幕間 《最後の切り札》

「――死んだか、あのガキ」



時は少し遡り、棺桶の上に座り込んでいたシャドウは目を開くと、首輪を通して吸血鬼が死んだ事を察した。彼が用意した呪具は役目を果たすと持ち主の元に魔力が戻る仕組みであり、どうやら吸血鬼は首輪によって死亡したらしい。


首輪を締め付ける条件は吸血鬼がシャドウの意思に背く事、あるいは一定の生命力を下回ると自動的に首輪は締まる。生命力が下回る状況は吸血鬼が弱っている事を意味しており、シャドウは吸血鬼が何者かに敗れたと判断した。


別にシャドウからすれば人手足りないので仕方なく僕に仕立て上げた存在でしかなく、彼が死のうとシャドウにとってはどうでもいい話だった。しかし、蘇らせた死霊人形の内、マジクを除く死霊人形は全て潰された。



「これで残された俺とマジクと……お前だけか」



シャドウは自分が座り込んでいる棺桶に視線を向け、この棺桶はリョフとマジクの入っていた棺桶ではなく、巨人族用の棺桶だった。その中には彼の最後の切り札が眠っており、この切札を使う時が間もなく近付いていた。



「夜明けまであと1、2時間という所か……」



日が昇ればシャドウはもう生きてはおらず、無理を重ねた事でシャドウの寿命は尽きかけていた。それでも彼は最後まで弟のために計画を果たすため、諦めるわけにはいかなかった。シャドウは自分の胸元に手を押し当てると、覚悟を決めた様に顔を上げる。



「来たか……」



隠し通路が繋がる扉に衝撃が走り、徐々に扉が凹んでいく光景を見てシャドウは全てを悟ったように杖を握りしめる。やがて扉は破壊され、遂にシャドウはナイと猛虎騎士団と対峙した――

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