後日談 《黒面と陰陽の巻物》
――魔導士であるイリアは
しかし、白面に所属する暗殺者達が侵された毒を解毒するための薬はイリアとイシが完成させ、更にイリアは仙薬を利用した全く新しい薬を作り出す。その薬は回復薬と魔力回復薬の二つの性質を持ち合わせた新たなる薬であり、その薬の価値は計り知れない。
結果から言えばイリアとイシはこれまで犯した罪は解毒薬と新薬を作り出した事で帳消しとなり、二人は今まで通りの立場に立てる事になった。表向きは二人は宰相に利用されていた人間のふりを行い、今後は王国のために忠誠を誓う事を条件に許してもらう。
白面に所属していた暗殺者達はシノビが管理を任された「黒面」なる組織に所属し、これからは王国の裏から支える存在になる。これまで白面が犯した罪は今後は王国のために役立つ事で罪を償う事が決定する。
そもそも白面は毒という手段で強制的に従わされていたに過ぎず、彼等の他にも大勢の人間が毒によって強制的に従えさせられていた。その点だけは同情の余地があり、大人しく服従を誓った人間だけは許された。
「……これがイゾウが持ちだした巻物か」
「ええ、そうですよ。宰相の屋敷から見つけ出されました」
黒面が組織された後、シノビはイリアから宰相に関わる情報を全て聞き出し、この時に彼女からシャドウと繋がっていたイゾウが所持していたという「巻物」の事を知る。
その巻物とは元々は和国が存在した場所に隠されているという「妖刀(魔剣)」の位置が記されているという巻物であり、和国の人間にしか読み取れない文字で記されていた。
シノビは里を抜け出す際にこの巻物を回収していたが、実はイゾウが巻物の「写し」を所持していた事をイリアから知り、すぐに内容を確かめる。
「宰相の話によるとその巻物はシャドウが管理していたそうです。なんでもイゾウが持っていた物だそうですけど、イゾウが死んだときにシャドウが持って来たようです」
「……この巻物は確かに和国の物だ。だが、これは写しではない」
「え、どういう意味ですか?」
シノビの言葉にイリアは驚き、てっきり彼女はイゾウが盗み出した巻物はシノビが持ちだした巻物と同じ物だと思っていた。しかし、シノビは自分が所持していた巻物を取り出すと、彼はイゾウが持ちだした巻物を見せつける。
「……どうやら巻物は二つあったようだ。俺が持ちだしたのは「陽の巻物」そしてイゾウが盗み出したのは「陰の巻物」だ」
「ヨウ?イン?」
「俺達の国では「陰陽」という言葉がある。まあ、詳しい説明は省くが……なるほど、どうやらこの巻物は二つ揃う事で意味を成すのか。道理で今まで暗号が解読できなかったはずだ」
これまでにシノビは自分が持ちだした巻物の暗号を解読しようとしたが、結局は上手くいかなかった。その理由は彼が持っている巻物の他にもう一つだけ巻物が存在し、この二つの巻物が揃わなければ絶対に暗号は解読できない。
二つの巻物を組み合わせる事で暗号が完成し、それを解読すれば和国に隠されているはずの数十本、下手をしたら数百本の「妖刀」の居場所を掴む事ができる。それだけの数の妖刀があれば王国との取引材料にも扱える。
「よくこの巻物ことを教えてくれた……これで和国の復活に近付く事ができた」
「いえいえ、その代わりにこれからは私の事をしっかりと守って下さいよ。白面の人たちに復讐されるのは御免ですから」
「ああ、分かっている。俺の方で奴等を管理しておく」
イリアがシノビに協力したのは彼女は白面を苦しめる毒薬の製作に関わっており、もしも自分の正体に白面に所属する暗殺者に知られれば復讐されるかもしれない。そう考えた彼女はシノビに相談し、彼に役立つ情報を引き換えに白面の監視をしてもらう。
結論から言えばシノビはイリアの教えてくれた情報によって和国復活の重要な取引材料を手にする事ができた。だが、まだ安心はできず、この陰陽の巻物を解読して和国の旧領地を捜索し、妖刀が存在するのかどうかを確かめなければならない。
(もうすぐだ……もうすぐ、我が一族の悲願が叶う。だが、決して焦るな……)
二つの巻物を握りしめたシノビはここからが重要な局面だと判断し、慎重に動く事を誓う――
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