外伝第2話 宝物庫の鍵

――迷宮都市(旧王都)の古城は実は元々は人間ではなく、巨人族の力を借りて建設されたという話は有名だった。宝物庫に関しても巨人族の設計士が造り上げた代物であり、この宝物庫の扉を開くためには巨人族が扱うような巨大な鍵が必要だった。


鍵の大きさから察するに丁度ナイが扱う様な「」のような大きさの鍵を必要とするらしく、未だに鍵の方は古城内では発見されていない。もしかしたら古城を破棄する際に当時の王族が城の外に持ち出して隠した可能性もある。


宝物庫の中にはどれほど財宝が保管されているのかは不明だが、宝物庫を開くためには扉を開くための鍵を見つけ出さなければならない。力ずくで扉を破壊する事は不可能であり、宝物庫の全体は非常に頑強な魔法金属で構成されていた。


扉以外の箇所の壁を破壊して宝物庫に侵入する事も不可能であり、宝物庫全体が魔法金属の壁で覆われていた。この壁を破壊する事はほぼ不可能であり、仮に竜種が襲ってきても宝物庫の扉を破壊する事はできない程に堅固だった。



「う〜ん……そろそろ古城の探索も飽きてきたね」

「それは一か月も歩き回れば飽きますよ……」

「流石に疲れてきた……ナイ、おんぶして」

「ええっ……」



古城内の素材回収のために派遣されたのは銀狼騎士団と黒狼騎士団だけではなく、アルトが率いる白狼騎士団も含まれていた。但し、白狼騎士団の役目は素材回収を行う人間達の護衛ではなく、古城内の探索を命じられていた。


この一か月の間に白狼騎士団は古城内を歩き回り、測定を行って古城内の地図を描いていた。大分長い時を放置されていたので老朽化された崩れた箇所も多く、そのせいで瓦礫が崩れて移動できない通路も多く、地図の製作に時間が掛かった。しかし、一か月ほど費やして遂に地図の完成間近にまで迫る。



「よし、この部屋はこれで十分だろう……これでこの古城の全ての部屋の確認はおkなったはずだ」

「や、やっとですか……」

「最初の頃は隠し通路を探したりして楽しかったけど、結局そういう部屋には罠ばかりで大変だった」

「隠し扉を見つけた時は毎回僕の命が危険に晒されるから止めてほしいんだが……」

「あ、あはは……」



古城のあちこちに隠し通路が存在し、その大半がガーゴイルや人造ゴーレムといった生物が潜んでいた。恐らくは外部からの侵入者対策として設置されていたと思われるが、隠し通路が現れる度にナイ達は戦闘を余儀なくされる。


アルトは他の二人の王子と王女と違って戦闘能力は低く、彼の場合は自分が自作した魔道具を使用して身を守るしかない。しかし、ガーゴイルも人造ゴーレムも生身の生物ではなく、どちらも並の冒険者では相手にできないほどに強力な相手なので毎回アルトは命の危機に晒されていた。



「ふうっ……少し休憩しようか、流石に僕も疲れたよ」

「アルト王子、まだこの部屋の仕掛けがあるのか確認していない」

「大丈夫だよ。これまで調べてきた部屋の構造を確認する限り、この手の部屋には隠し通路なんて……うわぁっ!?」

「アルト!?」



ミイナの言葉にアルトは笑いながら近くの壁に背中を預けようとしたが、彼が身体を預けた途端に壁の一部が動き出し、回転式の隠し扉であると発覚した。扉が開いた事で通路が判明し、それを確認したナイは慌ててアルトの腕を引っ張り上げる。



「だ、大丈夫?」

「あ、ああ……驚いたよ、まさかこんな場所に隠し通路があるなんて」

「だから調べた方がいいと言ったのに……」

「またガーゴイルか人造ゴーレムが現れるかもしれません!!離れてください!!」



ナイはアルトを引っ張り上げるとヒイロは剣を抜いて通路を覗き込むが、予想に反して通路の奥から侵入者を撃退するためのガーゴイルや人造ゴーレムが現れる様子はない。


いくら待っても通路から何も出てこない事にナイ達は疑問を抱き、ここでアルトは自分が制作した地図を確認して部屋の構造を調べる。これまで調べた限りではこの手の部屋には隠し扉の類は一切確認されなかったが、何故かこの部屋だけに隠し扉があった事にアルトは怪しく思う。



「もしかしたらこの通路は……本物の隠し通路かもしれない」

「どういう意味?」

「この場所だけは侵入者対策に用意された罠じゃない、本物の隠し通路の可能性があるという事さ」

「本物の隠し通路……」



アルトの言葉にナイ達は隠し通路の奥を確認し、どうやら上の階に続く階段が存在した。階段を確認した4人はどうするべきか悩み、とりあえずは先に進む事をアルトは提案した。

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