後日談 《リーナの決意》

――ナイに想いを寄せるのはモモだけではなく、もう一人の少女が存在した。その少女はリーナであり、彼女はナイが先日にモモと二人きりで仲良く歩いているという話を聞いた時からどうにも落ち着かなかった。



「はあっ……」

「どうしたんだい、さっきから溜息ばかりじゃないか」

「あ、ごめんね……大丈夫、ちゃんと警戒はしているから」



リーナはアルトの護衛として彼と同行しており、今回はアルトが魔道具の開発に必要な素材集めの手伝いのために来ていた。冒険者達も街の復興作業に協力しているので普通の依頼は受けられず、この手の護衛の仕事はリーナも久しぶりであった。


リーナはアルトとは昔からの付き合いであり、彼女は公爵家の娘という事もあって国王からも気に入られていた。国王としてはいずれはリーナをアルトの結婚相手にしたいと考えているが、当の本人はアルトの事は親友だとは思っているが一度として男性として意識したことはない。


アルトの方もリーナの事は大切な幼馴染だとは思っているが女性として意識した事はなく、そもそも彼は恋愛にはあまり興味はない。但し、正確に言えば自分自身の恋愛には興味はなく、他人同士の恋愛には話は別だった。



「もしかしてナイ君の事を考えていたのかい?」

「えっ……ど、どうして分かったの!?」

「君がそこまで悩む相手と言えば彼ぐらいだからね。やれやれ、罪作りな男の子だね」



図星を突かれたリーナは驚いた表情を浮かべるが、アルトは大分前からリーナがナイの事を異性として意識している事を見抜き、正直に言えばアルトとしては幼馴染としてリーナの恋愛は応援してやりたい。


最近のナイはモモと仲が良くなってきており、このままリーナが何も進まなければ二人の関係は更に進展してしまう。そう思ったアルトはここからリーナが巻き返すには彼女が積極的に動かなければならないと指摘する。



「リーナ、はっきりと言わせてもらうが君はナイ君の事が好きなんだろう?」

「えっ!?べ、別にそんな事は……」

「僕達の間に隠し事は無しだよ。なら、言い方を変えようか。ナイ君の事が気になってるんだろう?」

「……う、うん」



リーナはアルトの言葉を否定せず、彼女にとってナイはもう誰よりも大切な男性であり、その気持ちは日増しに大きくなっていく。



「よし、それならこれから作る僕の魔道具を彼に渡してあげると良いよ。きっと、喜んでくれるだろうからね」

「魔道具?そういえば今日は何を作るつもりなの?」

「新しい魔法腕輪だよ。ナイ君が身に付けている今の物よりも高性能な奴を作るのさ。それを君が渡してくれたらナイ君も喜ぶよ」

「えっ!?でも、いいの?アルト君はそれで……」

「僕の事は気にしなくていいんだ。その代わりに今日は色々と頑張ってもらうよ」

「わ、分かった……ありがとう、アルト君」



アルトの言葉を聞いてリーナは決意を固めた表情を浮かべ、そんな彼女にアルトは微笑むが、親友が取られた様な気して少し寂しい思いも抱く――

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