後日談 《ある日の夢》

――ある日の晩、ナイは夢を見ていた。その夢はかつてアルとゴマンと出会った花畑と同じ場所だったが、この時はナイが一人だけでアルとゴマンの姿は見えなかった。



「あれっ……どうしてまたここに?」



花畑に立ち尽くしたナイは戸惑い、アルやゴマンの姿を必死に探すが彼等の姿は見えず、その代わりに背後から聞きなれない声が聞こえてきた。



「ナイ……」

「えっ……?」



声が聞こえたナイは振り返ろうとした瞬間、何者かのに後ろから抱きしめられた。驚いたナイだったが、抱きしめられた途端に何だか懐かしい感覚を味わう。


自分が今振り返れば相手の正体を確かめる事はできるが、ナイは何故か身体が思うように動かず、その間にも後ろから抱きついて来た人物は力を強める。ナイは暖かな感触を覚え、どうやら自分を抱きしめる相手が女性だと知る。



「あの……誰、ですか?」

「ナイ……ごめんなさい、貴方を守れなくて」

「守れなくて……?」



聞こえてくる声音も女性であり、ナイはいったい何者なのか気になったが、この時に自分が無意識に涙を流している事に気付く。女性に抱かれているだけでナイは不思議と温かく、同時に懐かしい気持ちを味わう。



(何だろう、この気持ち……この人の事を僕は知っている?)



女性が何者なのかはナイには心当たりはない、しかし抱きしめてくる女性を振り払う事はできず、そのまましばらくの間は彼女の好きにさせる。


やがて女性の力が弱まり、腕を離すとナイは遂に後方を振り返る。しかし、そこにはだれも存在せず、いつの間にかナイは花畑に流れている大きな川の前に立っていた。



「この川は……」

「触れては駄目……まだ、貴方はここへ来るべきじゃないわ」

「えっ……」



川の向こうから声が聞こえたナイは顔を上げると、そこには対岸の方に人影が見えた。しかし、その姿をはっきりと確認する前にナイは意識を失う――






――目を覚ますと、ナイは自分の部屋のベッドの上に居る事に気付いた。ナイは身体を起き上げ、目元に涙が流れている事に気付いて不思議に思う。



「あれ、何で……僕、泣いてるんだろう……」



ナイは目元の涙を拭い、不思議な夢を見た様な気がしたが、もう内容はすぐに忘れてしまった。

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