22話 魔銃使いのカノン

――獣人国の暗殺者のカノンは獣人族ではなく、種族は人間の女性である。しかし、彼女の場合は獣人国で生まれた。両親は王国の出身だが、色々とあって獣人国へ移り住む。


彼女の家系は「細工師」であり、鍛冶師と異なる点は装飾を専門とした細工を施し、それなりに裕福な過程だった。カノンも幼少期は細工師として生きていけるように技術を仕込まれる。


しかし、ある時にカノンは偶然にも特殊な魔道具を手に入れた。その魔道具はかつて勇者が作り出した魔道具だと呼ばれ、彼女の人生は一変する。


ある時に両親と喧嘩して家出したカノンは骨董品屋で変わった物を目にした。それはこの世界には存在しないはずの武器であり、それを見たカノンは不思議に思って購入する。


その武器は「銃」と瓜二つの外見をしており、外見はリボルバー式の拳銃によく似ていた。彼女は独自に調べたところ、拳銃が見つかったのは遺跡であり、その遺跡の伝承にはかつて「魔銃」と呼ばれる武器を利用した勇者が存在したという。




――偶然にもカノンはかつて勇者が扱っていた魔銃と呼ばれる魔道具を手に入れ、勇者に関する資料を調べ上げ、魔銃の使い方を学ぶ。この魔銃は本来の拳銃のように火薬を詰めた弾丸ではなく、特殊加工を施した弾丸を発射する武器だと判明した。




魔銃の弾丸に利用できるのは「魔石弾」と呼ばれ、この魔石弾とは文字通りに魔石を弾丸の形に加工した代物であり、魔石を削り取って弾丸の形に変えた後に拳銃に装填して撃ち込む。


貴重な魔石を削り取ると聞くとかなり勿体ない気がするが、魔銃の威力は凄まじく、魔石を弾丸として発射させる。そして魔石弾は衝突した際に魔石の内部の魔力が暴発し、火属性の魔石弾ならば爆発、水属性の魔石弾ならば冷気を放出させると資料には記されていた。


これらの情報を調べたカノンは自分がとんでもない代物を発見した事を知り、これさえあれば自分のつまらない人生は変わると思った彼女は細工師の技術を発揮して魔銃の修理と魔石弾の制作を行う。



『これさえあれば私は……!!』



カノンは細工師の両親から細工師になるように育てられていたが、正直に言って細工師になるなど彼女は嫌で仕方なかった。彼女は小さい頃から一人前の細工師になるように強制的に両親から指導を受けていたが、彼女は嫌気を差していた。


しかし、細工師として育て上げられたカノンの技術は確かであり、遺跡で発見された魔銃を彼女は瞬く間に修復させると、その後は家の金を勝手に盗んで魔石を購入する。


魔銃のシリンダーを調べた後、カノンは魔石を削り取って弾丸の形に変え、それを装填して魔銃を発射させる。仮にカノンが細工師としての技術がなければこんな真似はできなかったが、運命は彼女に味方した。



『これでよし……後は上手くいくかどうか、試すしかないわね』



魔石弾の製作に成功したカノンは魔銃に魔石弾を装填すると、まずは試し撃ちとしてあろう事か彼女は自分の両親の建物に向けて魔銃を構える。この行動は特に意味はなく、喧嘩した両親に対して嫌がらせ程度の気分で彼女は魔銃を撃つ。



『私に指図したあんた達が悪いのよ……このっ!!』



カノンは魔銃の威力を確かめるために建物に目掛けて発砲する。だが、彼女の予想ではせいぜい建物の壁を破壊する程度の威力だと思い込んでいた。しかし、魔石弾が発射された瞬間、とんでもない事態を引き起こす。


魔銃から発射された弾丸は砲撃魔法よりも素早く、本物の拳銃の弾丸のように放たれ、建物の壁を貫通した。その後は建物の中に入った瞬間に魔石弾に亀裂が生じて爆発を引き起こす。



『きゃあああっ!?』



弾丸の形に削り取っていたとはいえ、魔石の内部には膨大な火属性の魔力が蓄積されており、その結果として魔石が暴発して大爆発を引き起こす。ちょっとした悪戯程度の気持ちで撃ったにも関わらず、カノンの両親の店は爆発によって吹き飛ぶ。




――その後、店の中に存在したカノンの両親は奇跡的に生還したが、二人とも大怪我を負ってしまう。カノンは自分の仕出かした事にショックを受け、逃げる様に両親の元から立ち去る。




想像以上の恐ろしい武器を手に入れ、実の両親を傷つけてしまった事でカノンはもう普通の人間として生きてはいけず、結局彼女は裏社会の人間になった。

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