28話 計画実行
――酒場にて情報収集を終えた後、カノンは商業区の方にある宿屋へと宿泊する。一般区にも宿屋はあるが、商業区を選んだのは一般区の人間に彼女は顔を見られており、一応は化粧で誤魔化しているが万が一の場合に備えて一般区を避けて商業区の宿屋へと宿泊する。
一般区の宿屋と比べて商業区の宿屋は値段が高く、基本的には外部から訪れた商人や貴族などの金に余裕のある人間が泊まる事が多い。そのためにかなりの出費だが、今回の暗殺依頼を果たせばカノンも大金を手に入るので仕方なく宿泊する。
「獣人国と比べてこっちは物価が高いわね……その分に品質は高そうだけど」
机の上にてカノンは商業区で販売されている魔石を購入し、魔石弾の制作のためにヤスリで削り取っていた。魔石の類は破壊した場合、内部の魔力が暴発する危険性があるが、時間をかけてヤスリなど削る分には問題はない。
元細工師であるカノンは慣れた手つきで購入した魔石を削り取り、弾丸の形へと変化させていく。魔銃の難点は発射する魔石弾をカノン自身が削り取って作り出さなければならず、彼女は火属性以外の魔石を削り取って準備を行う。
(火属性の魔石弾だけだと駄目ね……またあの盾に跳ね返されないようにしないと)
昼間の戦闘にて火属性の魔石弾はナイの反魔の盾に跳ね返された事を思い出し、その対策としてカノンは今度は火属性以外の魔石を購入して準備を行う。魔石はかなり高値なので手痛い出費だが、背に腹は代えられない。
彼女が購入した魔石は風属性と闇属性であり、他にも普段から持ち歩いている魔石弾を机の上に置く。これらを使用してカノンは反魔の盾を所有するナイを倒す方法を考え、彼女は購入した王都の地図を開く。
「罠を仕掛けるとしたら……やっぱり、ここしかないわね」
カノンは路地裏を通った先にある建物に囲まれた空き地に視線を向け、その場所に筆を剥けて×印を書き込む。この場所にナイを誘導して確実に仕留める、それ以外に方法はないとカノンは考えた。
「今度はしくじらないわよ」
弾丸が装填されていない魔銃を額に押し当てた状態でカノンは精神を集中させ、この日の夜に彼女は全ての準備を終えて行動を起こす――
――夜を迎えるとカノンは早速だが行動を開始した。彼女が向かう先は白猫亭であり、今夜にナイがこの宿屋に訪れるという話はカノンも聞いていた。
昼間の騒動のせいで白猫亭の周辺では頻繁に警備兵が巡回しており、その様子をカノンは建物の屋根の上に伏せて様子を伺っていた。暗殺者である彼女は「暗視」の技能を習得し、更に彼女は「鷹の目」と呼ばれる視力を強化させる技能も習得していた。
暗殺者になるためにカノンはSPを消費して複数の技能を習得しており、魔銃を使用すれば大抵の魔物を倒す事はできた。ちなみにカノンは「器用」の技能を生まれた時から習得しているため、そんな彼女だからこそ魔銃の弾丸を簡単に制作する事ができた。もしもカノンが細工師でなければ魔銃を扱いこなす事はできず、今の様な人生を送ってはいなかったのかもしれない。
(……見つけたわ、のこのこと歩いてるわね)
建物の屋根の上にてカノンは街道を歩くナイの姿を確認し、この時のナイは完全武装の状態だった。流石に昼間の一件で警戒してはいるらしく、ナイの姿を見てカノンは作戦の準備を行う。
(今度は外さないわ)
カノンは距離が離れている状態にも関わらず、街道を歩いているナイに向けて銃口を構える。この時に彼女は魔銃に装填したのは火属性の魔石弾であり、街道のナイはまだ気づいている様子はなく、彼女は躊躇せずにナイに向けて魔石弾を発射させる。
(くたばりなさい!!)
街道を歩いているナイはカノンの存在には気づいておらず、不意打ちならば仕留められる可能性もあると判断したカノンは魔石弾を発射させた。しかし、発砲の直前でナイは何かに気付いた様にカノンの方へ振り返る。
死線を幾度も乗り越えてきた事でナイは他の人間が発する「殺気」を敏感に感じ取り、この時にナイは建物の上で魔獣を構えるカノンを視認した。しかし、既にカノンは発砲の準備は整えていた。
「死ねっ!!」
「っ……!?」
カノンは魔石弾を発射させた瞬間、それを確認したナイは反射的に腰に装着していた「刺剣」を取り出し、それを魔石弾に目掛けて投擲する。この時にナイは「投擲」「命中」の技能を発動させ、見事に発射された魔石弾に刺剣を衝突させる。
空中にて刺剣と衝突した魔石弾は砕け散り、内部の魔力が暴発を引き起こして爆発する。その光景を見たカノンは衝撃を受けた表情を浮かべるが、即座に冷静さを取り戻して次の行動に移る。
(今のに反応するなんて……でも、問題ないわ!!計画通りよ!!)
不意打ちにも対処された事はカノンにとっても予想外だったが、彼女は事前に路地裏に下ろしていたロープを利用して地上へと降りる。この時にナイも路地裏の方に逃げ込むカノンの姿を確認して後を追いかける。
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