第04話 人造ゴーレム

――アルトがまだナイと出会う前、彼は冒険者を個人的に雇って迷宮都市に赴いた事がある。この時に彼の師匠であるハマーンも同行しており、迷宮都市に訪れた彼は古城へ乗り込むために冒険者達と共に向かう。


しかし、古城に辿り着く前にアルト達は人造ゴーレムと遭遇してしまう。どうやら人造ゴーレムは古城の内部だけではなく、城の周辺も巡回していた事が発覚する。


止む無く冒険者達はアルトを守るために人造ゴーレムと交戦する事になったが、この時に冒険者の中から水属性の魔法を得意とする魔術師が最初に攻撃を仕掛けた。通常のゴーレムならば水属性の魔法を受ければ肉体が崩れ落ちて倒す事はできるはずだが、人造ゴーレムは魔法をまともに浴びても肉体が崩れる所か怯みもしなかった。


その後の戦闘は大変な事態に陥り、同行していた巨人族の冒険者が真っ先に人造ゴーレムに狙われた。人造ゴーレムは巨人族の冒険者が放った斧を正面から受けても弾き返し、肉体の硬度もロックゴーレムやマグマゴーレム以上だと判明する。


結局は魔術師の砲撃魔法も巨人族の怪力による攻撃も通じず、アルト達は止む無く撤退するしかなかった。殿はハマーンが請け負い、彼は皆を逃がすために尽力したがこの時の戦闘で大怪我を負う。


結果的にはアルトを守り切り、冒険者達も誰も死なずに逃げる事はできた。しかし、被害の方はかなり酷く、この時の戦闘で同行していた冒険者達は重傷を負ってしまい、黄金冒険者であるハマーンでさえも危うく命を落としかけたという――






――この一件以来、アルトは迷宮都市に訪れる事はあっても古城に近付くような真似はしなかった。古城の周辺地域は危険区域として認定され、今では古城周辺は冒険者も近づけない。


唯一の幸運は人造ゴーレムは古城から遠く離れて行動する事はなく、彼等はあくまでも古城の守護者であるために城から離れる事はない。しかし、人造ゴーレムが守っている限りは古城に入る事は不可能に等しい。



「当時の僕はまだ黄金級冒険者だったハマーン師匠と、数名の腕利きの冒険者を雇えば古城に入り込む事はできると思ったんだ。けど、噂以上に人造ゴーレムの強さを思い知らされたよ」

「あのハマーンさんが勝てないなんて……」

「師匠によればあの人造ゴーレムはミスリル以上の硬度を誇るらしいね。しかもあらゆる魔法に対して絶対の耐性を誇る……だからリンやドリスのような魔法剣の使い手でもどうする事もできないと言っていたよ」



人造ゴーレムは他のゴーレム種よりも魔法耐性がずば抜けて高く、昔に黄金級にまで上り詰めた魔術師が攻撃魔法を仕掛けた際も人造ゴーレムの破壊には至らなかったという記録まで残っている。


この事から考えられるのは人造ゴーレムは魔法に対する強い耐性を誇り、砲撃魔法や魔法剣の類は通じない。魔法が通じなければ力ずくで破壊するしかないが、人造ゴーレムの硬度はロックゴーレムの比ではなく、巨人族の全力の攻撃を受けてもびくともしない。



「僕の見立てでは人造ゴーレムを倒すには圧倒的な力で破壊するしかない。それに破壊する場合は武器の方もそれ相応の硬度を誇らないといけない……それこそ君の盛っている岩砕剣のような武器じゃないとね」

「へえっ……」

「人造ゴーレムを直に見た僕からすればあんな化物を倒せるとしたら……元黄金級冒険者のゴウカさんぐらいだね」



アルトの知る限りで人造ゴーレムを倒せる力を持つとしたら黄金級冒険者の中でも腕力に特化した「ゴウカ」だけであり、彼の馬鹿力と竜種をも屠ると言われるドラゴンスレイヤーならば人造ゴーレムの防御力を突破して破壊できる可能性は十分にあった。


最もそのゴウカは現在も収監されており、少なくともあとは出られる事はない。彼が行った罪を考えればむしろ数年で出られる方が凄い事だが、ゴウカは宰相の反乱に参加はしたが一般人には手を出さず、戦った冒険者や兵士も殺してはいない。それに彼が冒険者時代に残した功績も配慮して数年の収監で済んだ。



「ゴウカさん以外に人造ゴーレムを倒せるとしたら……君ぐらいだろうね」

「えっ?」

「だって君はゴウカさんと互角に戦ったリョフという男を倒したんだろう?それに君の持っている岩砕剣と旋斧なら人造ゴーレムも破壊できる可能性は十分にあるよ。だからそれを見越したうえでイリアも君に助けを求めたんだろうね」

「あ、なるほど……そう言う事だったのか」



ナイはアルトの言葉を聞いてイリアが自分に手紙を送った理由を悟り、彼女は古城の調査のために邪魔者である人造ゴーレムと対抗できる力を持つナイに助けを求めたのだ。それを知った上でナイはどうするべきか悩み、イリアの調査に協力するかどうかをアルトに相談する。

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