第015話 人造ゴーレムの戦闘力
「二人を見捨てるわけにはいかないんです。ここまで来て引き返せません」
「あ、あんたらはあいつらを知らないからそんな事が言えるんだ……あの人造ゴーレムというのは化物だぞ。俺達も仕事でロックゴーレムと戦った事はあるが、あの人造ゴーレムは格が違う……」
「それはどういう意味ですか?」
「や、奴等は無敵なんだ……どんな武器も魔法も効かない。しかもゴーレムの弱点の水を浴びても平気なんだ。あいつらに敵う奴なんていない、下手をしたら竜種よりも厄介かもしれない……」
迷宮都市に隠れ住んでいる猪頭団は元々は腕利きの傭兵で構成された集団だが、彼等は人造ゴーレムと遭遇した時に嫌でもその強さを思い知らされたと語る。
人造ゴーレムは通常種のロックゴーレムよりも比べ物にならない硬度と力を誇り、巨人族のイノの攻撃を受けてもびくともしなかった。それどころかゴーレム種の弱点の水を浴びても平気で魔術師の砲撃魔法さえも損傷を与えられなかったという。
「俺達は人造ゴーレムに襲われた時、マホ魔導士が居たから助かったんだ……あいつらは無敵だ、どんな攻撃も通じない。見ろ、俺の斧を……こいつはミスリル製なのにこの様だ」
「うわっ……」
「……酷い刃毀れ」
イノは自分が身に付けている斧を差し出すと、その斧の刃は罅だらけで帆毀れも酷く、とても武器として扱える状態ではない。今にも刃が崩れかねない状態であり、イノは人造ゴーレムに挑んだ時の事を思い返して身体を震わせる。
「あいつらは普通のゴーレムじゃない、正真正銘の化物だ……悪い事は言わない、あんたらはここで帰った方がいい。仲間の二人は可哀想だがあれは人間がどうこうできる相手じゃない」
「そんな!?」
「駄目だよ!!リーナちゃんを見捨てるなんて出来ないよ!!ねえ、ナイ君!?」
「……当たり前だよ」
イノからの警告を受けてもナイ達は引き下がるつもりはなく、こうして話している間にも古城に取り残された二人が危険な目に遭っている可能性がある。それにここまで来て引き返すわけにはいかず、何と言われようとナイ達は人造ゴーレムを倒して古城へ向かう事を告げる。
「マホ魔導士、古城まで案内して下さい」
「うむ、お主ならそう言うと思ったぞ。よかろう、儂も微力ながら手助けしよう」
「だ、駄目だ!!あんな化物、お前みたいなチビが勝てる相手じゃない!!考え直せ……うっ!?」
ナイの言葉を聞いてマホは頷き、彼等を古城まで案内しようとした時にイノがナイを止めようと手を伸ばす。しかし、ナイの身体を掴んだ途端にイノは驚愕の表情を浮かべた。
イノと比べたらナイの背丈はせいぜい半分程度であり、体型も華奢でそれほど強そうには見えない。しかし、ナイの身体を掴んだ途端にイノは自分よりも巨大な巨人の身体を掴んだような感覚に襲われる。
(な、何だこいつ……びくともしない!?)
いくら力を込めようとイノはナイの身体を動かす事ができず、それどころかナイは自分の身体を掴むイノの腕を簡単に引き剥がす。それだけの行為でイノはナイの膂力が巨人族の自分よりも遥かに勝る事を悟り、動揺を隠せない。
「心配してくれた事はありがとうございます。けど、僕達は先に進みます……邪魔をしないでください」
「お、お前……何者だ?人間じゃないのか?」
「人間ですよ、多分」
イノの言葉にナイは苦笑いを浮かべ、彼はマホの案内の元で古城へ向かう。その様子をイノは止める事はできず、他の者もナイの後に続いて古城へと向かう。その様子をイノの配下は見送り、彼等は心配した表情を浮かべる。
「お、お頭……本当にあいつらを行かせていいんですか?」
「まだ全員、ガキ同然でしたよ。いくら魔導士が一緒だからって危険過ぎやしませんか?」
「……いや、放っておけ」
「お頭?どうしたんですか?」
去っていくナイ達の後ろ姿を猪頭団は見送る事しかできず、この時にイノはナイに掴まれた自分の腕を見て震える。彼の右手にはナイに掴まれた際に彼の指の痣がくっきりと残っており、これは巨人族であるイノがナイに力負けをした事を証明する証拠だった。
人間の少年にしか見えないが、巨人族である自分をも上回る力を見せたナイに対してイノは震えが止まらず、人の姿をしながら巨人をも上回る力を誇るナイに対してイノは期待感さえ抱く。
(もしかしたらあの小僧なら……)
人造ゴーレムの恐ろしさは嫌という程にイノも思い知らされたが、その人造ゴーレムと初めて遭遇した時以上にイノはナイに対して恐怖を抱き、もしかしたら自分はとんでもない相手に余計な忠告をしたのではないかと考えてしまう――
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