第011話 手紙
「あ、あら……ごめんなさい、お邪魔だったかしら?」
「う、ううん!!そんな事はないよ!?」
「そ、そうそう……それで何かあったの?」
ヒナの言葉にナイとモモは頬を赤らめながら答えると、ヒナは少し申し訳なさそうな表情を浮かべながらもナイに手紙を差し出す。その手紙は既に封が開かれており、何故かヒナが先に内容を確認したらしい。
「この手紙、ナイ君宛てに書かれた手紙みたいなんだけど……差出人の名前が書いてないから怪しいと思って私が中身を確認したの」
「手紙?」
「落ち着いて聞いて頂戴ね……どうやらこの手紙、イリアさんからの手紙なの」
「イリアさんの!?」
手紙の内容を確認したヒナは差出人は記されていないがイリアが送り届けた手紙だと判断し、すぐにナイはヒナから手紙を受け取る。どうしてイリアがまた手紙を届けたのかと不思議に思ったが、手紙の内容を確認して更に驚く。
「この手紙は……!?」
「え、えっ……な、なんて書いてあるの!?」
「……どうやら思っていたよりもまずい状況に陥ったみたいだ」
イリアが送ってきた二通目の手紙はとんでもない内容が記されており、すぐにナイは出発を早めた方がいいと判断した――
――イリアからの二通目の手紙の内容は要約すれば一刻も早く、自分を迎えに古城へ来てほしいと記されていた。イリアはどうやら古城の調査に赴き、なんと彼女は既に古城の内部への侵入を果たしていた事が発覚する。
迷宮都市に到着後にイリアは独自に調査した結果、彼女は驚くべき事に古城へと繋がる秘密の抜け道を発見した。その抜け道を利用してイリアは古城内部に侵入する事に成功し、人造ゴーレムの監視の目を擦り抜けて古城への侵入に成功したという。
実は彼女は調査の途中で偶然にも迷宮都市の魔物の生態系の調査を行っていたがリーナと合流し、彼女の協力も得て遂に古城へと繋がる秘密の抜け道を発見した。そしてイリアとリーナは二人で抜け道を通って古城の中に侵入を果たす。
今まで誰一人として足を踏み入れる事ができなかった古城に遂にイリアとリーナは到達した事になるが、ここで最悪の問題が発生した。それは二人が利用した抜け道はとある理由で封じられてしまい、引き返す事ができなかった。しかも別の出入口から抜け出そうとすれば人造ゴーレムに見つかってしまい、完全に二人は古城の中に閉じ込められてしまう。
リーナだけではイリアを守るのが精いっぱいでとても古城から抜け出す事はできず、二人は人造ゴーレムに取り囲まれた古城から脱出できない状況だった。しかも手紙を送ったのは数日前の話であり、二人が持参した食料や水は底を尽きかけて限界も近い。
この手紙を確認したナイはすぐに迷宮都市に出発する事を決め、二人を救い出すために急いで他の者を呼び集めて王都を発つ。今回の面子はナイを筆頭にアルト、ミイナ、ヒイロの白狼騎士団、さらには聖女騎士団からはエリナが駆り出される。
本当はもっと時間があれば他に人間も集める事はできたのだが、生憎と今は他の人間に相談する時間も惜しく、二人を救うためにナイ達はビャクの狼車に乗り込んで迷宮都市に向けて出発した。しかし、ここで思いもよらぬ同行人がいた。
「迷宮都市かぁ……どんな所か楽しみだね、プルリンちゃん」
「ぷるぷるんっ」
「……どうしてモモも一緒に乗ってるの?」
迷宮都市に向けて出発した狼車には何故かスライムのプルリンを抱きかかえるモモも参加しており、どうして王国騎士でもない彼女が一緒に乗り込んでいるのかとミイナは疑問を抱く。それは他の者も一緒でヒイロはナイに問い質す。
「ど、どうしてモモさんまで乗っているんですか!?今から行くのは迷宮都市なんですよ、魔物の巣窟と呼ばれる恐ろしい場所なんです!!それなのに戦えないモモさんを連れて行くなんて……」
「いや、そういわれても……モモを連れて行く事を決めたのは僕じゃなくてアルトだよ」
「えっ!?アルト王子が!?」
「ああ、君達も知っているだろうがモモ君は優秀な治癒魔導士だ。回復役が同行しているだけでも心強いだろう?なあ、モモ君」
「うん!!私、皆の役に立てるように頑張るよ!!怪我をした時はすぐに言ってね、必ず治してあげるから!!」
「ぷるるんっ(その意気やで)」
意外な事にモモの動向を認めたのはアルトらしく、彼によるとこれから赴く迷宮都市は危険地帯であり、回復役が一人でもいれば非常に心強い。だからアルトは無理を言ってモモに協力してもらう。
しかし、アルト以外の人間は一応は一般人であるモモを今回の旅に同行させる事に不安を抱き、特にナイはモモを危険な目に遭わせたくはないので最初は反対したのだが、モモは親友であるリーナの危機と聞いて放っておけるはずがなかった。
「モモ……今から行く場所は本当に危険なんだよ。無理をしない方がいいよ」
「大丈夫だよ!!リーナちゃんが危ない目に遭ってるかもしれないのにじっとなんかしてられないし……それに何があってもナイ君が守ってくれるよね?」
「うっ……」
「私も絶対にナイ君の役に立てるように頑張るから!!だから、一緒に行こうよ……ね?」
モモはナイが納得するまで彼を離さないとばかりに後ろか抱きしめ、そんな彼女の行動にナイとしてはどうしても反対できず、結局は今回の旅にモモも加わる事が決定した――
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