第010話 モモとリーナとの関係
「ナイく〜ん、ご飯持って来たよ〜」
「あ、ありがとう」
部屋の扉を開けるとモモがわざわざナイの部屋まで食事を運んできてくれたらしく、ナイはすぐに机の上を整理して彼女が持って来た食事を置く。
「えへへ、今日のご飯は私が作ったんだ。ナイ君の口に合うといいけど……」
「へえ、そうなんだ。それは楽しみだな」
白猫亭の食事は普段はクロネが作っているのだが、最近はモモも料理する事が多くなった。2年前はこの宿がテンが経営した時はヒナとモモしか従業員しかいなかったが、改築後はクロネを加えて他にもこの1年の間に新しい従業員を増やした。
今では白猫亭はこの王都一番の人気の宿屋でもあり、その一室をナイはほぼ無料で貸し切っている。ナイはお金を宿泊料を払うと毎回言っているのだが、この国の英雄にお金を受け取るわけには行かないという事で現在の経営者のヒナは拒否している。
――尤も白猫亭の人気の理由は英雄であるナイも白猫亭を贔屓しているという噂を流し、その話を聞きつけた観光客が興味を抱いて泊まりに来る事が多かった。ナイが家を借りずに宿屋に泊まり続ける事で白猫亭は繁盛に繋がっている面もある。
モモは食事を机の上に並べてもナイの部屋から出る事はなく、彼女はナイの部屋のベッドに座ると疲れた様子で腕を伸ばす。
「う〜ん……」
「モモ、疲れてるの?」
「うん、最近はちょっと忙しくて……あ、でもナイ君が何処かに連れて行ってくれたら元気になるかも〜」
「そう?なら、今度また商業区にでも行く?」
「え!?本当に!?」
ナイがモモの話を聞いて商業区に一緒に出掛ける事を提案すると、モモは疲れが吹き飛んだかのような表情を浮かべ、嬉しそうにナイに詰め寄る。この際に2年の間に一段と大きくなった胸をナイに押し付ける。
(うっ……またモモの胸、大きくなってる)
胸を腕に押し当てられたナイはモモの胸の成長を実感し、最初に会った時から彼女の胸は大きかったがこの2年の間に更にモモは成長していた。しかも告白した時からモモはナイとのスキンシップが多く、彼女なりにナイにアプローチを掛けていた。
モモがナイに告白してから大分時は経過しているが、二人の関係は恋人のようなそうでもないような間柄だった。ナイとしてはモモの好意に気付いているし、彼女の事を好きかと聞かれれば間違いなく好きだと言える。しかし、実はモモ以外にナイに好意を伝えた人間がいる。
(リーナはどうしてるんだろう……無事だと良いけど)
ナイはリーナの事を思い出し、彼女が迷宮都市に向かったと聞いた時から少し心配だった。実は彼女は今から半年ほど前にナイに告白しており、彼女の返事もまだだった。
『ぼ、僕は……ナイ君の事が大好きなんだ!!』
『えっ……?』
ある日、ナイはリーナに呼び出されて彼女から告白された。リーナはこの時にナイに花束まで用意しており、告白というよりはまるでプロボーズを申し込むような勢いだった。
ナイはいきなりリーナに告白されて戸惑うが、リーナ本人は真剣に彼を愛している事を伝えて交際を申し込む。しかし、既にナイはモモからの告白されて未だにはっきりと返事していなかった。
『ナイ君……その、僕と付き合ってほしい。駄目かな?』
『いや……』
『僕、ナイ君の事が本当に好きだから……それだけは伝えたくて、だから返事は今すぐにしなくていいよ』
リーナは告白の返答はすぐには求めず、それ以降は二人はあまり顔を合わせる事はなかった。リーナはナイの事を好いているが、彼がはっきりとした答えを出す事に怖がり、あまり顔を合わせなくなった。だからこそナイもちゃんとした返事を帰せぬまま半年も過ぎ去る。
(……ちゃんと返事をしないとな)
ナイはリーナに対して自分の気持ちを伝える覚悟はできており、迷宮都市にいるはずのリーナの事を想う。そんなナイの顔を見てモモは何かを勘付いたのか頬を膨らませながら彼に抱きつく。
「ナイ君、別の女の子の事を考えたでしょ」
「えっ!?」
「もう、私がいるのに他の女の子の事を考えるなんて……そんな悪いナイ君はこうしてやる!!こちょこちょこちょっ!!」
「わあっ!?ちょ、脇は駄目だって……あはははっ!!」
モモはナイの脇を攻めて無理やりに笑わせ、二人はベッドの上に倒れ込む。この時に不可抗力で二人は身体を密着してしまい、お互いの顔を覗き込む。
『あっ……』
二人はベッドの上で顔を合わせ、やがてモモは緊張した様子で目を閉じると唇を突き出す。その態度を見てナイはモモが求める行動に気付き、ナイは喉を鳴らして彼女の顔に顔を近づけようとした瞬間、部屋の扉が開け開かれる。
「ナイ君!!大変よ!!」
「きゃあっ!?」
「うわっ!?」
部屋の扉を開いたのはヒナであり、彼女は慌てた様子で部屋の中に飛び込む。そんな彼女に気付いたナイとモモは慌てて起き上がると、ヒナはそんな二人を見て自分がまずい状況に割り込んだのかと焦る。
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