第852話 次々と駆け付ける援軍
「アガァッ……!!」
「させない!!」
火炎の吐息を吐き出そうとした火竜に対してリーナとミイナが動き、ミイナは輪斧を放り込むとミイナは蒼月の力を解放させ、槍の刃先に氷の刃を纏わせると直接に火竜の顔面に切りかかった。
「ていっ」
「やああっ!!」
「グギャアッ!?」
二人の攻撃を受けた火竜は怯み、リーナの蒼月に切り付けられた箇所は凍り付くが、即座に蒸発して溶けてしまう。火竜は火炎の吐息を放つ際に体温を上昇させるため、火竜の身体に乗っていたガオウは悲鳴を上げる。
「あちちっ!?あつっ!?」
「やああっ!!」
慌ててガオウは火竜の身体から飛び降りると、別方向から火竜に向けて近付く人物が存在し、それは烈火を構えたヒイロだった。彼女の烈火は火属性の魔剣なので相性は悪いのだが、ヒイロもそれを理解した上で攻撃を行う。
彼女は魔法剣を発動させる際、刀身の先端部分に魔力を集中させ、同じく火属性の魔法剣の使い手のドリスを参考にした新しい剣技を放つ。剣先に集中した魔力を外部に放出させ、ロケット噴射の如く刃を加速させて叩き込む。
「せいりゃああああっ!!」
「グガァッ!?」
「利いた!?」
ヒイロの振り払った烈火の刃が火竜の首元に叩き込まれ、ほんの僅かではあるが傷をつける事に成功した。それを見たガオウは自分の攻撃も通じなかった火竜にヒイロが損傷を与えた事に驚くが、すぐに彼は行動に移す。
「よくやった猫ちゃんパンツの嬢ちゃん!!」
「なっ!?み、見ましたね!!」
「そんな格好で跳び回るからだよ!!」
空中に跳躍した際に翻ったスカートの中身をガオウはしっかりと見ており、ヒイロは頬を赤らめるがガオウは彼女が付けた火竜の傷口に向けて飛び込む。ほんの少しでも傷口があれば十分であり、ガオウは両手の鉤爪を傷口に目掛けて放つ。
「牙斬!!」
「グギャアアアッ!?」
先ほどは頑丈な鱗で弾かれてしまったが、傷口越しならば十分にガオウの鉤爪も通用した。傷口を通して直接に体内に爪をめり込ませて火竜に深手を負わせる。
しかし、火竜もやられてばかりではなく、今度は両翼を広げて空中へ飛び込む。この際にガオウは逃げる暇がなく、首元にしがみついて落ちないように堪える事しかできなかった。
「うおおおおっ!?」
「グガァアアアッ!!」
火竜によってガオウは危うく空から落とされそうになるが、この時に地上の方から火竜の顔面に向けて衝撃波のような物が放たれ、その攻撃を受けた火竜は体勢を崩して地上へ向けて落下する。
「グギャッ!?」
「うおおっ!?」
火竜が地面に衝突するとガオウも空中に放り出され、近くの建物の屋根の上に転がり込む。どうにか死ぬのは免れたが、落下する直前に火竜の顔面に衝突した衝撃波を思い出して顔を上げると、そこには白面とアッシュに抱えられたリンの姿が存在した。
「はあっ……はあっ……」
「ま、間に合ったか……」
「…………」
「お、お前等……どうして?」
アッシュとリンはともかく、白面が居る事に対してガオウは戸惑うが、この時に白面仮面を外す。その顔を見てもガオウは見覚えがないが、白面の方は彼の顔を見ると仏頂面な表情を浮かべる。
「……さっき、会っただろう。お前等に敗れた後、色々と話し合って協力する事にしたんだ」
「えっ……あ、もしかしてあの時の!?」
ガオウは地下施設に入り込む前に自分達を邪魔をした白面を思い出す。白面は全員叩きのめしたが、誰一人殺さずに警備兵に任せてガオウ達は地下施設に乗り込んだ。
しかし、どうやら白面は警備兵達から逃げ出した後、偶然にも死にかけていたアッシュとリンと遭遇し、二人を保護してここまで連れてきたらしい。最初はアッシュは彼等が敵だと思ったが、どうやらもう白面に敵意は無いらしく、共に戦う事を約束してくれた。
「お前達に従えば解毒薬を渡してくれると約束した」
「へっ……そうかよ。けど、良かったのか?あんな化物と戦ったらそれこそ毒薬で死ぬ前にお前等が死ぬかもしれないぞ」
「構わん……どうせ死ぬのなら戦って死ぬ」
「死なせるわけがないだろう……奴を倒し、お前達の毒を除去した後、これまで犯した悪行の罪を償わせる。この戦闘に役立てば情状酌量の余地はある、だから全力を尽くせ」
「……約束だぞ」
アッシュの言葉に白面は頷き、彼等も遂に共に戦う事を誓う。その一方でリンの方はかなりきつそうな表情を浮かべるが、彼女もじっとしてはいられずに火竜と向き合う。
火竜と対面するのはリンも初めてであり、その圧倒的な威圧感に気圧されそうになるが、それでも彼女は戦う事を辞めない。どれほど強大な相手であろうと、彼女は今度こそ仲間と共に戦う。以前の失敗は繰り返さず、自分の力で他の人間を守る事を誓う。
「行くぞ、化物がっ!!」
「グガァアアアッ!!」
市街地にて白狼騎士団、銀狼騎士団、冒険者が合流し、火竜との最終決戦を挑む――
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