外伝第3話 騎士王の玉座
「進んでみよう。罠の可能性もあるが……ここの通路は今まで見つけた場所とは何かが違う気がする」
「そ、そうですね」
「今までの隠し扉には罠が仕掛けられていた。でも、ここには罠はなかった……本物の隠し通路かもしれない」
「……とりあえず先に進んでみよう。でも、皆は後から来て」
危険を承知でナイは先に一人だけで通路へと入り込み、罠に気を付けながら通路の中を進む。何か見落としがないように観察眼の技能を発動させ、暗闇の中でも見通せるように暗視の技能も発動させておく。
狭い通路では大剣のような武器は扱えないので念のために刺剣を手にしながら先に進み、やがて通路の行き止まりに辿り着くと上に続く梯子を発見した。
「梯子を見つけた!!上に登って調べてみる!!」
「分かった、僕達もすぐに追いつくよ!!」
通路に危険がない事を確認したナイは部屋の方にいる3人に話しかけると、梯子を登って上の方へと移動する。梯子を登り切ると天井部分に穴が存在し、そこを越えるとナイは信じられない光景を目にした。
「えっ!?ここって……玉座の間?」
ナイ達が暮らす王都の王城の玉座の間と非常に酷似した広間に彼は辿り着き、しかもナイが出てきた出入口は玉座の裏側に繋がっていた。ナイは驚きながら広間の様子を調べ、この場所が古城の玉座の間だと知る。
(今まで調べた部屋には玉座の間みたいな場所は見つかってなかったけど……そうか、ここの出入口は瓦礫に塞がれていたのか)
これまでの探索ではナイ達は玉座の間に辿り着けなかったのはこの広間へ通じる通路が大量の瓦礫で塞がり、探索が不可能な状態だった事が判明する。どうやらナイ達が発見した隠し通路はこの玉座の間から一階にある部屋に移動するための秘密の抜け道だと判明した。
恐らくは玉座の裏側に隠されるように存在した抜け道は王族が避難するために設置された通路だと思われ、普段は玉座の下に隠していた様子だった。その証拠に玉座には引きずられたような痕跡が残っており、ナイは玉座の表側へ移動すると驚くべき物を発見する。
「うわっ!?な、何だ……死体?」
玉座の間には甲冑を身に付けた骸骨が座り込んだ状態で死んでおり、それを確認したナイは動揺しながらも状態を確認する。どうやら死亡してからかなりの年月が経過しており、恐らくは玉座に座っている事からもしかしたら当時の国王なのかもしれない。
「もしかしたらアルトの御先祖様なのかな……」
玉座に座り込んだ甲冑を纏った骸骨に対してナイは両手を合わせてお辞儀を行う。しかし、この時に骸骨の目の奥が光り輝く。
『アッ……ガアッ……』
「……えっ?」
『アァアアアッ!!』
――信じられない事に完全に死んでいたはずの骸骨から呻き声のような音が鳴り響き、玉座から立ち上がってゆっくりと動き出す。それを見たナイは唖然とするが、甲冑を纏った骸骨はナイに対して腕を伸ばす。
『アアアアッ!!』
「うわぁっ!?」
自分に向かってきた甲冑の骸骨に対して咄嗟にナイは距離を取るが、骸骨はナイを捕まえようと執拗に追い掛け回す。動きも時間が経過する事に徐々に素早くなり、徐々にナイは壁際へと追い詰められていく。
(何が起きてるんだ!?まさか、アンデッド!?)
死霊使いが操作するアンデッドのように動き出した骸骨に対してナイは背中の旋斧を引き抜き、この時に旋斧に聖属性の魔力を送り込む。
数々の強敵を打ち倒して進化を果たした旋斧は刀身部分が光の剣と化し、仮に相手が死霊人形の類ならば聖属性の魔力を帯びた攻撃を受ければ無事では済まない。
「だああっ!!」
『ガハァッ!?』
甲冑を纏う骸骨に対してナイは旋斧を叩き付けると、彼の剛力の一撃を受けて甲冑の骸骨は派手に吹き飛ぶ。死霊人形の類であれば聖属性の魔力を宿った刃を受ければ無事では済まず、この一撃で倒せるはずだった。
『ウウッ……アアッ!!』
「なっ!?き、効いていない!?」
しかし、旋斧の一撃を受けて吹き飛ばされたにも関わらずに甲冑の骸骨は起き上がる。仮に闇属性の魔法で死体が操られているのならば聖属性の魔法攻撃を受ければ何らかの反応を示すのだが、骸骨は特に変化は起きていない。
「ナイさん、どうし……うわぁっ!?お、お化けぇっ!?」
「何?どうしたの?」
「こ、これはいったい……!?」
「皆、下がって!!」
『グゥウウウッ……!!』
騒ぎを聞きつけたアルト達は玉座の間に姿を現すと、ナイと向かい合う「骸骨の騎士」を見て動揺する。骸骨騎士とでも呼べばいいのか得体の知れない怪物は玉座の方に視線を向け、ナイを放置して玉座の方へ駆け抜ける。
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