外伝第4話 骸骨騎士

「皆、危ない!?」

『アアアアッ!!』

「うわっ!?こっちへ来た!?」

「王子、下がって下さい!!」

「違う、こいつの狙いは私達じゃない!!」



骸骨騎士は玉座の裏側にある出入口から抜け出してきたアルト達を狙って走り込んできたように見えたが、実際の狙いはアルト達ではなく「玉座」だった。骸骨騎士は玉座に差し込まれた漆黒の大剣を引き抜く。


玉座の装飾品だと思われていたが、実際には玉座の内部に大剣が収納されていたらしく、武器を手にした骸骨騎士はナイと向かい合う。



『ガアアアッ!!』

「武器!?」

「こ、この武器はまさか……」

「ナイさん、加勢します!!」

「アルトは下がってて!!」



アルトは骸骨騎士が手にした漆黒の大剣を目にして驚愕の表情を浮かべるが、ミイナとヒイロはナイを加勢するために骸骨騎士の背後に迫る。しかし、振り返りもせずに骸骨騎士は接近する二人に気付いた様に大剣を振り払う。



『フガァッ!!』

「くぅっ!?」

「きゃあっ!?」

「二人とも!?」

「そんな馬鹿な!?」



ミイナとヒイロは振り払われた大剣を受け止めようとしたが、あまりの衝撃に二人とも吹き飛ばされて床に倒れ込む。ミイナは辛うじて意識は保っているが、ヒイロの方は壁際まで転がり込んで意識を失ったのか動かなくなった。


仮にも王国騎士である二人を一撃で倒した骸骨騎士にアルトは焦りを抱き、その一方で骸骨騎士の方はアルトを一瞥する。この時にナイはアルトが襲い掛かられる前に彼を救おうとしたが、予想に反して骸骨騎士はアルトに対しては何も仕掛けない。



『…………』

「……えっ?」

「アルト!!下がってて!!」



アルトは自分に襲い掛かろうとする様子がない骸骨騎士に戸惑うが、そんな彼の前にナイが庇うように立つと骸骨騎士は叫び声をあげる。



『ガァアアアッ!!』

「くっ……」

「ナイ君、気を付けるんだ!!二人は僕に任せて君は戦いに集中して!!」

「ううっ……」

「くぅっ……」



ナイは骸骨騎士と向かい合う形で旋斧を構え、アルトは倒れているミイナとヒイロの元へ駆けつける。骸骨騎士はどうやら今度はナイを標的に定めたらしく、他の者を無視してナイへと襲い掛かった。



『ウガァアアッ!!』

「うっ!?くぅっ、このっ……うわっ!?」

「そ、そんな馬鹿な……あのナイ君が押し負けている!?」

「あいつ……普通じゃない。とんでもない力を持っている」



骸骨騎士の攻撃に対してナイは防戦一方で追い詰められていく。その光景を見てアルトは信じられない表情を浮かべ、骸骨騎士の力はナイをも上回るのかと焦りを抱く。


攻撃を受けながらもナイは骸骨騎士の膂力に驚きを隠せず、これほど追い詰められたのはあの「リョフ」との戦闘以来である。それほどまでに骸骨騎士は凄まじい力を誇り、少なくともリザードマンやミノタウロスを遥かに上回る圧倒的な力を誇っていた。



(強い……けど、何かおかしい)



圧倒的な力を感じながらもナイは骸骨騎士の動きに違和感を覚え、確かに腕力は凄いが肝心の攻撃に関しては単調過ぎた。それに先ほどから気になっていたが骸骨騎士の声は聞き覚えがあり、つい最近にナイは同じような声を何度も聞いた気がする。



(この声、それにこの格好、聖属性の魔法も効かない……まさか、こいつの正体は!?)



ここまでの戦闘でナイはいち早く骸骨騎士の正体を見抜くと、自分の推理が正しいのかを確かめるためにナイは反撃に出る事にした。この1年の間にナイも大きく成長しており、久々に「迎撃」の技能を発動させて骸骨騎士の大剣を弾き返す。



「だああっ!!」

『アガァッ!?』



漆黒の大剣を弾き返したナイは旋斧をここで手放すと、背中にある岩砕剣に手を伸ばす。しかし、大剣を弾かれながらも骸骨騎士の方が先に体勢を整えて反撃を繰り出そうとしてきた。



『ガアアッ!!』

「ナイ、頭を下げてっ!!」

「うわっ!?」



だが、ここで戦闘不能に陥ったと思われたミイナが骸骨騎士に目掛けて「輪斧」を放つ。手斧型の魔道具は空中で高速回転しながら骸骨騎士の顔面に目掛けて放たれ、見事に頭部に的中した。


予想外の攻撃を受けた事で骸骨騎士は隙を作り、その瞬間を逃さずにナイは岩砕剣を引き抜くと骸骨騎士に目掛けて全力の一撃を放つ。



「だぁあああっ!!」

『アガァッ――!?』



強化術を発動させてナイは全身全霊の攻撃を食らわせると、骸骨騎士は岩砕剣の刃を受けて頭部は完全に打ち砕かれて床に叩きのめされる。この一撃で骸骨騎士の甲冑に亀裂が広がり、やがて派手な音を立てて砕け散った――

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