止めなさい。ナイさんが本気にするでしょう……だ、大丈夫ですよ。もしも壊さなかったら私達は殺されていたと思いますし、不可抗力ですよね王子?」

「うん、まあナイ君のお陰で助かったが……」



アルトは倒れている骸骨騎士に視線を向け、何故この骸骨騎士は自分を襲わなかったのかと不思議に思った。戦闘の際中にアルトは骸骨騎士に接近されたが、骸骨騎士は彼だけは襲わずに他の人間だけに攻撃を集中させていた。


どうしてもその事が気になるアルトは考え込み、倒れている骸骨騎士の破片を拾い上げる。すると、アルトが近付いた途端に胸元の部分が光り輝き、それを見たアルトは驚愕の声を上げた。



「何だ!?」

「これは……」

「アルト王子!!危険ですから下がって下さい!!」

「待って……何か出てきた」



光り輝く骸骨騎士を見てヒイロは警戒するが、ミイナは彼女を抑えて骸骨騎士の胸元の部分を指差す。骸骨騎士の胸元はナイが破壊したさいにぱっくりと割れてしまったが、そこから青色に光り輝く剣の形をしたペンダントが出現した。

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