18話 王国からの忠告

「さてと……君達には色々と聞かせて貰おうか」

「ま、待て!!誤解だ、これは誤解だ!!」

「何が誤解だ!!往生際が悪いんだよ、この小悪党!!」

「ぐふぅっ!?」



みっともなく言い訳を行おうとするリョフイに大して容赦なくテンは拳を腹部に叩き込み、リョフイは苦痛の表情を浮かべながら膝を着く。そんな彼に対してテンは頭を掴んで無理やりに視線を合わせると、凄まじい迫力を放ちながら答える。



「あんたが運び込んだガーゴイルのせいでうちのガキ共が死にかけたからね……あんたの正体や目的、洗いざらい白状してもらうよ!!」

「き、貴様等ぁっ……!!」

「おっと、抵抗するのはやめておいた方がいい。それと君が運んだ荷物の方も調べさせてもらうよ」

「荷物……!?」



リョフイはテンに捕まり、アルトから運び込んできた荷物の事を言われてある事を思い出す。彼は笑みを浮かべ、懐に隠していた「笛」を取り出す。


以前にリョフイはバーリにガーゴイルを引き渡す際、彼にガーゴイルを目覚めさせる魔道具とその使い方を教えた。そして今回の運び込んだ荷物の中にもリョフイは切札を隠しており、彼は笛を吹いて呼び寄せる。



「死ぬのは……貴様等の方だ!!」

「何!?」

「その笛を取り上げろ!!」

「もう遅い!!」



笛を取り出したリョフイは口元に運び込み、慌ててテンとシノビが動こうとしたが、彼が笛を吹いた瞬間に聞いた事もない音色が鳴り響く。すると、彼の部屋の中から物音がすると、扉を破壊して予想外の存在が出現した。



「シャアアアッ!!」

「ガ、ガーゴイル!?」

「また運び出していたのか!?」

「ふははっ!!死ねぇっ!!」



万が一の保険としてリョフイはガーゴイルを再び荷物の中に紛れ込ませて運び込み、彼の「魔笛」の音色で覚醒したガーゴイルはテンに襲い掛かった。テンは咄嗟にリョフイを放り込んで飛び掛かってきたガーゴイルと取っ組み合う。



「このっ……うわぁっ!?」

「テン、大丈夫か!?」

「無駄だ!!そのガーゴイルはバーリ如きに渡したとは違う!!儂の命令を完璧に聞く完全体だ!!」



ガーゴイルは自分の主人であるリョフイを拘束していたテンに襲い掛かり、彼女を力ずくで引き剥がし、そのまま押し寄せる。慌ててアルトはノイを連れて離れると、シノビとクノとルナはテンを救うために武器を抜いた。



「このっ!!」

「せいっ!!」

「テンを離せっ!!」

「シャアアッ!!」



3人の攻撃に対してガーゴイルは背中の羽根を利用し、自分の全身を覆い隠す。まるで吸血鬼のように羽根を扱い、3人の攻撃は翼によって阻まれてしまう。


テンを含めてここに集まったのは手練れ揃いだが、リョフイが完全体と称したガーゴイルは体型こそは従来のガーゴイルよりも小型ではあるが、それでも力のほうはガーゴイル亜種にも劣りはしない。



「シャアアッ!!」

「がはぁっ!?」

「テン!?」

「ちっ……そちらの男を狙えっ!!」



ガーゴイルによってテンは壁に叩き付けられると、シノビは即座にガーゴイルを操るリョフイに狙いを変え、彼に向けてクノに指示を出す。



「投っ!!」

「ぬおっ!?」

「シャアアッ!!」



クノはリョフイに向けてクナイを放つが、咄嗟にガーゴイルは翼を伸ばして彼を庇い、そのままリョフイの身体を抱き上げて窓へ向かう。



「シャアアッ!!」

「ぐううっ!?」

「しまった、逃げられるぞ!?」

「いや……」



窓から外へ飛び出したガーゴイルとリョフイを見てルナは彼等が外へ逃げると思ったが、シノビの方は不敵な笑みを浮かべた。外にも既に見張りは立たせており、その人物ならばガーゴイルを逃がす事はないと確信していた――





――窓から抜け出したガーゴイルはリョフイを抱えた状態で空を飛び、とりあえずは白猫亭の屋根の上に降り立つ。リョフイは荒い息を吐きながら魔笛を握りしめ、どうにか逃げる事に成功した事に安堵する。



「くそっ!!あの女がまさかこんな場所で働いていたとは……すぐに逃げるぞ!!」

「シャアアッ……!?」

「ん?どうした?」



ガーゴイルに指示を出そうとしたリョフイだったが、唐突にガーゴイルが何か怯えた表情を浮かべ、その反応に疑問を抱いた彼はガーゴイルの視線の先に顔を剥ける。



「よっこいしょっと」

「は?」



ガーゴイルの視線の先には屋根の上に降り立つ少年の姿が存在し、その少年の背中には二つの大剣を背負っていた。突如として現れた少年にリョフイは呆気にとられるが、ガーゴイルの方は何故か怯える様に身体を震わせる。


リョフイが見た限りではこの国では珍しい黒髪の少年にしか見えないが、ガーゴイルの目には少年の姿がまるで恐ろしい怪物の姿のように見えていた。しかし、主人を守るように調教されてきたガーゴイルは逃げ出す事ができず、リョフイの前に立って少年と向かい合う。

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