25話 カノンの衝撃

「うわっ……危なかった」

「なっ、なっ、なっ……!?」

「ちょ、ちょっと貴女!!今、何をしたのよ!?」



カノンは自分の魔石弾を上空に弾いたナイを見て信じられず、彼女の視点では拳銃を発砲した瞬間、ナイが一瞬にして盾を構えていたようにしか見えなかった。あまりにもナイの動きが素早過ぎて彼女の動体視力では捉えきれず、その一方でヒナの方も上空の爆発を見てカノンが何かしたのかと問い質す。


ヒナの言葉を聞いてカノンは正気を取り戻すと、慌ててカノンは駆け出す。そんなカノンの姿を見てナイは逃がしてはならないと判断し、彼女の後を追いかけようとした。



「待て!!」

「ち、近づくんじゃないわよ!!」

「ナイ君、危ない!?」



逃げる途中でカノンは魔銃を構えると、それを見たヒナが注意する。ナイはヒナの言葉を聞いて反魔の盾を構えると、カノンは走りながらもナイに目掛けて弾丸を発砲した。



「このっ!!」

「ふんっ!!」

「きゃあっ!?」



走りながらもナイは発射された魔石弾を再び上空へ弾き飛ばし、またもや花火のように爆発を引き起こす。二度目の爆発に何事が起きたのかと街道を行き来していた人々は立ち止まり、それらを潜り抜けながらカノンとナイは走る。



「な、何だ!?今のは……」

「爆発したのか?」

「おい、どうなってるんだ!?」

「ちょっと、邪魔よ!!退きなさい!!」

「待てっ!!」



カノンは通行人を潜り抜けながら後を追いかける中、レナの方は一気に彼女に追いつくために跳躍し、空からカノンの元へ降り立つ。



「捕まえた!!」

「きゃああっ!?」



まさか上からナイが襲い掛かるとは予想できず、カノンは背中を掴まれて地面に押し倒される。彼女は必死にもがき、その際に魔銃を発砲した。


しかし、銃口を向けられた瞬間にナイは顔を反らすと魔石弾はナイの頭の横を素通りして上空に打ちあがる。その光景を見て愕然とし、至近距離で弾丸を回避したナイに信じられない表情を浮かべる。



(よ、避けた!?この距離で!?)



至近距離から撃ち込んだにも関わらずにナイが弾丸を避けた事にカノンは理解が追いつかず、彼の人間離れした反射神経と運動能力は獣人族や巨人族も顔負けだった。その一方でナイは魔銃に視線を向けると、武器を回収しようとした。



「この武器がさっきの爆発を……」

「あ、や、止めなさい!?この変態、誰か助けて!!」

「な、何だ!?襲われているのか!?」

「おい、あんた何してんだ!?」

「ちょっ……」



カノンは悲鳴を上げると通行人がナイの事を痴漢だと誤解して近付くが、この時に後ろから追いかけてきたヒナが声をかける。



「いいえ、皆誤解しないで!!その女はひったくりよ!!私の宝石を盗んだの!!」

「はあっ!?」

「何、ひったくり犯だと!?」

「くそ、よくも騙そうとしたな!!」



ヒナが咄嗟にカノンをありもしない犯罪の犯人に仕立て上げると、ナイを止めようとした者達は立ち止まり、その間にナイは魔銃の回収を行おうとした。



「こら、離せっ!!指が折れるよ!?」

「い、嫌よ!!これだけは渡せないわ!!」

「もう、いい加減にしなさいよ!!諦めなさい!!」

「このっ……諦めるわけないでしょうがっ!!」



カノンは自分の服の中から火属性の魔石を取り出し、それを見たナイは嫌な予感を覚え、咄嗟にカノンから離れてヒナの身体を掴んで「瞬動術」で距離を取る。



「危ない!!」

「きゃあっ!?」

「ふんっ!!」



魔石には子供の頃にナイがよく使用していた「壊裂」と呼ばれる魔道具が取り付けられ、それを利用してカノンは魔石を破壊する。その結果、火属性の魔石が砕けた瞬間に内部の魔力が暴走して爆発を引き起こす――






――街道で爆発が起きた瞬間、ナイは爆発する前にヒナを連れて避難しており、幸いにもカノンの近くには一般人はいなかった。結果からいえば魔石の爆発によって派手に煙が舞い上がり、その様子を見てナイはヒナを地面に下ろすと唖然とした。



「ば、爆発した……」

「まさか、自殺したの!?」



爆発が起きた場所は派手に煙が舞い上がり、カノンの姿は見えなかった。普通に考えれば魔石を暴発させれば彼女も無事では済まず、慌ててナイはカノンが生きているのかを確かめるために駆けつける。


煙を振り払いながらナイは爆発が起きた場所に辿り着くと、そこにはおかしな事にカノンの姿はなかった。爆発が起きた場所はクレーターが出来上がっていたが、肝心の彼女の姿は見当たらず、まさか死体ごと吹き飛んだのかと思ったが違和感を抱く。



(いない……逃げたのか?でも、どうやって……)



カノンの姿が見えない事にナイは疑問を抱き、何が起きたのか理解できなかった。そして爆発によって発生した黒煙を見て一般区の見回りを行っていた警備兵が駆けつけてきた――

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