第03話 古城の守護者
「人造ゴーレムというのは文字通りに人の手で作られたゴーレムなんだ」
「えっ!?ゴーレムを人の手で……そんな事ができるの!?」
「今の時代では不可能だね。記録によれば人造ゴーレムを作り出す技術を編み出したのは勇者らしいよ」
アルトによれば「人造ゴーレム」なる存在は遥か昔、異界から訪れたという「勇者」が残した技術によって作り出された存在らしい。しかし、現在の時代ではその技術は廃れてしまい、もう二度と人造ゴーレムは作り出せないという。
「人造ゴーレムは野生のゴーレム種とは異なり、主人である人間の命令には忠実に従う。古城に残された人造ゴーレムは元々は魔物に対抗するために作り出された代物なんだけど、結局は人造ゴーレムだけでは魔物の大群はどうしようもできなくて旧王都は放棄されたみたいだね」
「そ、そうなんだ。それなら人造ゴーレムは……」
「人が去っても残された人造ゴーレムは旧王都の古城に残り続け、今現在も古城に入り込もうとする侵入者を拒むために稼働し続けているよ。何百年も主人が戻る事がない城の守護を行っているんだ……そう思うと彼等も哀れだね」
「何百年も……」
魔物に対抗するために作り出された人造ゴーレム達は、今尚も旧王都の古城に残って守り続けているらしく、もう主人が戻ってくる事はないにも関わらずに人造ゴーレムは古城の侵入者を排除するために働き続けているらしい。
古城には人造ゴーレムが侵入者を排除するために巡回しており、もしも人造ゴーレムに見つかれば仮に人間であろうと容赦なく襲い掛かる。元々は人間を守るために作り出された存在が今では逆に人間を脅かす存在と化したのは皮肉な話だった。
「人造ゴーレムの戦闘力は野生のゴーレムを遥かに上回るんだ。しかもゴーレム種の共有の弱点である水に対しても耐性を持っているから厄介な事この上ないよ」
「えっ!?水が効かないの?」
「ああ、僕も前に腕利きの冒険者を雇って古城の調査に出向いた事があるんだ。だけど、人造ゴーレムは水属性の魔法を得意とする魔術師の攻撃を受けても平気だった。彼等はどうやらゴーレム種の弱点を克服しているらしい」
ゴーレム種は環境によって様々な能力を持ち合わせ、例えば山岳地帯に生息する「ロックゴーレム」は名前の通りに岩石の如き硬い外殻に覆われ、この外殻を破壊して核を壊さなければ倒す事はできない。
他にもナイがグマグ火山で遭遇した「マグマゴーレム」や「ゴーレムキング」は膨大な火属性の魔力を宿し、溶岩のように肉体に高熱を帯びたり、火竜のように火炎の吐息を吐き出せるなどの特殊能力を持つゴーレムも存在する。
しかし、これらのゴーレム種の弱点は「水」であり、彼等は水を浴びると身体が泥のように柔らかくなって肉体が崩れる。だからこそ水属性の魔法の使い手がいればそれほどの脅威にはならないのだが、人造ゴーレムの場合はこの水の弱点も克服しているとアルトは説明する。
「人造ゴーレムは魔物だけではなく、将来的には国の戦力として有効活用しようと考える輩もいたんだ。でも、結局は実験は成功したのに王都が魔物の大群に占拠されたせいで全てが台無し……もう人造ゴーレムを作り出す技術も失われた」
「魔物を戦力になんて……」
「まあ、魔物を味方につける事自体は別に珍しくはないよ。獣人国もファングを飼いならして馬代わりに利用したり、巨人国もマモスやパオーといった大型の魔獣を飼いならして戦闘に参加させる事もあるからね。といっても……魔物を一から作り出して戦力に加えようと試みたのは王国だけだろうね」
「…………」
人々を脅かす存在の魔物、それを味方にする事ができればこれ以上に心強い存在はいない。しかし、結果的には人の手で作り出された人造ゴーレムは本来の目的を逸脱し、今では人々を脅かす存在と化した。
古城を調査するためには人造ゴーレムを何とかしなければならず、人造ゴーレムを倒さなければ古城内の調査は難しい。しかも人造ゴーレムは従来のゴーレムの弱点である水は効かず、力ずくで破壊する以外に方法はない。
「かつて古城を調べるために何人もの冒険者が挑んだらしいよ。けど、結局は全員が返り討ちにあった。そのせいで王国側も古城へ立ち入る事を禁じたんだ」
「そんなに人造ゴーレムは強いの?」
「強いというよりは厄介な相手なんだ。どういうわけだか彼等には水属性の魔法どころか、他の属性の魔法も喰らわない。爆炎、電撃、氷結……様々な攻撃手段を用いても人造ゴーレムには通じなかったよ」
「その口ぶりだとアルト……もしかして実際に試したの?」
「ああ、うん……色々と罠を張って試してみたけど駄目だったね」
アルトも以前に古城の調査のために赴き、彼なりに作戦を立てて冒険者の協力を得て人造ゴーレムの討伐を行ったが、結局は全て失敗してしまった事を告げる。
※今日だけ2話です。
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