後日談 《飛行船の修理》
火竜との戦闘の際、アルトとハマーンが無理やりに動かした飛行船は不具合を引き起こし、王都の外にまで移動した後に墜落してしまう。
幸いにも船自体の損害は大きくはなかったが、新しい動力源を取り込んだ船の噴射口が壊れてしまい、修理に時間が掛かってしまう。しかも王都内の鍛冶師は街の復興に忙しく、結局は飛行船を勝手に動かしたアルトが責任を以て修理を行う。
「アルト君、材料を持って来たよ!!」
「ウォンッ!!」
「ああ、助かったよ!!悪いけど、ここまで運んでくれるかい?」
飛行船の修復には城から派遣された兵士達と、ビャクを引き連れたナイも手伝っていた。ビャクが荷車を引いて城から運び出された飛行船の修理用の器材を運び込み、それを見たアルトはナイに指示を与える。
噴射口の修理が行えるのはアルトだけであり、主に派遣された兵士の役目は飛行船が他の魔物に襲われないように見張りを行う。ちなみに飛行船を見たい人間も集まり、彼等が修理の邪魔をしないように兵士達は注意する。
「ほら、危ないですから下がって下さい!!危険ですから迂闊に近づかないでください!!」
「何だよ、もっと近くで見せてもいいだろ!!」
「へえ、これが飛行船か……」
「凄いな、本当にこんなに大きい船が浮くのか!?」
「でも、何で鮫なんだ……?」
兵士達の前には王都に向かおうとしていた旅人が群がり、中には王都からわざわざ訪れた住民もいた。魔物が現れるかもしれない草原にまで人が押し寄せる当たり、飛行船が一般の人々の間でもどれほど珍しい存在なのか思い知らされる。
「今日も大分人が集まってるね……大丈夫かな、魔物が出てきたら大変なのに」
「大丈夫さ、ほら見てごらんよ。辺りを見渡しても魔物がいないだろう?グマグ火山で現れた火竜の時と同じさ、あの夜に現れた火竜の気配を感じ取ってまたこの周辺の魔物達は逃げ出したのさ」
「あ、なるほど……」
「クゥ〜ンッ(臆病な奴等め)」
アルトの言う通りに先に現れた火竜の影響か、王都周辺の魔物達は姿を消してしまい、当面の間は魔物に襲われる心配はないらしい。
だが、逆に言えば火竜はそれほど恐ろしい存在であり、その火竜を打ち倒したナイの凄さを改めてアルトは思い知る。しかし、彼とこうして話していると何処にでいるような少年にしか思えないのだから不思議だった。
(こうして話しているとナイ君は普通の子供だな……いや、僕と同い年だけど)
忘れがちではあるがアルトとナイは同い年で有り、むしろナイの方が誕生日が早い。ちなみにナイは間もなく15才を迎えようとしており、アルトも近いうちに誕生日を迎える。
誕生日を迎えれば二人ともこの世界の成人年齢に達するため、もう子供扱いはされない。アルトの場合は正式に白狼騎士団の管理を任されるが、彼は団長というのは性に合わないため、自分の代わりに団長となる人物を探していた。そして目の前にそれに相応しい人物がいる事を思い出し、この機に頼んでみる事にした。
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