幕間 《ギガンと冒険者》

――冒険者ギルドの方では王都に滞在する冒険者全員が集まっており、彼等の前にギルドマスターのギガンが立つ。彼は元は黄金級冒険者でもあり、あのリョフに認められた実力者でもある。


現在の彼は現役の頃と同じ装備を身に付け、他の冒険者達に対して指示を出す。その内容は王国騎士と連携し、街に存在する白面や闇ギルドの人間達を捕縛する事であった。



「今夜、間違いなくこの王国の歴史が変わる!!裏社会を牛耳る悪党どもを根絶やしにする絶好の好機だ!!この機を逃すな、一人残らず奴等を捕まえて王都に真の平和を取り戻すぞ!!」

『うおおおおおっ!!』



冒険者達はギガンの言葉に歓声を上げ、彼等も我慢の限界だった。この王都の治安を維持するのは王国兵だけに任せられず、王都に暮らす冒険者達も戦う覚悟は出来ていた。


ギガンの号令の元、冒険者達は街中に散らばって怪しい人間の捜索を行い、まだ捕らえられていない白面を見つけたら捕まえる様に行動する。その一方でギガンの方は緊急事態に備えて冒険者ギルドに待機し、何時でも動けるように待つ。



(おい、ギガンさんのあの格好を見てみろよ……伝説の冒険者の復活だぜ)

(あの人、昔は凄い冒険者だったんだろ?)

(馬鹿!!凄いどころじゃねえよ、あのリョフさえいなければあの人は歴代最強の冒険者と言われてもおかしくはないんだぞ!!)

(マジかよ……ガオウさんやリーナちゃんより強いのか?)

(本当に馬鹿だなお前は!!その二人を育て上げたのがあのギルドマスターなんだぞ!?)



冒険者達はギガンが現役時代の格好に戻った事で期待感を膨らませ、全盛期はリョフと並ぶ冒険者として悪党に恐れられた彼の戦いぶりが見れるのかと期待する。しかし、肝心のギガンの方は澄ました顔でギルド内に待機するが、ある問題を抱えていた。



(……鎧がきつい、現役を引退して机で仕事する事が多くて太ったか)



一応は鎧を身に付ける事は出来たが、現役時代と比べて太ってしまったらしく、鎧が締め付けるせいで痛くて常に険しい表情を浮かべていた。しかし、その態度が逆に緊張感を抱かせ、冒険者達はやる気を起こす。



(見ろよ、あのギガンさんの顔……凄い顔だな)

(し、失敗したらとんでもなくおこられそうだな……)

(……こんな所で話している場合じゃないな、俺達も行くぞ)



結果的にはギガンの普段よりも一段と険しい表情を見た冒険者達は焦りを抱き、真面目に仕事に取り掛かる。最も本人はその事に気付いておらず、これからはもっと運動しようと考えていた――

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