7話 蛇魔
「このぉっ!!」
「ぬおおっ!?」
「ええっ!?」
ナイは鞭に拘束された状態で男を力ずくで引っ張り、鞭を手にしていた老人は踏ん張る事もできずに引き寄せられると、ナイは老人に向けて手を伸ばす。
「捕まえた!!」
「ぐあっ!?」
「な、なんて馬鹿力だ……」
「す、すげぇっ!!」
老人を軽々と引き寄せてナイの腕力に拘束されていた男は唖然とするが、少年の方は目を光り輝かせる。蛇魔と呼ばれる鞭をナイは男から奪い取ろうとすると、老人は必死に抵抗を行う。
「こ、このっ!!」
「うわっ!?」
隠し持っていた短剣で老人はナイに突き刺そうとしてきたが、その攻撃に対してナイは右手に装着していた反魔の盾で短剣を弾き返す。老人は反魔の盾に短剣が触れた瞬間に衝撃が跳ね返り、逆に吹き飛ぶ。
「ぐはぁっ!?」
「ふうっ……これは預からせてもらうよ」
ナイは蛇魔という名前の「魔鞭」を回収すると、老人は慌てて後ろへと下がるが建物の壁に背中が当たる。もう逃げ場は存在せず、ナイは魔鞭を回収して老人の元へ向かう。
老人の正体を確かめるためにナイは顔を包み込んでいる包帯に手を伸ばすと、老人は必死に抵抗しようとするが、ナイの力には敵わずに包帯を引きちぎられた。
「その顔を見せろ!!」
「や、やめろぉっ!!」
顔面の包帯を引きちぎった瞬間、ナイと他の者たちはその顔を見て驚愕した。老人の顔は酷い火傷を負っており、最早人の顔とは言えなかった。老人は包帯を引きちぎられた途端に苦しみ始め、顔面を両手で抑え込みながらもナイを指の隙間から睨みつける。
「おのれぇっ……見たな、儂の素顔を!!」
「貴方はいったい……誰だ?」
「くそ、くそくそっ……殺してやる、お前だけは!!」
「兄ちゃん、危ない!?後ろだ!!」
自分に対して強い殺意を抱く老人にナイは疑問を抱くが、ここで少年がナイに注意すると、ナイは後方を振り返るとそこには先ほど助けた男が立っていた。男は剣を握っており、ナイに剣を構えると老人が声を上げる。
「殺せっ!!さっさと殺してしまえっ!!」
「……ああ、殺してやるよ」
「なっ!?おい、何言ってんだ!!そこの兄ちゃんがお前を助けてくれたんだぞ!!」
「勘違いするな……俺が殺すのは、お前だ!!」
「えっ!?」
剣士はナイに向けて剣を振り下さず、尻餅をついている男に向けて駆け出す。どうやら剣士の目的は自分を殺そうとした老人を殺す事らしく、老人は慌てふためく。
「ま、待て!!」
「うるせえっ、死ねぇっ!!」
「止めろっ!!」
「うわぁっ!?」
老人に向けて剣士は剣を振りかざした瞬間、ナイはそれを止めようとした。だが、この時にナイが所持していた蛇魔が勝手に動き出し、まるでナイの意思に従うかのように剣士が振り下ろそうとした刃に絡みつく。
剣士は突如として刃に絡みついた鞭によって振り下ろす事ができず、これに驚いたのはナイだった。勝手に自分の意思に従って動いた蛇魔に戸惑うが、鞭の先端の蛇の頭は剣士の首に噛みつこうとした。
『シャアアアッ!!』
「うひゃあっ!?」
「何だ!?」
「へ、蛇!?」
「やれ、やってしまえっ!!」
蛇魔は勝手に剣士の首に噛みつこうと動き出し、まるで生きている本物の蛇のように鳴き声を上げる。その光景を見た老人が声を上げると、ナイは咄嗟に男を救い出すために鞭を引き寄せる。
しかし、鞭を引き寄せようとした途端に鞭はナイの手元を離れ、男の身体を拘束する。本物の蛇の如く男の身体に絡みついた蛇魔は首に向けて牙を突き立てた。
「ぎゃあああっ!?」
「そんなっ!?」
「な、何だよこれ!?」
「くくくっ……そいつはただの鞭ではない、この儂が見つけ出した魔鞭じゃ!!」
蛇魔が自分を殺そうとした男の首元に噛みつき、先ほどの魔術師のように男は生気を吸い上げられ、徐々にミイラと化していく。その様子を見たナイは咄嗟に男を救うために駆け出すが、既に時は遅すぎた。
男の生気を瞬時に吸い上げた蛇魔は迫りくるナイに標的を変え、牙を剥き出しにして飛び掛かる。まるで本物の蛇のように襲い掛かってきた蛇魔に対してナイは反魔の盾を構える。
『シャアアッ!!』
「このっ!!」
反魔の盾を利用してナイは蛇魔を弾き飛ばすと、蛇魔は地面に落ちた。それを見た老人は咄嗟に蛇魔を取り上げようとしたが、先に少年の方が動く。
「ちぃっ!!」
「させるかっ!!」
老人が拾い上げるよりも先に少年は蛇魔に手を伸ばすと、いち早く鞭を掴む事に成功した。老人よりも先に蛇魔を拾い上げた少年は鞭を取り上げ、邪魔を遠くへ放り投げた。
「この野郎!!」
「なっ!?こ、このガキが……」
「いい加減にしろ!!」
「ふげぇっ!?」
蛇魔を奪い取った少年に老人は掴みかかろうとしたが、その前にナイが老人の背後に移動し、彼の身体を掴んで力ずくで持ち上げる。片手のみでナイは老人を持ち上げると、逃げられないように壁際に押し込む。
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