16話 上級回復薬の生産方法

――時は更に遡り、半年ほど前にイリアは白面が使用していた地下施設を利用し、特殊な薬草の栽培を行っていた。白面の施設ではこれまで毒薬の製作に必要な植物の育成が行われていたが、現在はそれらの植物は除去される。


白面が利用していた施設は取り壊すべきだという提案もあったが、植物を育てる環境は整っていたのでイリアの提案で今後は回復薬の製作に必要な植物の育成を行う事になった。イリアは宰相と通じて毒薬の制作を行っていたが、その反面に解毒薬の製作に必要な素材の植物の育成も行っていた。



「さあ、これから人助けのために薬をばんばん作りますよ!!」

「……お前が言うと説得力がないな」

「それはお互い様でしょう」



王国専属の医師であるイシも彼女に協力してくれ、二人は人々の役立つ薬の製作のために尽力し、白面の施設を利用して薬草の育成を行う。この時に意外な事に拉致されて毒薬の製作に協力していた薬師たちも協力してくれた。



「俺達も手伝わせてくれ!!」

「俺達のせいで人が死んだんだ……なら、せめて罪滅ぼしさせてくれ」



彼等は誘拐されてあくまでも毒薬製作を協力されていたに過ぎないが、人を救うために薬師になったのに人を殺す薬を作り続けてきた事に彼は苦しんでいた。そこで今までの罪を償うため、彼等は一緒に薬草の育成に励む。


薬草の栽培は非常に難しく、かなりの困難を極めた。しかし、イリアはある時に植物型の魔物である「樹精霊プラント」を利用した新しい薬草の栽培を思いつく。



『ジュルルルッ……』

「やっぱり、樹精霊はちゃんと肥料を与えて綺麗な水で育てれば狂暴性を失うみたいですね」

「それを調べるために僕達を呼んで捕まえさせたのかい……」

「か、かなり苦労しましたよ」

「死ぬかと思った」

「僕なんて触手に捕まって大変な事になりそうだったよ……ううっ、もうお嫁にいけないかも」

「ま、まあまあ……」



イリアは白狼騎士団と黄金級冒険者のリーナとついでにナイに頼み込み、樹精霊の「捕獲」を頼む。かなりの苦労をさせられたがイリア達は捕縛には成功し、無事に樹精霊を王都の地下の施設に運び出す。


最初は狂暴だった樹精霊だったが、植物が育つ環境としては最高の場所を用意すると、すぐに樹精霊は狂暴性を失ってしまう。それどころか自分に栄養を与える存在に警戒心を失い、水や肥料を与えてくれる人間のために樹液を分けてくれた。



『ジュルルルッ……』

「お、樹液をくれるんですか?ありがとうございますね、これで研究も捗ります」

「……イリアさんは魔物使いの素質があるんでしょうか?」

「もしかして薬師よりも才能があるかもしれないね」

「ちょっと、聞こえてますよ!!」



樹精霊を手懐けたイリアは樹液を分けてもらい、樹精霊の樹液を研究した結果、実は樹液は薬草と組み合わせればより回復効果を高める事が判明した。


その後はイリアの研究が進み、数十回の試行錯誤の結果、上級回復薬の新しい製作方法が遂に判明した。こちらの方法は従来の上級回復薬の製作方法よりも素材の消耗が少なく、大量生産も可能でイリアはすぐに報告を行う。


その後、王都では新しく作り出された上級回復薬が流通し、この上級回復薬の事を知った他の街からも商人が多く訪れ、半年後では王国中に流通する



「いや〜私、またなんかやっちゃいましたか?」

「調子に乗るんじゃねえよ……だが、よくやったな」



こうしてイリアと薬師たちの活躍のお陰で王国では上級回復薬が流通化した事により、他国から回復薬の類の輸入をする必要がなくなった。これによって後に獣人国はかなりの損害を受ける事になるのは別の話である――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る