第013話 猪頭団
「な、何ですか貴方達は!?私達を誰だと思っているのです!!そもそもその珍妙な格好は何なんですか!?」
「……猪の被り物?」
『…………』
姿を現したのはオークの毛皮を纏い、更にオークの頭を想像させる覆面を纏った男達だった。異様な格好の男達の登場にナイ達は動揺を隠せず、最初に見た時は新種のオークかと危うく間違えるぐらいだった。
奇妙な格好をした男達の登場にナイ達は警戒するが、男達の中でも一際大きい人物が前に出る。背丈が3メートルを超えるので巨人族だと思われるが、意外な事にその人物は頭の被り物を取り外すと素顔を晒す。
「待ってくれ、君達に危害を与えるつもりはない」
「えっ?」
「……そうなの?」
覆面を外した巨人族の男の顔は30代前半ぐらいだと思われ、他の者達も次々と覆面を外すと殆どが20代後半ぐらい男性だと判明する。ここで屋上に隠れていた人物も姿を現し、驚く事にナイ達の知る顔だった。
「ふむ、少し驚かせてしまったかのう」
「えっ……まさか、マホ魔導士!?」
「ええっ!?魔導士様!?」
「どうして貴女がここに……」
屋上に隠れていた人物はマホである事が判明してナイ達は驚愕すると、彼女は少し意地悪い笑みを浮かべながら事情を説明してくれた。
「驚かせて悪かったのう。少し前に風の精霊がお主等が近付いている事を知らせてくれたのだが、ちょっと脅かそうとここでこの者達と共に隠れておったのじゃ」
「脅かそうって……じゃあ、この人達は誰なんですか?」
「この者達は儂が今、面倒を見ている傭兵団じゃ」
「……どうも、猪頭団の団長のイノと申します」
「い、いのかしらだん?」
聞いた事もない傭兵団の名前と彼等の格好にナイ達は戸惑うが、マホは一から自分がここにいる理由と猪頭団なる傭兵団との出会いを説明する――
――マホはとある街で傭兵ギルドに所属する猪頭団と出会う。彼等は元々は王都から遠く離れた街の傭兵ギルドに所属していた傭兵集団だったのだが、実はその傭兵団を纏めるイノはマホの昔からの友人の息子だった。
マホの友人は既に亡くなってしまったが息子の方とは子供の頃に面識があり、彼女は友人の息子がどうなったのかと気になった彼女は訪れると、なんと息子は傭兵となっていた。
イノという名前のマホの友人の息子は傭兵団をまとめ上げ、彼が暮らす街ではそれなりに有名だった。しかし、ある時に他の傭兵団との共同で仕事を行った時、彼等は他の傭兵団に嵌められてしまう。
ある時に街一番の商人の商団の護送を頼まれた傭兵団は旅の道中、商団が運んでいた荷物の一部が盗まれた事が発覚する。そして真っ先に疑われたのはイノであった。今回の商団に同行していた傭兵団の内、イノが所属する傭兵団以外の傭兵は彼が荷物を盗んだと証言する。
当然だがイノは商団の荷物など盗んではおらず、身の潔白を訴えたが彼の部下だった傭兵の一人がここでイノを糾弾する。実はイノの配下だった男の一人が他の傭兵団と組んでおり、彼はイノに窃盗の罪を被せようとした。
結局はイノ達が乗り込んでいた馬車から盗まれた荷物が発見され、イノを筆頭に他の傭兵達は糾弾され、それに激高したイノの傭兵団と他の傭兵団は争う。
――結果的にはこの行動が仇となり、イノの傭兵団は商団の荷物を奪って他の傭兵団に手を出した事にされ、犯罪者として指名手配されてしまう。そのためにイノと彼に従った傭兵達は街を追われた。
事情を知ったマホはイノと彼に従う傭兵団を見捨てる事は忍びなく、仕方なく彼女は誰も立ち入らぬ場所に一時的に彼等を避難させるため、この迷宮都市にまで誘導した事を伝える。
ちなみにこの街で発見された新種の魔物の正体に関しても実はオークの姿に擬態した猪頭団の仕業である事が判明し、その辺の事情は既に調査に赴いたリーナと他の冒険者にも伝えている事をマホはナイ達に告げた。
「じゃあ、冒険者ギルドに報告が上がった人型の魔物の正体は猪頭団の人たちだったんですか!?」
「うむ、そういう事になるな。調査に出向いたリーナ達にも報告しておいたのだが……もっと早く儂が連絡しておくべきだった」
「何だか迷惑を掛けた様で申し訳ない……だが、俺達もこの都市で生きるためにはこの格好になるしかなかったんだ」
「な、なるほど……魔物の姿に擬態する事で他の魔物に襲われないようにしてたのですか」
「う〜ん……でも、その恰好だと確かに人型の魔物だと勘違いされても仕方ないっすね」
「最初に見た時はびっくりしたよね、プルミンちゃん?」
「ぷるぷるっ(食われるかと思った)」
「ウォンッ(まずそうなオークだと思った)」
猪頭団が珍妙な格好をしているのも理由があり、彼等はオークに擬態する事で他の魔物から襲われないように変装していた事が判明した。一応は理由があって変装しており、別に彼等も好き好んでこのような格好になったわけではない事を告げる。その割には猪頭団なる名前を付けている事に関しては少々疑問は残るが、とりあえずはナイはマホに詳しい話を伺う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます