第05話 迷宮都市へ
「イリアさんの手紙によると古城に忍び込むために協力してほしいそうだけど……」
「全く、どうして僕に相談なしで行ったのか……ナイ君、悪いんだがイリアの力になってくれるかい?勿論、僕も行かせてもらうよ」
「え?どうしてアルトも?」
「僕としても迷宮都市の古城の事は気になるからね……前の時は失敗したけど、君の力を借りればもしかしたら本当に古城へ入れるかもしれない。それにイリアが何の策も無しに古城へ挑むとは思えないんだ」
アルトもかつて失敗した古城の調査を再開したいという気持ちはあり、それに一応は友人であるイリアを放っておく事もできず、彼女の手助けのためにナイに協力を申し込む。
もう一度古城の調査を行いたいという気持ちもあったため、アルト自身も今回の迷宮都市の旅の同行を申し出る。別にナイとしては問題はないが仮にも王子であるアルトが王都の外に出ても問題ないのかと思ったが、その点に関してはアルトが他の者を説得するという。
「父上に報告して迷宮都市の調査の許可を貰ってくるよ。迷宮都市に挑む以上は相応の戦力を用意しないといけないからね、できる事ならリーナにも手を貸してほしいんだけど……ナイ君の方で頼んでくれるかい?」
「リーナに?」
「僕の白狼騎士団だけでは戦力不足だろうからね。それと聖女騎士団にも相談して誰か借りれないのか聞いておいてくれると助かるよ」
「分かった、ならテンさんにも話を伝えておくよ」
ナイはアルトの提案を受け入れ、まずは冒険者ギルドに立ち寄ってリーナがいないのかを確認し、その後に聖女騎士団の元に赴いて協力を仰げないのか尋ねる事にした――
――冒険者ギルドに到着すると、ナイはリーナに会いに来たことを伝える。受付嬢はナイが来ると慌ててギルドマスターに連絡し、すぐにナイはギルド長室に移動してギルドマスターから説明を受ける。
「えっ?リーナが迷宮都市に?」
「ああ、迷宮都市にて新種の魔物が現れたという目撃情報が届いてな。そこでリーナに調査に出向いて貰っている」
ギルドマスターの話によるとナイが相談する前からリーナは既に迷宮都市に向かっていたらしく、現在は迷宮都市に滞在して魔物の調査を行っている事が判明した。
事の発端は10日前に遡り、迷宮都市に滞在する冒険者から新種の魔物を発見したかもしれないという報告が届き、その調査のためにリーナを筆頭に腕利きの冒険者を派遣したという。既にリーナは迷宮都市に到着しているはずであり、今頃は都市内の魔物の調査をしているはずだとギルドマスターはナイに伝える。
「新種の魔物の正体は不明だが、目撃者によると人型の魔物らしい」
「人型の魔物……どんな奴ですか?」
「いや、詳細は分からない。今の所は目撃情報だけで実際に襲われたという報告はないが、用心のためにリーナに出向いて貰った。ハマーンは引退してガオウも今は遠征中、ゴウカは捕まって相方のマリンも王都を離れて今では連絡も取れない……リーナしか動ける人間はいなかった」
「そ、そうなんですか……」
現在の王都に滞在する黄金冒険者はリーナとガオウしか存在せず、ハマーンは正式に冒険者稼業を引退して現在は鍛冶師に専念していた。ゴウカは収監され、マリンは彼が捕まった後から姿を見せなくなり、ガオウは今は獣人国に出向いて仕事をしている。
国内の黄金冒険者は王都以外にも存在するが、王都近辺では活動していないために今回の調査はリーナに出向いてもらうしかなかった。彼女を筆頭に他にも数名の金級冒険者を参加させているので心配はないと思われるが、ナイとしてはタイミングが悪かった。
(迷宮都市に先に行っているのならリーナとはまた後で会えるか……)
リーナに協力を依頼する事はできなかったが、先に迷宮都市に出向いているのならば彼女と会える可能性も十分にあるため、一旦ナイは冒険者ギルドを離れて今度は聖女騎士団の元へ向かう――
――聖女騎士団は現在は白狼騎士団と共に一般区の管理を任されており、1年ほど前に一般区では在籍する騎士のために宿舎が立てられた。現在の騎士団の大半の団員は宿舎で暮らしており、テンの方も今現在は宿舎で暮らしている。
テンは白猫亭の主人ではあるが現在の経営はヒナに一任しており、彼女は聖女騎士団の団長として活動に集中していた。宿舎には訓練場も存在し、そこでは彼女の指導の元で団員達に厳しい訓練が課せられていた。
「ほらほら、どうしたんだい!!1周でも遅れたら腕立て伏せ100回だからね!!」
「はあっ、はあっ……」
「も、もう無理……」
「死んじゃうっ……」
ナイが宿舎に辿り着くと丁度新人の団員達がテンの指導を受けていた。ちなみに団員は全員が女性で統一されており、彼女達は宿舎の周囲を延々と走り回っていた。しかもただ走るのではなく、両手と両足に重りを付けた状態で走っている様子だった。
※カタナヅキ「鬼軍曹……壁|д゚)ボソッ」
テン「あんっ!?(#^ω^)ピキピキ」
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